第409話 柑奈さんの怖い話~土下座の謎 前編~
「・・・。」
午前中の補講が終わり、部室に何となくやってきたお昼ごろ。
何かを言いたそうな柑奈さんがこちらをギロリと見つめているような気がする。
気にしないように本日出された課題を進めていたが、やっぱり気になるよね~。
「あのぉ・・・。」
「何よ?」
「いえ、え?あ、その・・・気のせいでなければなんですが、こちらをご覧になっているような気がして・・・はい、すみません。」
「別に謝る必要はないわ。現に見てたし。」
うぉい!そんな不機嫌な感じで見てたんかい!怖いわ!!
「えっと、何か御用でしょうか?」
「たいした話じゃないわ。クソジジィが変なことに関わっちゃっただけよ。」
「変なこと?」
う~ん柑奈さんの父親って一応曲がりなりにも住職なんだよね。
てことは、そういう関連かな?
「お話を聞いても?」
「ええ。丁度今日の話そうと思ってたし、いいわ。話してあげる。」
「ハッ!有難き幸せ。」
「・・・さっきから何でそんな仰々しいの?」
「え?柑奈さんが怖いから?」
「あ゛?」
「怖い話~たのすぅいみぃ~。」
「わかればいいのよ。」
マジでこの世の恐怖の一部は柑奈さん(女性)の機嫌だわ。
「この前の休みにクソジジィはとある家屋にお祓いに行ったのよ。その時に聞いた話よ。」
子供の頃、僕はお盆の時期に行く祖父母の家が楽しみでした。
当時、町の方に住んでいた僕にとって祖父母の田舎の家はカブトムシが取り放題の宝の山だったんです。
だから毎年虫かごを持って祖父母の家に行きました。
あの日もいつものように虫かご片手に祖父母の家近くの雑木林でカブトムシを取っていたんです。
「何してるの?」
「え?」
僕がカブトムシを探していると、いつの間にか後ろに同い年ぐらいの知らない女の子が立っていたんです。
「何してるの?」
もう一度同じことを聞かれ、ハッとなった僕はすぐに答えました。
「あ、カブトムシ!カブトムシを取ってるんだ!」
「へ~カブトムシか~。この辺はいっぱいいるの?」
「う、うん。」
「私も一緒に取ってもいい?」
「い、いいけど。」
不思議な子でした。夏に似合う白いワンピースに麦わら帽子、サンダルという恰好なのに肌は真っ白で日に焼けていなかったのです。
その子と僕は夕方までカブトムシを取り、別れました。
あの子は何処の子なんだろう。
そう、ぼんやり考えていた時です。
僕の父と祖父が言い争っている、もっとハッキリと言えば祖父が怒鳴っているのが眼に入りました。普段温厚な祖父の鬼のような形相は今でも覚えています。
その時は祖父が怖くて、僕は逃げるように布団の中へ急いだんです。
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