第420話 高宮君の怖い話~向こう側の彼女 後編~

理解が出来ませんでした。

ゲームの中に現実の彼女が映っている。

しかも生々しいぐらいに音も鮮明に聞こえ、彼女の小さな鼻歌まで聞こえてきたのです。

慌てた僕はすぐさま彼女に電話をしました。

すると画面の向こうの彼女はスマホをキョロキョロと探し始める。

「やっぱりこれは彼女の部屋だ。でも何でだ!?どうしてゲームの中に彼女の部屋があるんだよ!!?おかしいだろ!!?」

パニックになっていると、電話がつながりました。

「もしもしM子!お、お前の部屋、今、盗撮されてるかもしれないんだ!」

『・・・。』

「おいM子!聞いてるのか!?おい!!」

『・・・。』

おかしい。彼女はこんなふざけたことはしない。

そう思って画面を見ると、彼女はスマホで誰かと会話をしていました。

「・・・へ?」

楽しそうに談笑している彼女。でもこっちでは何も聞こえてこない。

恐る恐るスマホの画面を見ると、しっかりとM子の名前がある。

スマホとゲーム機の画面を見比べていると、スマホから何かが聞こえてきました。

ゆっくりと耳に近づけると、こう聞こえてきたのです。

『貴方の好みのタイプはこの子?私じゃないの?』

ミキの声でした。とても落ち着いていて何処か冷たいような声。

でも間違いなくミキの声で、驚いた僕は口をパクパクしていたと思います。

『私は貴方の理想の彼女じゃないの?あの子が理想の彼女なの?』

「いや、あ、えっと、あの、その・・・。」

即座に答えることが出来ませんでした。

どうしてだか、未だに分かりません。

でもあの時はそうだったんです。

『答えて。私とあの子、どっちが貴方の理想の彼女?』

答えに迷い、画面の中のM子を見た時です。

「ッ!!?」

画面の中にいるM子の前に真っ黒なシルエットの、でもよく見た姿。

ミキが立っていたのです。包丁らしきものを片手に持って。

「な、何をする気だ!!」

『理想の彼女は一人でいい。だからもう片方はいらない。』

その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中で何かが切れました。

「じゃあお前がいらねぇよ!!!!」

そう、怒鳴っていたんです。

『・・・○○君?』

ハッとなると、ゲーム画面は真っ黒になっており、電話越しのM子は動揺しているようでした。

その場では何とか取り繕いましたが、結局それが原因でギクシャクしてしまい、一年もせずに彼女と別れてしまいました。

そして、何故かはわかりませんがあのゲーム、“理想の彼女”もそれ以来起動しなくなってしまいました。


「・・・ふぅ。」

なかなかな恐怖体験に息することも忘れて読んでしまった。

満足感から僕はニヤニヤと笑っていたんだと思います。

時計を見ようと振り返った時、不気味なものを見る母の顔と目が合いました。

「・・・。」

「・・・。」

すぅ~っと母が目を逸らし、台所へと歩いていきました。

「・・・おぅふ。」

やらかしたのはこれが初めてでは無いんだよなぁ。

チックショウゥゥゥゥゥゥ!!

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