第273話 式子さんの怖い話~掻き毟る中編その2~
例の滝へ向かうにつれ、僕の中ではワクワクした好奇心と、爺ちゃんを裏切った罪悪感、そして行ってはならないという恐怖が混じって、変んなテンションになっていました。
それはTも同じようで、時折僕と目が合っては下手くそな作り笑いを見せてきました。
「そう言えば、お聞きしてもいいですか?」
「お?何々?先輩に色々聞いてよ。」
「どうして僕らは教えてもらえなかったのに先輩方は教えてもらえたんですか?」
「いや、俺は教えてもらってないよ?」
「へ?」
「教えてもらったのはCな。」
C先輩に確認するように見ると、頷いて話してくれました。
「俺が20歳になった誕生日だった。父が急に俺をドライブに誘ってな。この滝の話をしてくれたんだ。何で禁止しているのかは話してくれてないが、父は俺に『もう心配はないだろう』って言っていた。」
「んで、どうせ俺もそのうち教わるだろうからってな。TやA君だって20歳になれば聞くんだろうし、先に知っていてもいいっしょ?」
「はぁ。」
やはりD先輩も理由は知らなかった。
どうして子供は禁止しているのだろうか。
もしかしたらこの森の奥だから危険なのだろうか。
「見えたぞ。」
そんなことを考えていると、例の滝が姿を現したのです。
「すげぇな。」
「これが・・・噂の滝っすか。」
「見事だろ。だが、やはり朝の方が美しかったな。」
「C先輩は一度来てるんですか?」
「さっき言ったドライブの時にな。」
「でもなんつうか・・・ちょっと不気味だよな。」
「D先輩、ビビってるんすか?」
「いやちょっ!?お前な~。」
D先輩の言う通り、僕もこの滝自体は荘厳で美しいとは思ったのですが、その周りの雰囲気が、何だか嫌な感じがしたんです。
「C先輩!朝はもっと綺麗なんっすよね?」
「ああ。」
「だったらここで朝を待ちません?」
「ちょ!?T~。」
「だって見たくありません?綺麗なこの滝。」
「そりゃあ・・・けどな~。」
「D先輩マジでビビってんすか?」
「わ、悪いかよ!」
「T、僕も帰りたいかな。」
「Aまで。」
「なんか、わからないけど嫌な感じがするんだよ。」
「だ、だよな!」
「二人ともビビりすぎですって。C先輩もそうなんっすか?」
「いや俺は特に何も。けど、二人がそう言うなら帰らないか?また、朝に来ればいいんだから。」
「いや、待ちましょうって!」
この時のTは何だか変な様子でした。
まるでここから離れたくないような感じで、僕たちを必死に留まらせようとしている気がしたんです。
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