第325話 百物語合宿~お題:メール 前編~

「最初のお題は・・・“メール”です。」

「ふむ。メールか・・・。」

この反応・・・式子さんが用意したものじゃないのか?

「自分のが当たってしまいましたね式子総司令。」

千夏さんのだったのか。

なるほど。これならば確かに公平だ。

「いきなりパスなんてないわよね?式子。」

「無論だよ柑奈。私の勝利は確定事項だからね。」

式子さんの引き出しは無限なのか?

「これにしよう。」

は、始まる!!

「これはあるカップルの話しだ・・・。」


これは私の元カレとの話です。

10年以上前だったと思います。

当時、合コンで知り合った彼氏は変わった趣味を持っていたんです。

「なぁO子、今日もいいか?」

「またぁ?あんたも本当に好きね~。」

「へへっ。いいじゃん!」

彼の趣味、それはビデオレンタルで恐怖映像や呪いのビデオと言ったたぐいのものを金曜の夜に借りて、朝まで見ることです。

毎週の金曜デート、決まって彼は帰り際にレンタルしていました。

「ふふふ~ん。今日は・・・これとこれ、それとこれ・・・あっとこれもだな。」

「何が面白いのよ。私にはわからないなぁ。」

「まぁ趣味は個人の自由だかんな。俺だってお前のその、ネイル・・・アート?の趣味はわかんねぇし。」

「え~可愛いじゃん!」

「いやわかんねぇって!てか、それを言ったらこういうのだって面白いじゃん!スリルがあって!」

「わかんないよ~。」

「だろ?それと同じ。」

「もう~ムカつく~。」

ラブラブだったと思います。

本気で好きでしたし、相手も私のことを真剣に思ってくれていたと思います。

結婚も・・・私は考えていました。

「お風呂出たよ~。」

「う~い。」

「まだ終わんないの?お風呂冷めちゃうよ。」

「もう少しだって!ん~これはやらせくせぇなぁ。」

「やらせ?」

「だってなんか合成っぽくね?これぐらいだったら今の技術でも作れるっしょ。」

「そうなの?私は知らな~い。」

「俺だったら本物を撮ってこれるな~。」

「本物って・・・やめてよね?」

「バーカ。本気にすんなって。自慢じゃねぇけど、俺にそんな度胸はねぇって。」

「ならよし。ほ~らお風呂入ってまったりしようよ。」

「そうだな。んじゃ風呂入ってくるわ。」

思えば、この時から彼は何かにとり憑かれ始めていたのかもしれません。

「えー!今日も会えないの?」

「悪い。埋め合わせは今度するから。」

「絶対だよ?約束破んないでよ。」

「わかってるって!本当に悪い!」

その頃、彼は仕事が忙しいといって何かと私と会えない時期がありました。

同僚に相談しようものならきっと浮気を疑われたと思います。

けど、私は彼が浮気するとは思いませんでした。

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