第199話 麒麟園さんの怖い話~見ているもの中編その1~

それはすぐに起きました。

「ふわ~もう寝よう。」

いつもは眠ったら朝まで起きない私がその日は違いました。

「・・・んぅ?」

何か理由があったわけではなく、ただ目を覚ましたのです。

けれど、目を開けることはおろか体を動かすこともできなかったのです。

(どういうこと?)

感覚的には夢に近いのです。

けれど夢じゃないって頭が理解しているのです。

(・・・何かいる?)

始めて感じる人の気配。

それから感じる視線。

(見られてる?誰に?)

数分だったと思います。

その視線を感じてから少しして私は真っ暗な夢の中に落ちていきました。

「・・・ん?」

「ほらA!起きなさい!」

「・・・ママ?」

「ほら今日がお休みでも朝はしっかり起きるの!」

周りを見回しても母以外に誰かがいる訳ではありません。

「ねぇママ昨日・・・。」

「なぁに?」

「ううん。何でもない。」

私は気のせいだと思ったのです。

寝ぼけて夢と現実がごっちゃになってると。

そう、思うことにしたのです。

(・・・まただ。)

けれどそれはその日も、その次の日もずっと起き続けました。

相変わらず目を開けることも体を動かすこともできず、ただただ人の気配と誰かの視線を感じるだけ。

それを嫌だなとは思いませんでしたが、毎回起こされることが嫌だとは思いました。

「ねぇBちゃん。」

「なに?」

「あのね、夢って見る?」

「夢?ん~どうかな?わかんないけど、なんで?」

「んとね、最近同じ夢を見てるの。」

「どんな?」

「なんか起きてるような気がするんだけど、目は開かなくて、体も動かないの。で、誰かがいて、私を見てるの。」

「何それ?気持ち悪いね。」

「・・・だよね。」

「ん~でも夢なら問題ないんじゃない?」

「そうかな?」

「そうだよ!そんなことより今日の放課後さ~。」

私はB以外にこのことを話す気になれず、結局この状況を私は受け入れ始めていたのです。

そんな状況が変わったのは中学校の頃でした。

「Aちゃん!また寝てるの?」

「んぅ?おはようBちゃん。」

「最近いつも休み時間寝てるね?」

「ん~。そうかな?」

「そうだよ。新しいゲームでも買ったの?」

「私がゲーム嫌いなの知ってるでしょ?」

「知ってる~。Aちゃんのことで知らないことは無いBちゃんです!」

「マジかよ相思相愛じゃん。」

「えへへ~。今ならうちお買い得よ?料理は上手いし掃除も好きだから。」

「はぁ。男に生まれたかった。男に生まれてBちゃんを嫁に貰いたい。」

「キャハハハ!んで?どうしたの?もしかしてあの夢?」

「ん。」

「ふ~ん。ずっと見てるね。小学校からだっけ?」

「正確には小学校三年生ね。全くやんなるよ。」

そう、あの日からずっと同じ体験を休みなく私は体験していたのだ。



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