第142話 柑奈さんの怖い話~赤い飴玉前編~

「はい。次は柑奈軍曹の番でありマス!」

「は?あたし?」

「私でもいいぞ柑奈。」

式子さんの後に話すとなると、ハードルが上がるぞ。

「んふふ。子猫ちゃんの過去、楽しみだね。」

「チッ。っしゃーない!正直この蛆虫以下の存在には聞かれたくはないけど、ここまでの流れをあたしで潰したくもないし!分かったわよ話すわ。そうね・・・。」

柑奈さんは少し考えると、すぐさま何かを思い出し話す姿勢を取る。

「この話にするわ。これはあたしが幼稚園の頃の話しよ。」

幼稚園?柑奈さんって幼稚園に通っていたのか。

「おお!とても古いでありマスな。」

「そうよ。けど、よく覚えているのよ・・・この出来事だけは、ね。」

意味深な発言の柑奈さんにますます期待が膨らむなぁ。

「じゃあ聞かせてもらおうか柑奈。」

式子さんも嬉しそうです。

「これはあたしが幼稚園の頃、体験した話よ・・・。」


当時小さかったあたしは、まだ幽霊って言う存在を知らなかったの。

あの頃は友達と遊ぶことが世界の中心だったわね。

「かんなちゃん!あそぼ!」

「うん!なにしてあそぶの?」

「ん~とね、おままごと!」

「うん!おままごとしよ!」

毎日が遊ぶ日々で、とても楽しかったわ。

特に仲の良かったのんちゃんとの遊びはね。

「は~い。皆さんの先生に注目してください。」

あたしらの面倒を見てくれた先生は初老のおばちゃん先生で、いつもにこやかだったのよ。

けど、その日はとても暗い感じだったわね。

「来週の土曜日、例年通り秋のお祭りを開催することになりました。みんなのお母さん、お父さんには既にお知らせしてあります。ですので、先生からお話しすることは注意事項です。」

おばちゃん先生はそう言うとさ、ホワイトボードにいくつかの注意事項を書いていったのよ。

けど、一つだけよくわからないものがあったの。

「これらのことをしっかりと守ってちょうだいね。そして最後に・・・誰からも物を貰わないこと。特に飴玉は絶対よ。先生と約束、出来るかな~?」

「「「はーい!!!」」」

知らない人について行ってはいけないっていうのは結構一般的だけど、誰からも物を貰ってはいけないってどうして?って思ったわ。

しかも飴玉よ。意味が分からないじゃない。

けれど、他の注意事項よりもおばちゃん先生が一番によーくあたしらに言い聞かせていたのを覚えているわ。

「柑奈、迎えに来ましたよ。」

「ママ!」

あたしママっ子だからいつもママが笑顔で迎えに来るのが嬉しかったんだ。

けど、その日はママも笑顔が硬かったのよ。

「あの!九重さん!」

「何でしょうか先生。」

ママを読んだ時のおばちゃん先生は・・・とても、怯えていたわ。

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