第102話 高宮君の怖い話~トイレの男の子中編~

「兄さんは変だなって思ったんだって。」

「何で?」

「兄さんがトイレに入った時、トイレに誰もいないことを確認してから入ったからだって。」

「だよなぁ。学校のトイレで大きいほうするのって度胸がいるし。」

「からかわれるしな。」

「なぁ。」

「兄さんもそれが嫌で確認してからトイレに入ったんだって。だから変だなって思ったの。」

「それで?」

「兄さんはとりあえず相手の様子を窺ったの。自分が出る前に相手が出た後でトイレを出ようと思ったから。だけど、おかしかったの。」

「何が?」

「水をずっと流していたの。ザーーザーーザーーザーーって。それが兄さんは気になってきて、誰が入っているのか確認しようって思ったの。」

いつの間にか彼女の話す世界に入っていました。

「音が出ないようにそっと扉を開けて、隣の扉の前に立ったの。その時もずっと聞こえてたんだって。ザーーザーーザーーザーーって。兄さんは軽く深呼吸して一気に扉を、バンッ!!て開いたの。けど、そこには誰もいなかった。」

これで終わり。

そう思って一息つくと、その子は口を開いたんです。

「兄さんが扉を閉めると、背中に視線を感じたんだ。ゆっくり、ゆっくりと目を動かすと、後ろにびしょびしょの男の子が立っていたんだって。それで、俯いていた男の子の顔がゆっくりと上がってきたの。兄さんはその顔を見てはいけないって思ったらしくて、全速力で逃げたんだって。」

「マジかよ。」

「というかこれって・・・。」

「もしかしてトイレの太郎君的な話?」

「・・・そうかも?」

「なぁ~んだ。結局これも作り話かよ~。」

その時は僕自身も作り話だと思いました。

けど、なんか妙にリアルというか、臨場感のある話で、心のどこかで本当にあったんじゃないのか?って思いました。

けど、輪を乱すようなことはしたくなかったので、心の中でしまうことにしました。


あの話を聞いてから一ヶ月ぐらいだったと思います。

オカルトブームがさり、UMAブームだった時だと思います。

僕たちの中でツチノコを探すのが流行り、休み時間は校庭に出てはいない生き物を探すことをしていました。

あの時もそうでした。

丁度給食を食べ終えた後、友達とツチノコ探しに校庭で遊んでいた時です。

急に運動したせいで、僕はお腹が痛くなりました。

(や、やべぇ。)

我慢できそうになかった僕は友達に黙ってトイレに向かいました。

漏らしそうだったため、一番近いトイレに入ったのです。

そこがプールの近くのトイレだって知ったのは、入ってからでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る