第415話 柑奈パパの怖い話~自称雨女 前編~
「人生って、何なんだろうなぁ。お前はどう思うよ?坊主。」
「それよりも何よりもこの状況の説明を求めていますよ僕は。」
土曜日。補講を受けに高校に行き、部活も無いから帰ろうとしたら偶然散歩していた柑奈さんのお父さんに出会った。
いや、正確には校門で待ち伏せされていたんだけど。
「急に何ですか?特に用がないなら帰りたいんですけど。」
「まぁ聞けや坊主。わしはよぉ、人って救えると思うんだよ。」
マジで何の話し?
「どんなにどうしょうもねぇ奴でも、救う価値すらねぇ悪人でも、皆命は平等なんだよ。だから、誰かが救ってもいいと思うんだよなぁ。そう思わねぇか?坊主。」
「話が全く見えないんで帰っていいですか?」
「これは柑奈には秘密なんだがな。わし、実はスマホのとあるアプリで生放送してるんだよ。‟坊主のお悩み相談”ってタイトルでな。」
「マッジで何の話しだよ!!」
「これはな、ある女性の悩みの話しだ・・・。」
「いや唐突に始まるのかよぉ…。」
私が大学3年生の頃の話しです。
部活には行っていない私にとって唯一新入生と関われる場が新入生歓迎会でした。
お節介焼きの私は、困っている人をほっとくことが出来ず、ある女性に関わることになったんです。
でも、今思えば、関わらなければよかったなぁって思うんです。
「なぁ、聞いたか?今年の新入生で滅茶苦茶スタイルが良くて可愛い女子がいるって話し!」
「ああ。聞いた聞いた。けど、その子ってかなり暗い性格で、誰かが話しかけても『私、雨女だから』って断ってくるんだろ?変人だって聞いたぜ。」
「そ、そうなのか?」
男子学生たちがそんな話をしているのを、私は新入生歓迎会で聞きました。
私は気になって会場をぐるりと見渡してみると、隅っこの方でジュース片手に立っている女性が見えました。
誰も近寄ろうとせず、そこだけお通夜のような雰囲気でした。
私が声を掛けに行こうとすると、友達に呼び止められ、気が付くと彼女はいなくなっていました。
その日から気になってしまった私は、特に用も無いのに大学をぶらりと歩くようになったんです。
そんな風に過ごしていたある日、私はある講義で彼女と再び出会いました。
やはり彼女は一人でポツンといました。
「こんにちわ。」
努めて明るい雰囲気で話しかけましたが、彼女は軽く会釈するだけで会話を続けようとしてくれません。
「あのさ、何か困ってることないかな?私で良ければ話ぐらいは聞くよ?」
「・・・私、雨女だから。」
それ以上は何も話してくれませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます