第288話 麒麟園さんの怖い話~おじいちゃん。後編~
久しぶりに訪れた伯母の家は、少しだけ変わっていました。
伯母の両親は亡くなり、従姉は大学に進学して一人暮らしをしていたのです。
「こんにちわ。」
「あらMちゃん、いらっしゃい。」
「伯母さん、拝ませて。」
「うふふ。どうぞ。」
仏壇に飾られた祖父母の写真。
二人共微笑んでいて、とてもいい写真でした。
拝みながら来れなかったことを軽く謝罪した後、伯母さんと二人で色々話しました。
「本当に久しぶりよね~。Mちゃんが来なくなって一番寂しがっていたのはAよ。今年も帰ってくるからしばらくここにいないかな?」
「うん。いいよ。私もお姉ちゃんに会いたいし。」
「あら本当?あの子も喜ぶわ~。貴方たち本当の姉妹みたいですもんね。」
「私にとってもお姉ちゃんは本当のお姉ちゃんだよ。」
「うふふ。そう言ってくれると嬉しい。そう言えば、Aが夏風邪ひいた時、覚えてる?あの時、Mちゃんどこ行ってたの?伯母さん、心配してたのよ~。」
「え?おじいちゃんと話してただけだよ?」
「そうなの?どこのおじいちゃんと話してたの?ご近所さん?」
「意味が分かんないんだけど。おじいちゃんはおじいちゃんじゃん。奥の畳の部屋でラジオを聞いていた。優しい、大好きなおじいちゃん。」
「え?」
伯母の表情が驚きから、困惑、そして何かに気づいて優しい、暖かい笑みに変わり、こう言われました。
「そっか。おじいちゃんは寂しくて辛かったMちゃんに会いに来てくれたんだね。」
「え?」
「Mちゃん、おじいちゃんはMちゃんが産まれるずっと前に亡くなったの。
言われた瞬間、視界が広がるように靄が消え、頭の中で理解が追い付きました。
そう、そもそも私と両親は亡くなったおじいちゃんの仏壇を拝みに来ていたのです。
だから、どう考えてもおじいちゃんに会えるわけがないのです。
「・・・おじいちゃん。」
「おじいちゃん、きっと幸せだったわよ。Mちゃんに会えて。」
仏壇で微笑むおじいちゃんは、最初に見た時よりも輝く笑顔だったと思います。
「以上でありマス!」
・・・ぐすっ。
良い話だなぁ。
「とても心が温まるいい話だったよ千夏。」
「うん。とても素晴らしい話だったよ千夏君。そう、ほっこりするような話だったよ。年甲斐もなく涙が出たよ。」
「えへへ~。」
「良い話でしたね。柑奈さん。・・・柑奈さん?」
「こっち、見ないで。・・・ぐすっ。」
柑奈さんの目に涙が!?
「ふっ。鬼の目にも涙か。」
ちょ!?式子さん!?
「何ですってーーー!!!もっかい言ってみなさいよ式子!!」
「おや?私は何か言ったかい?」
「式子!」
うん。感動する柑奈さんもいいけど、僕は元気な柑奈さんの方が安心するね。
方法はあれだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます