第187話 式子さんの怖い話~ついてくる靴前編~

「と、言うことがありまして。」

放課後、僕は部室に着くなり式子さんに今日のお昼の出来事を話した。

式子さんは僕の話を嬉しそうに聞くと、ゆっくりと頷いた。

「流石は尾口先生だね。自ら結婚を崩壊させに行くところが、ね。」

ですよねー。

「けど、意味が分かると怖い話か。私はあまり好きじゃないんだ。」

「そうなんですか?僕は意外と好きですけど。」

「ふふ。だから尾口先生は君に話したんだろ?」

実際は違うけど、そういうことにしておこう。

「式子さんは何で好きじゃないんですか?怖い話は全般好きかと思いましたよ。」

「意味が分かると怖い話というのは基本的に人間そのものの恐怖の話しだろ?偶に心霊の話もあるが、ほとんどは違う。人間の怖い話など、ニュースで十分だよ。私は心霊の怖い話が好きなんだ。」

なるほど。言われてみればそうかもしれない。

意味が分かると怖い話というのは単純に怖い話じゃない。

人間のそこはかとない恐怖を理解して恐れる話だ。

そう考えると・・・なんだか・・・。

「僕も、あまり好きじゃないかもしれないですね。」

「ふふ。でも、尾口先生は良い先生なんだ。最後まで付き合ってあげてくれよ。」

「はい!」

「さ!じゃあ怖い話でもしようか!もちろん心霊のね。」

「はい!式子さん。」

「今日は私が話そう。これは社会人の女性の話だ・・・。」

この何とも怪しげで、それでいて美しい雰囲気が最高です!式子さん。


「ねぇ、今年こそは帰ってきなさいよ。」

「ごめんお母さん。仕事が忙しいから・・・。」

「そうは言うけど、あんたしっかりと休めているの?仕事仕事って、あんたの体が一番大事なんだからね?わかってるの?」

「はいはい。」

社会人になって3年目。

仕事にも慣れてきた私に上司は後輩を育てるように指示してきた。

後輩ちゃんはとても真面目で仕事熱心だけど、覚えが悪い。

だから私がしっかりとサポートをしなければならない。

そう自分に言い聞かせ続けているうちに私は実家に帰ることを疎かにしたんです。


「先輩、資料が出来たんで見てもらってもいいですか?」

「はいよ。う~ん・・・。ここ、数字もう一度確認してみて。」

「はい!すぐに確認しますね!」

「やぁAさん。彼女の調子はどうだい?」

「はい。ちゃんと成長してますよ。真面目な良い子ですから。」

「ははは!そうかいそうかい。なら、そろそろAさんは休むべきだね。」

「いえ、私にはまだ仕事が・・・。」

「う~ん。けど、夏休みを取らないでいると、僕が上に怒られちゃうんだよなぁ。困ったなぁ。」

「あ~・・・はい。夏休み取ればいいんですね。」

「うんうん。」

急に出来た休み、家の掃除をしよう。

最初はそう思っていました。

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