第196話 柑奈さんの怖い話~寮の一階トイレ中編その3~

「ついに入っちまったな。」

「なんか、ごめんな。」

「気にすんなよ!あんな話で納得できるかっての。幽霊なんている訳ねぇじゃん。事故とか自殺とか、そんな話もねぇのに。」

「うん。それに誰も入っていないのにとても綺麗だよね。」

「だよな~。絶対に誰かが掃除してるって。」

「じゃあ何でここに入っちゃいけないんだろ?」

「ん~お宝、なんてな!」

「何だよそれ。部費でも貯めこんでるって?トイレに?」

「ありえねぇよな。」

「もちろんだ。もし本当だとしてもどうして部費をトイレで貯めるんだよ。もっと他にいい場所あるだろうに。」

「ま、俺の仮説だとこうだ。ここの窓、つまりこれだ。この窓を開けて外を見ると、女子更衣室が見える。どうよ?」

「それが妥当だろうね。それでいられなくなって・・・ん?でもマネージャーってのはどう説明するんだ?」

「何もマネージャー全部が女じゃねぇだろ。男のマネージャーだっているんだろうし。なんにせよこの窓を開ければ・・・え?」

「どうしたんだよ?」

「いや、何でこのトイレ・・・閉まってるんだ?」

「え?」

窓の近く、入り口から一番離れているトイレ。

何故か他は開いているのにそこだけ閉まっていた。

「誰か、いるのか?」

「わかんねぇ。けど、中にいなきゃ鍵なんて閉めれねぇだろ?」

Bの言うことが正しい。

誰かが中から鍵をかけない限り閉まっることは無い。

「あの~。」

コンコンッとノックしても返事はない。

「いない・・・てことはねぇよな。」

「無理だろ?上の隙間から抜け出すなんて・・・無理だな。」

「だな。隙間細いし。じゃあやっぱり誰かいんのか?」

僕は意を決して、下を覗いてみることにした。

トイレの下の隙間を除けば絶対に足が見える。

そう思ったのに・・・。

「・・・あ、足が・・・」

「お、おいA?」

「足が、見えない。」

「は!?嘘だろ!?ちょっとどけ!・・・おいおいマジかよ!?」

「う、噂は本当に!?」

「いや、待てよA。便座の上に乗ってる可能性があるだろ?きっとそうだって。」

無理矢理説明付けようとしていたBの声は震えていました。

けど、僕もそう信じたかった。なのに・・・。

「び、B・・・。」

「何だよ!?」

「と、隣・・・。」

「は!?・・・う、うっそだろ!?」

さっきまで空いていた隣のトイレも閉まっていたのです。

「おいおいおいおい!?」

「誰も入って来てないよね!?さっきまで空いてたよね!?」

「い、いや俺たちが知らない間に・・・!?」

Bが適当な理由を付ける前に、嘲笑うかのように目の前でゆっくりと隣のトイレの扉が閉まり、丁寧に鍵をかけた。

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