第292話 式子さんの怖い話~跳ねる頭後編~

「結局理由はわかんねぇままだったな。」

「ああ。」

あの花が頭から離れない。

毎日のように供えられていたあの花が、何で枯れているのか。

何時から?何故今日まで気づかなかったのか。

見ようとしなかったから?これまでも見たくなくったって視界には入ることがあった。

そもそも誰がお供えを?わからない。

頭の中が支配されたようにあの花のことばかり考えていました。

「なぁなぁ!」

「ん?」

「こうなったら最後の手段よ。」

「最後の手段?」

「このビデオカメラで録画してみようぜ。」

「・・・はぁ?」

「いや、夢かもしんねぇじゃん。なら、寝てる本当の姿を撮れば何か分かるかもって・・・ダメ?」

「いや・・・やってみよう。」

僕は友人にお願いして寝ている僕を撮ってもらいました。

なるべく同じ状況にしたいという友人の提案もあり、大家さんに頼んで空き部屋を使わせてもらいました。

「なんかあったら呼べよ?」

「うん。」

不安もありましたが、僕はなるべくいつものように過ごし、そして就寝しました。

(・・・来た。)

僕はまた天井から僕を見降ろしていました。

何の変化もない僕を見続け、朝を迎えました。

「どうだ?何かあったか?」

「やっぱり天井から見てた。」

「カメラは!?」

録画されたものを大家さんの家のテレビで流して驚愕しました。

深夜3時くらいの時間。

寝ている僕のお腹の上に突然天井から何かが降ってきて、その場で何度も跳ねているんです。

「な、何だよこれ・・・。」

それはだんだんとハッキリとしてきて、人の頭だと分かりました。

頭はカメラに気づき、そして。


『ボ ク ノ カ ラ ダ』


映像はここで切れていました。

声が出ませんでした。

これほどハッキリと映るとは、友人も思っていなかったようです。

それからすぐにお祓いを受けに行きました。

そこで住職に言われたのは、『この子はきっと誰からも忘れ去られたくなかったんでしょうな。君の近くに供えられた花はありませんか?』と。

それから毎日のように僕は、あの花を供えています。


「おしまい。」

背筋がゾクゾクした~。

やっぱ式子さんの話は怖いなぁ!!

「なかなか怖いなぁ。流石は式子君。」

お!尾口先生もいつもの先生だ。

「お気に召したのなら幸いですよ。その、先程はすみませんでした。」

「いや気にしなくていいよ。自業自得なだけだし。本当に、なんで女って体目当てばかりなんだろうね。」

いやそれ女性のセリフ。

「それは・・・やはり好意の先にあるのが肉欲だからでは?」

し、式子さん!?

「くぅ!!この鍛え上げられた体が憎いぃぃ!!」

・・・あれ!?これって自慢話では!?


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