第191話 式子さんの怖い話~ついてくる靴後編~
そう思った瞬間、私の体を冷たい空気が抱きしめました。
夏なのに、寒くて、凍えそうで。
「お、お姉さん!?」
「・・・え?」
その時の私は体を震わせ、唇は青紫色になっていたそうです。
「姉ちゃん!?」
「弟!すぐに坊さんを呼びなさい!」
「か、母さん!?でも、姉ちゃんが!」
「早くしな!!」
そう、あの革靴は父のものではない。
あの日、あのゴミ置き場で見た革靴。
誰のものかもわからない持ち主不明の茶色の革靴は私に憑いて来た。
なんで私だったのか。それはわからない。
「これは・・・!すぐにお祓いを行います。皆さんは別室でお待ちください。」
ただ言えるのは、お坊さんが動揺を隠せないほどに私にとり憑いたあの革靴は最悪なものだったそうです。
「・・・ん。」
気がつくと、私はソファーの上でした。
「・・・ここは?」
「お姉さん!」
「嫁、ちゃん?ここは・・・どこ?」
「覚えてないんですか?」
「えっと確か実家に革靴があって・・・それで・・・何だっけ?」
「お姉さん、私たちの家に着いてすぐに体がとても冷たくなって、震えていたんですよ?顔色も悪くて、私、お姉さんが死んじゃうって、死んじゃうって!」
お嫁さんの涙があれが夢でないことを私に教えてくれました。
「・・・そっか。心配かけてごめんね。・・・あの靴は?」
「わかりません。お坊さんがお姉さんのお祓いを済ました後、ご実家の方に向かったのですが、革靴は無くて。で、でも一応お祓いをしておいてくれました。だからもう!」
「うん。ありがとう。」
あの日以来、私は革靴を見ていません。
いつも通り仕事に追われる毎日です。
けど、一つだけ変わったことと言えば。
「今年も帰ってくるんでしょ!」
「うん!」
「お終い。」
やはり式子さんの話は背筋がぞくぞくする。
「ふふ。」
「ん?どうかしましたか?」
「優君は気づいているかい?」
「何をです?」
「いつも私が話し終わるとね。君の目がキラキラしているんだよ。」
「へ?」
「最初は緊張のせいか、そんなことなかったのに。今では私が話し終えるとキラキラした目でこちらを見てくるんだ。」
僕ってそんなに顔に出てたのか!?
「その目が私にまた話を促すんだよ。次の話を、もっと怖い話を。ってね。だから次第に私も君に話を聞かせるのが好きになっていたよ。」
「い、いや~何だか照れますね。」
「そんなに(私の話が)好きかい?」
「はい!(怖い話が)大好きです!」
「っ!そ、そうか。なら明日も期待しているといい。き、君のその目の輝きを失わせないさ。」
「はい!」
式子さんも怖い話するの好きなんだなぁ。
あ~明日も楽しみ~。
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