236:赤の塔も新体制です!



■アデル・ロージット 18歳

■第500期 Cランク【赤の塔】塔主



 同盟戦ストルグから一夜明けまして皆様それぞれに忙しくしていらっしゃいます。


 正直言いまして未だかつてないほどに″死″を感じた戦いではありましたが、そんなものはどこ吹く風と、スパッと切り替えて塔運営に励む姿は、さすがに慣れたものだなと他人事のように感じてしまいます。



 振り返ってみますと【魔術師の塔】が異常に強かったと、それに尽きますわね。

 始まる前こそ「【青の塔】のほうが怖い」と言っておりましたが【魔術師の塔】のほうが断然危険でした。


 【青】の場合は覗き見と神定英雄サンクリオの存在がすでに分かっていましたからね。そのせいもあります。


 【魔術師】の場合は戦力もそうなのですが、二つの限定スキルを組み合わせる戦術というのを考えてもおりませんでしたし、まさかエメリーさんが封じ込められるとは思ってもおりませんでした。


 これはエメリーさんに頼り切りだったわたくしたちにも原因がありますわね。今後に向けての反省点にしなければなりません。



 わたくし個人としては防衛は上手くいったと思うのですがね。

 まぁ相手の攻撃陣もかなり絞られていましたし、こちらも限定スキルを駆使しましたのでそこら辺の兼ね合いで上手くはまった感はあります。



 ただ攻撃に関してはやはり【魔術師】の防衛にしてやられたという感じですわね。

 フェニックスクルックーの身体変化からの特攻はたまたま決まっただけですから、あまり自信を持って「上手くいった」とは言えません。


 飛行部隊への対処が遅れることもありえましたし、身体変化が無効化される限定スキルだった可能性もありましたし、特攻したところで気付かれる可能性もありましたし、高位アンデッドの闇魔法が飛んでくることもありえました。


 そうした諸々が上手くいってダウンノーク伯を斃すことができたわけです。

 咄嗟に立てた作戦ですし、普通に考えれば上手くいく確率のほうが低いでしょう。


 あの状況、本来ならジータを活かすよう戦うべきでした。

 エメリーさんを囮にして第二戦力であるジータが戦果を挙げる。その為に他の部隊を動かすといった手法をとるべきです。それが指揮というものでしょう。


 実際にジータが斬り込めたとして、向こうの高位アンデッドの全てを斃せるわけもないのですが、それでも先陣となるのはジータの役目です。


 しかしわたくしも困惑し、対処は後手に回ってしまい、多くの戦力を喪ってしまいました。

 結果、破れかぶれで指示したクルックーの特攻が決定打となった……というわけです。



 勝てば官軍。生きているだけで素晴らしい。

 それはそうなのですが、だからといって手離しに喜べないのも事実なのですよね。

 まぁそれこそ頭を切り替えて、次への反省点としつつ塔を強くするほかありません。いい教訓になりました。



 さて、わたくしも塔を三連休としましたので忙しなく働かなくてはなりません。

 まずは<赤き雨の地>の再設定。土砂降りや濃霧の状態で侵入者をお迎えするわけにはいきませんからね。

 あとは罠の再設定と魔物の再配置。攻撃側に回した魔物も補充しておきましょう。



 それが終わったらいよいよメインディッシュ。

 最初にセイレーンを眷属化いたしましょう。



「貴女にはパタパタと名付けます」


「…………ありがとうございます、アデル様」



 なにかすごい間がありましたわね。眷属化が嫌なのでしょうか。

 ジータが慰めていますがどうしたのでしょう。あとでこっそり聞いておきますか。


 ともかくパタパタには喪ったルサールカルールゥの代わりに飛行部隊を率いて貰わなければなりません。


 これで眷属はジータ、バーンレックスチロチロ(A)、フェニックスクルックー(★S)、セイレーンパタパタ(★S)と四体目。

 残り一枠は余らせておきます。


 候補としては以下のとおり。


=====

□赤竜メテオノーラ★/S/64,000TP

□ニーズヘッグ★/A/19,000TP(1回限り)

□ゴーストドラゴン★/S/48,000TP(1回限り)

□ナインテイル★/S/51,000TP(1回限り)

=====


 おそらくTPを溜め、Bランクに上がって以降に赤竜メテオノーラを召喚・眷属化する流れになるのではないでしょうか。

 今はまだTPに余裕もないので召喚すらできませんがね。

 他の固有魔物に関しましても召喚はしたいところですが、とりあえずは保留ですわね。


 それと召喚報酬で頂いたルサールカ(A)は召喚しておきたいと思います。

 眷属化はしないですが非常に有能な魔物ですし、【青の塔】が十体以上も保有していましたからね。機を見て召喚しておきましょう。



「んじゃ目立った補強はとりあえずしない感じか」


「あるとすればパタパタの配下をちゃんと創りたいというくらいですかね。TPは豪遊できるほどありませんし」


「喪ったストームイーグル(B)は補充するんだろ?」


「それ以外にも例えば【霧雨】のファントムイーグル(B)だとか【青】のヴィゾフニル(B)だとか【魔術師】のハイフェアリー(C)だとか、飛行系は結構いるのですよ。その中からパタパタの部隊を形成できればと考えています」


「あ、ありがとうございます……アデル様……」



 召喚したい魔物を挙げればきりがありません。

 しかし一~二月後には後期の塔主総会になりますし、そこでBランクに上がった時のためにTPは温存しておきませんと。


 確実にシャルロットさんはBランクに上がるでしょうからね。

 わたくしがCランクのままでいるわけにもいきません。食らいついていきますわよ。





■ノノア 16歳 狐獣人

■第500期 Dランク【世沸者よわきものの塔】塔主



「うわぁ~、これはすごい人ですね~!」



 思わず声が出るくらいに大盛況です。ありがたいことです。

 この分ですと二階層の探索も捗るでしょうし後半にある霊安室まで届くかもしれません。

 もしそこの謎が解ければ一階層の入口にあるお宝が初めて手に入れられてしまうわけです。


 そうなれば絶対話題になりますし益々集客の見込みが出ます。

 お宝は塔主戦争バトルの際に接収したお金やら装備品やら宝石、装飾品、工芸品などなど沢山ありますからね。

 皆さん使い道がないとかで優先して私に下さいますし……本当にすみません。助かります。


 二階層のお宝もありますが、こっちはまだあまり周知されていないでしょうからね。取られても取られなくてもどちらでもいいです。


 やはり一階層入ってすぐの目立つお宝というのが重要です。

 こっちを入手できるよう、是非とも頑張って頂きたい。



 そしてこの好景気が継続するようであれば、いよいよ三階層が見えてきます。

 三階層には往復転移魔法陣を用意していますので、そこまで辿り着いたパーティーは毎回三階層からのスタートとなります。


 それもまた話題を呼ぶでしょうからね。三階層のギミックも二階層までとは一味違ったものにしていますのでそちらを試してもらうというのも楽しみの一つです。


 私も今のうちに四階層のギミックやら塔構成やら考えておかないといけませんね。まぁ日課でやっていることではありますが。



「カタカタ」


「なに、ディーゴ? ああ、報酬TPの使い道ですよね。急ぎではないけど魔物を召喚するつもりですよ」


「プルプル」


「召喚報酬の固有魔物はまだ考えてないかな。やるとすればまずディーゴの部隊の強化からですね」



 報酬で召喚権利を得たのは【霧雨】の霧魔獣ザイオン(★S)とミストドラゴン(★A)。

 いずれボス部屋に配置したいとは思っていますが侵入者がボス部屋に到達する未来が見えませんからね。

 率先して召喚しておきたいのは塔主戦争バトル時における攻撃要員です。


 今回の塔主戦争バトルでもめぼしいのは沢山いましたが【霧雨】のゴースト系とか【魔術師】のアンデッド系などは同盟の皆さんの塔では使いづらいはずなので必然的に余るんですよね。


 ですから私がわざわざ報酬に指定しなくても誰にも召喚されずにリストに残り続けるわけです。

 それを好きな時に召喚してディーゴの配下にしてしまおうかと考えているわけですね。もちろん皆さんに話は通しますが。



 そういった魔物はエルダーリッチ(S)やスピリットレギオン(S)をはじめ、本当にたくさんいます。


 ディーゴの配下にエルダーリッチというのもおかしな話なのでそこは要相談なのですが、とにかく攻撃用の部隊を創るのならばアンデッドに限れば不自由ないだろうと考えています。



 ただアンデッドのみとなると色々不都合も出ますので他の部隊も欲しいのですがね。

 それこそエンジェルスライムパルクの直属部隊とかないですし、そこら辺も整備できたらなぁと考えています。

 ヒールスライム(D)とかだとランク的に不足ですしね……もう少し高ランクの魔物で部隊を創りたいところです。



「まぁ、いずれにせよ私たちは焦らずに目の前の侵入者をしっかりと……ん?」



 シルビアさんから通信ですね。最近は多いですね。私としては嬉しい限りですが。

 内容も想像はつきますけど……



『ノ、ノノア殿! この人数の侵入者に対処するための意見をお伺いしたいのですが!』



 ああ、やっぱりですか。

 【彩糸の組紐ブライトブレイド】の同盟戦ストルグは大抵が大ニュースの下剋上ですのでいつもこうなるのですよ。

 シルビアさんは体験するのが初めてですから面食らうのも無理はありません。


 シルビアさん……心を強く、そして慣れて下さい。私にはそれしか言えません。




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