第129話 麒麟園さんの怖い話~こっくりさん。中編その2~
「ユウちゃん?」
やめろ聞くな!
そう心は叫んでいるのに、私の口は開いてしまいました。
「こ、こっくりさん。こっくりさん。貴方は本当にこっくりさんですか?」
チラッと綺麗な女性を見ると、女性は嬉しそうに笑い、そして。
“や・つ・は・り・ね。”
と、硬貨を動かしたのです。
「えっと、何その質問?」
「もしかしてユウは誰かが動かしていると思っているのか?」
「う、ううん!な、なんとなく聞いてみたいと思っただけ。」
「そんなことよりさ。さっきの答えは何?やつはりねって?」
「う~ん・・・やっぱりねじゃないの?」
「それがユウちゃんの質問に対する答え?どういう意味?」
「いや知らないけど・・・。」
このまま続けてはいけない。
そう思った私は早々に終わらすことをみんなに言いました。
「ね、ねぇ!もうやめない?」
「え?何で?」
「もう遅いし。」
「確かにもう暗くなっちゃうよね。」
「うん、やめよっか。」
「じゃあやめよう。こっくりさん。こっくりさん。以上で質問は終わりにします。ありがとうございました。」
“いいえ。”
「え?」
「何してんだよ早く終わらせろよ。」
「う、うん。こっくりさん。こっくりさん。今日はありがとうございました。もう終わりにしますので、お帰り下さいませ。」
“いいえ。”
「・・・帰ったのか?」
「う~ん。帰ったのなら社の位置に硬貨が戻ると思うんだけど。」
帰っていない。私にはそれが分かりました。
何故なら目の前の綺麗な女性はいなくなっていないからだ。
「もう一度言う?」
「そうだな。」
「そうしよう。」
「こっくりさん。こっくりさん。今日はありがとうございました。もう終わりにしますので、お帰り下さいませ。」
硬貨がようやく動いたと思ったらそれはとんでもないことを要求してきたのです。
“に・え・を・よ・こ・せ。”
「にえをよこせ?どういうこと?」
「わ、わかんない。ユウちゃん。」
私にはすぐにわかりました。
この綺麗な女性は誰かにとり憑きたいと言っているのです。
「にえって要するに代金ってこと?なら『こっくりさん。』は狐だから油揚げ?」
「でもそんなのないよ?」
言うか、言わないか。
私は迷いました。
言ってしまえば変な目で見られるかもしれないし、何より誰かを犠牲にすることになる。
もし、自分が犠牲になったら?そう考えただけで私の口は開きませんでした。
「何してるんだ!!」
そうこうしているうちに見回りの先生が教室に来て、私たちを怒鳴りました。
「やべっ!?」
驚いた友達が次々と指を放し、結局最後まで指を放さなかった私に『こっくりさん。』はとり憑きました。
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