第181話 柑奈パパの怖い話~だるまさんがころんだ後編~

「お!その顔はわかってねぇっつう顔だな。」

「よくはわかっていないですね。」

「ニシシ。将来の為に良い事を教えてやろう。」

将来の為?

「いいか。子供の霊の多くは自分が亡くなっていることに気づいちゃいねぇ。それは子供には死の概念を理解できていない子が多いからだ。」

「死の概念?さっぱりわからないんですけど?」

「んじゃ、坊主は死についてどう思うよ?」

どう思うかだと?

「それは・・・怖い、とか?」

「ん~良い答えじゃねぇか。そう、死はこえぇ。だが、子供は死を怖いとは思っていない。厳密に言えば死が怖いのかどうかが分かっていねぇのよ。」

「わからない?」

「そう。わしたち大人はある程度生きてきて様々な情報をこの目から手に入れてやがる。その情報を整理し、ある程度のことを理解している。だから大人になる過程でニュースなどから死の恐怖を学んでいるから死がこえぇのよ。けど、子供はその情報が少なく死が何なのかわかんねぇのよ。」

「うん?」

「ま、要するに死が怖いんじゃなくて死という未知を本能的に怖がっているっつうことよ。だから亡くなった後、死がわからないから自分が死んでいるのか生きているのかわかんねぇ。」

「ふむ。つまりここに出没している子供の霊もそれと同じで、たまたま見えた希望ちゃんと遊びたかっただけってことですか?」

「だと、わしは思うねぇ。」

「単に希望ちゃんにとり憑いているだけではなく?」

「だとしたらどこにでも出没するんだろうよ。けど、希望ちゃんの話はここだけで見えるっつうことだった。なら、単に遊びたかっただけだとわしは思うねぇ。」

ふむ。確かに僕の考えよりも説明に筋が通ているな。

だとしたらこの後はどうするんだ?

「じゃあ何をすればいいんですか?」

「ん~とりあえず対話だな。言ってわかってくれるならそれでいいだろ。」

んな適当な。

理由はどうであれ希望ちゃんは苦しんでるんだぞ。

「ま、将来の為に見とけよ坊主。」

だから将来の何に役に立つのさ!

「じゃ、ちゃっちゃと済ますか。」

懐から取り出したお香を焚き、柑奈さんのお父さんは数珠をすり合わせて何かをぶつぶつ言っている。

僕は何もすることがなく、ただその光景を眺めていた。


「本当にもう問題ないんだよなぁ?なぁ?」

そういえばこの人は自分でどうにかしようとは思わなかったのだろうか?

一応、和尚さんでしょ?

「坊主は顔に出やすいなぁ。」

「へ?」

「ぶっちゃけこいつも色々やったのよ。けど、何も変わんなかったっつうオチよ。」

「ええぇ・・・。」

「ま、大丈夫だと思うから心配すんなよ義徳。それよりも希望ちゃんの方を気にかけろよ?心の弱さは霊にとって都合がいいんだからよ。」

「それについては心配ないさ。24時間365日話し合っているからな。」

娘を持つお父さんってみんなこうなのぉ?

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