第365話 百物語合宿~お題:学校の怪談 後編~

トンッ。トンッ。トンッ。


帰ろうとした私たちを、止める音があったのだ。

「え?」

振り返ると、そこにバスケットボールが転がっていたのです。

先程まで、確実になかったバスケットボールが。

「・・・これは。」

「バスケットボール、ですな。先程までは何もなかったと思われますが・・・いったい・・・。」

「こ、これってつまり!?」

「ああ。噂は本当だったのだ。つまりここに、過去からやってきた生徒が!」

「ですが何処に?我々以外に誰も見えませんが?」

「確かに見えません!で、でも!じゃあこのバスケットボールはどうやって!?」

「落ち着きたまえB殿。霊感のない我々には・・・ん?A殿?」

Aさんはバスケットボールを持って固まっていました。

それは、見てはいけないものを見てしまったような表情でした。

「A殿?」

「K氏。これを。」

渡されたバスケットボールを持つと、バスケットのゴール下に、黒い影が蠢いていました。

「こ、これは!?」

「何ですか!?何ですか!?」

Bさんにも同じようにバスケットボールを渡し、見てもらった。

Bさんはとても興奮していました。

「す、すごいです!これって!本当だったんですね!」

「どうやらそのようだ。ボールを持っていないと見えないらしい。」

「どうするんですか。これを知ったところで何をどうしろと?」

「それは・・・。」

「とりあえず、ボールを返しますか?」

「そう、だな。よし、私が返そう。」

近づかないように、ボールを転がして返すと、黒い影はそれを拾い、霧のように消えました。

私は、彼女が笑っているようにも見えたんだ。

「私、このこと友達に話します!学校の七不思議は存在するんだって!」

「いや、止めておけ。」

「K氏?」

「彼女はおそらくそれを望まない。何故だか、そんな気がしてならないのだ。」

「・・・そうですね。これは私たちの胸の内にしまっておきましょう。」

「ひひっ。中学最後の思い出としては最高ですね。」

これが私が中学の頃に経験した話だ。

この思い出は私に更なるオカルト欲を湧き出させ、高校でも、大学でもオカルト部を創立させました。

けれどあの話をしようとは思いません。

あれは私たち、初代オカルト部の宝物ですから。


「以上だ。どうかな?」

「とても、不思議な話しですね。今思えば七不思議について知りたいとは思いましたけど、証明しようとは思わなかったなぁ。」

「で、ありマスね。自分も知って満足していたでありマス。」

「そんなもんじゃないの?ああいうのって、自分じゃ経験したくないって思うし。」

「私は経験したいのだがな。」

何だかそれでこそ式子さんって感じだよな。

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