第128話 麒麟園さんの怖い話~こっくりさん。中編その1~

「動いた!」

「ねぇねぇ!何聞く?」

「私、A君の好きな人を知りた~い。」

「え?A君のこと好きなの!?」

そんな微笑ましいやり取りを遠目で見ながら私は「こっくりさんなんてやっぱりいないんだよ。」と小さくつぶやいていました。

そのうち見ることも無くなり、私は一人だけ『こっくりさん。』ブームに乗れませんでした。

「ユウちゃんもやろうよ!」

「いいよ私は。そんなことより今日もやるの?『こっくりさん。』」

「うん!だって聞きたいことはたくさんあるもん!」

私は仲の良かった友人に誰かが動かしているなんて言えませんでした。


「ね!今日は一緒にやろうよ!」

「だから私は・・・。」

「お願い!」

私は仲の良かった友達に根気よく何回も誘われ、そのうち断り辛くなり、結局その日は友達と一緒に『こっくりさん。』をやることになりました。

「今日はユウちゃんもやるんだ!」

「よ!待ってたよユウ。」

皆の笑顔に今更断ることのできなかった私は指を10円硬貨の上に置いてしまいました。

「じゃあいくよ!せーの!」

「「「「こっくりさん。こっくりさん。おいでなさいませ。」」」」

「・・・え?」

すると、驚いたことに本当に硬貨が勝手に動き始めたのです。

あれは間違いなく子供の力ではありませんでした。

「今日も来てくれた!」

「ん?でもなんか今日は違くない?」

「そうかな?」

「あたしもそう思う。何て言うか、いつもとなんか違うの。」

「う~ん・・・私にはわかんないなぁ。ユウちゃんはどう思う?」

私は言葉が出てきませんでした。

何故なら友達の真後ろに巫女服のようなものを着た猫のような髭を生やした綺麗な女性が怪しい笑みを浮かべて立っていたからです。

「ユウちゃん?」

「な、なんでもない。」

「え?」

「何でもない!」

「変なの。まぁいいか!今日も聞こうよ。」

明らかにその女性は私が見えていることに気づいていました。

「こっくりさん。こっくりさん。お聞きしてもよろしいですか?」

“はい。”

「こっくりさん。こっくりさん。私の今日のテストはどうでしたか?」

“か・こ・さ・い・こ・う・て・ん。”

「ほんとに!?やったー!」

「次はあたし!」

早く終われ。私はそう心の中で強く念じながら皆が飽きるのを待ち続けました。

「ユウちゃんは聞きたいことある?」

それは私の身を滅しかねない好奇心でした。

心では必死に『こっくりさん。』が終わることを願っていたのに、頭ではこの綺麗な人が本当に『こっくりさん。』なのか聞きたかったのです。

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