第356話 百物語合宿~お題:いわくつき 中編その3~

「はい、はい、はい。わかりました。それでは本日、お伺いします。」

「社長?」

「まただ。」

「え?」

「今年もだって言ってるんだ!またしてもあのマンションの床下点検だ!」

「え!?今年もですか?」

「あの日から毎年だ。もう今年で6年目だぞ!」

あの日以来、毎年のように依頼が来るマンションの床下点検。

それも決まってあの部屋のだけだ。

流石の私たちもおかしいと思い始めたんだ。

けれど、いくら点検しても何も見つからないんだ。

なのに・・・。

「はい・・・はい・・・はい・・・。」

「社長・・・。」

「今年もだ。今年も何だよ・・・。」


「Aさんが仲間に加わって、R君も仲間になって、そしてBさんが仲間になった今年も、あの依頼は未だに続いているんだ。」

「そう、だったんですね。」

酒を飲みほした副社長は真剣な表情でこう言いました。

「あの部屋には何かはあるんだ。だが、その何かは私らにはわからない。けどもし、もしも仕事を任せた誰かにその何かがわかってしまったら・・・。そう考えると、誰にも任せられないんだ。」

それ以上は何も言えませんでした。

Aさんも同じ気持ちだったと思います。

けれど僕は、家に帰ってから副社長の話を頭の中で何度も繰り返してしまって、気になってしまったのです。

「Bさん、折り入って相談が・・・。」

「お付き合いは出来ませんよ。私、今絶賛失恋中なんで。」

「い、いや!違うよ!ちょっと相談したいことがるんだよ。」

「何でしょうか?」

「あのね・・・。」

気になってしまった僕はBさんにこっそりと調べてもらい、社長たちに黙って見に行ったのです。

「ここか・・・。」

見た目はありきたりなマンションで、特におかしなところはありませんでした。

「えっと・・・あ!あった!ここか。」

他の部屋と変わらない扉。

僕は迷うことなくインターホンを押しました。

すると、それほど待たずに家主が出てきたのです。

「・・・どなたですか?」

出てきたのは50代ぐらいの男性でした。

「すみません。○○○○会社の者なんですが。」

「ああ。どうぞ入ってください。」

「失礼します。」

部屋の中も独り身の男性の部屋って感じでおかしいところはありませんでした。

「えっと、お話を伺っても?」

「はい。実は引っ越してから一ヶ月ぐらい経った頃なんですけど・・・。」

男性の話は副社長が語ってくれたことに似ていました。

「うめき声って、どのような?物音と違うんですか?」

「違います。あれは間違いなくうめき声です。『うー。』とか『う゛う゛!!』みたいな感じで・・・。」

「ふむ。では、とりあえず見てみましょう。」

僕は懐中電灯を片手に、床下に潜ったんです。

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