第132話 高宮君の怖い話~飼育小屋のウサギ中編その1~

飼育小屋に着いて、餌の皿とかを洗っているとタケちゃんは目をキラキラさせながら言ったんです。

「だけどよ。そんな兎がいたら見てみたいよな?」

「え?」

「青い目の兎だよ。俺さ、動物が好きだから飼育委員やってんだけどさ。だから珍しいとかって聞くと、一目見たくなるんだよ。すぐるもわかるだろ?」

「まぁ、確かに見てみたいよね。」

「だろ!だからさ、今度の土曜日、見に行ってみねぇ?」

「え!?・・・う~ん。やめとこうかな。」

「なんでだよ!?」

「だって隣町は遠いし。」

「そ、それは・・・じ、自転車で!」

「僕まだ自転車に乗れないんだけど。」

「あ。そ、そうか。じゃあしゃあねぇか。」

諦めたような口調でしたが、明らかにタケちゃんは諦めきれていませんでした。

「これでよし。行こうぜ。」

「うん。」


ガサガサッ。


兎の餌をやり終え、教室に向かおうとした時でした。

兎小屋の後ろの茂みが動いたような気がしたんです。

「あれ?」

「どうしたんだよすぐる?」

「いや・・・なんか動いたような気がして。」

「は?兎がか?」

「いや後ろの茂み・・・。」

僕の言葉を待たずにタケちゃんは茂みの中を探しました。

「タケちゃん!?」

「何もいねぇぞ?気のせいじゃねぇのか?」

気のせい?そんなことは無いと思いましたが、実際に何もいないんだから気のせいだったのかもしれない。

けれど、気のせいじゃなかったと分かったのは次の日の朝でした。

「た、タケちゃん!?」

「何だよ・・・!?こ、これって!?」

いつの間にか飼育小屋の中に噂の青色の目の兎がいたのです。

「青色の目・・・まさか噂は本当だったなんて!?すげぇ!」

タケちゃんは喜んでいましたが、僕は少しだけ不安でした。

「ね、ねぇタケちゃん。この子は、その、怖くないかな?」

「何でだよ?」

「だって・・・いつの間にかいたんだよ?」

「そうかもしれねぇけど、可愛い兎には変わりないだろ?」

タケちゃんのその自然な問いに僕は何も言い返せませんでした。

それからしばらくは遠巻きに観察していましたが、観察すれば観察するほどに他の兎と変わらないということが分かってきました。

タケちゃんが優しく撫でれば嬉しそうに目を細めるし、餌用の野菜を与えればモリモリ美味しそうに食べました。

他の兎たちに混じって楽しそうに跳ねていたり、気持ちよさそうに眠っていたりと非常にマイペースで微笑ましい可愛い兎でした。

「ねぇタケちゃん。」

「何だ?」

「この青色の目の兎ってどこから来たんだろうね?」

「さぁな。けど、何て言うかここにいる兎の親玉って感じだよな。」

タケちゃんの言う通り、青色の目の兎が群れのリーダーのようでした。

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