04:TP(タワーポイント)ってなんですか?
■シャルロット 15歳
■第500期 【女帝の塔】塔主
「エメリーさん、これって……お金持ちが断然有利じゃないですか?」
映し出された透明な板――画面というそうです――はエメリーさんも共有して見られるようにしてあります。
今は『TP』の扱いについて勉強中。
最初から持っている5,000TP。これを使って『塔』を強化し、プレオープンに備えなくてはいけません。
TPとは何なのか。どう入手してどう使えばいいのか。
知識を蓄えてから計画を練ろうとしています。
TPの使い道というのは色々とあって例えば――
①塔の階層を変化させる
今は全面が石材で他には何もない状態ですが、例えば迷路にしたり、壁や部屋を創ったり、さらには屋外のようにする事も出来るそうです。
ただ、仮に『森』を創ろうとしても直径500m、天井5mというのは変わらないので、外周部にあたる外壁はそのまま残りますし、空に見える天井も5mより上に行く事はできないそうです。
疑似的な屋外という感じでしょうか。
②魔物を召喚する
侵入者から塔を守るために魔物の召喚は必須です。
ただこれも【女帝の塔】の制限がありまして、ゴブリンやコボルトといったよくいる――安上りしそうな――タイプの魔物が軒並み高い。もしくは召喚すらできないという状態です。
代わりに安く扱えそうな魔物もいるのですが、あまり多くは配備できなさそうですね。
これでよく過去の【女帝】は名を残せたものだと感心してしまいます。
③罠を設置する
塔に付き物と言ってもいい罠ですが、これにもTPが掛かります。
幸い【女帝の塔】の場合、屋外風よりも屋内風の階層構成の方が安上がりなので、罠は使う事になるでしょう。
④武具・道具の獲得
例えば素手のゴブリンに鉄の剣を持たせたい、といった時に剣をTPで調達するという事です。
他にも塔内に宝箱を設置する時、その中身はTPを使って補充するという感じです。
宝箱は侵入者を集める要因にもなります。私の塔にはあまり来て欲しくないので宝箱を置く予定はありません。
⑤生活必需品・金銭の獲得
私とエメリーさんは【女帝の塔】の最上階に住む事になります。
まさか塔主が街の宿屋で眠るなど、できるはずがありませんので。
となれば生活環境を整える必要がありますし、水や食料、衣類なども必要です。そういったものはTPで手に入るわけですね。
住むのは塔だとしても、街に出ちゃいけない、という事もないようです。
買い物などで街を出歩く塔主も居ると冊子に書いてありました。ただ念の為用心を、とも書いてありましたが。
ともかくTPじゃなくて普通にお金で買って持ち込んでもいいという事です。
そしてTPはそのお金に変換する事もできるそうです。
レートは【1TP⇒100スーア】。(※約千円)
⑥塔主のスキルを獲得
これはかなりのTPが必要ですので今は全く考えられません。
ともかく私自身が多少なりとも強くなれるという事です。
他にもあるようですが主だった所はこんな感じ。
生活基盤を整えつつ、塔をいじって、侵入者に対応できるようにする……という大雑把な予定です。今の所。
そんなわけでTPには色々と使い道があり、これを増やしつつ、なんとか塔を管理していかなくてはいけません。
で、問題がそのTPの入手手段なわけです。
①侵入者を塔内で討伐する
ようは殺せと。分かっていたので憂鬱だったのですが、主目的として最初に書かれると「これが塔主の仕事か」とげんなりします。がんばって慣れるしかありません。
侵入者によって個人差があるようですが、多くのTPが手に入るようです。
死んだ侵入者は装備品や所持品も含めて塔に吸収されるように消えるそうですが、その品にもTPの差があるらしいです。
高レベルの人の優良装備は高いと、そういう事ですね。
②侵入者にダメージを与える
殺さなくても、ダメージを与えた分だけTPに反映されるようです。しかし比率はグンと低くなると。
③侵入者が塔内に滞在する
さらに比率が低いようですが、侵入者が留まっているだけで時間に比例してTPがわずかに入るそうです。
だから迷路が有効なのでしょうか。長時間の探索を余儀なくされるとなればそれだけTPは入るのですから。
ちなみに侵入者が塔に入れるのは二の鐘(9時)から五の鐘(18時)まで。
五の鐘が鳴っても塔に居る侵入者は、強制的にバベルに転移されるそうです。
私やエメリーさんは時間を気にせずに自由に出入りできるみたいですけど。
④塔主または登録した眷属の一体が
私の魔力を
もしくは私の眷属――
塔主の魔力の方がTP変換率は高いそうですが、いかんせん私はそれほど魔力が高くありません。
エメリーさんもステータス上はとんでもない魔力を持っていますが、使える魔法は<生活魔法>のみという事で、登録するかは悩みどころです。まぁ今は二人しかいないので登録はしておきますが。
……いや、<生活魔法>しか使えないのに【魔力B+】って意味が分からないんですけど。
詳しいわけじゃないですが王国の宮廷魔導士でもB+なんて早々いないと思いますし……。
⑤毎日の自然増加
誰も侵入者がいなくても、階層数と敷地面積に比例してTPは少しもらえるようです。
私の【女帝の塔】の場合、Fランクですから直径500mの階層で三階建て。30TP×3=90TPが毎日入ると。
これをお金に替えると9,000スーア(約9万円)もの大金ですから、何もしないで悠々自適な生活を送れそうです。
じゃあ年中塔を封鎖(休日扱いに)しておけば侵入者に殺される事なく余裕で暮らせそうなものですが、そうもいかないようです。
どうやら『神から見て塔主として相応しくない行為、行き過ぎた行為』をすると【
ズルせず、ちゃんと塔を管理しましょう、ちゃんと侵入者を殺しましょうという事です。はぁ……。
⑥バベルジュエルを
そもそもなぜ侵入者は命を懸けて塔に挑むのか。名誉ももちろんですが、結局はそこに″富″があるからです。
魔物を倒せば魔石が手に入る。場合によっては魔物素材も。
では塔主を殺した場合はどうか。まさか魔物ではない私に魔石があるわけもありません。
塔主の身体が消えると、そこにはバベルジュエルと呼ばれる宝石が残るそうです。
内包された魔力はAランクの魔物の魔石と遜色ないほどで、普通に売っても高値で取引されると。
もう一つバベルならではの重要な使い道がありまして、だからこそバベルジュエルの価値は高く、だからこそ侵入者は命を懸けてでもこちらを殺そうと向かって来るわけです。
私自身が″お宝″というわけですね。はぁ……。
で、例えば塔同士の戦い――
侵入者だけでなく他の塔からも狙われる理由があるというわけです。はぁ……。
⑦お金をTPに変換する
これが、私が「塔を管理するにはお金持ちが断然有利」と言う理由です。
10,000スーア(金貨一枚)を
TPからお金に替えた場合1TP⇒100スーアですから、百倍の損です。普通ならこんな事しません。
しかし王族や大商人などのお金持ちだったらどうでしょうか。金貨などはした金とばかりにTPにつぎ込むのではないでしょうか。
それによって塔は強化され、自身の安全が買える。
強大で高ランクな塔となれば世界的な名誉にもなります。歴史に名を残すかもしれない。
お金持ちは総じて自己顕示欲が強い……私の勝手な印象です。
私の手持ちの軍資金は5,000TPですが、そういう人たちは最初から50,000TP使えてもおかしくないのでは、と思うのです。
他にもTPの入手手段はあるようですが、そこが気になった私はエメリーさんに聞きました。冒頭の台詞です。
「そうですね。塔の住環境を整えるのでも外部から運び入れればいいわけですし、貴族や商人ならばそういった手配をしているでしょう。ちなみにお嬢様は……」
「……してないですし、手持ちもほとんどないです」
すみません。貧乏な塔主ですみません。こんな貧乏塔主の
「お金をTPに替えるというのは非効率ではありますが、ある程度やられるかもしれませんね。これがルールとなっている以上【
「ですよね」
「それよりも犯罪者や奴隷を塔に運んで殺す……という方がTPは稼げそうですが」
「あっ! ……なるほど」
そこまで考えが至りませんでした。
確かに王侯貴族や大商人であればいくらでも手配できそうです。
しかし塔に『挑戦』できるのは塔と同ランク(または一つ下位)のバベルカードを持っている人のみ。
【女帝の塔】に『侵入』できるのは『Fランクの挑戦者』だけという事です。
犯罪者や奴隷を登録できるのか、はたまた『荷物扱い』として運びいれる事ができるのか……不明です。
「いずれにせよわたくし達に出来る手段は限られておりますし、その分、方策は立てやすいのではないでしょうか。為すべき事を一つずつ為していくと」
「そうですね。ありがとうございます、エメリーさん」
「ご安心を。お嬢様はわたくしが侍女として全力でお守りしますので」
本当に心強い。エメリーさんが一緒で良かったと心から思います。
しかし侍女としてと言われても……異世界の侍女はあの強さが基準なのでしょうか。侍女ならば戦えて当然だとでも?
なんとなく深く聞けない怖さがあります。
「差し当たっては住空間ですが、お嬢様には【女帝】に相応しくキチンとしたお住まいを創って頂かなくてはなりません。寝室、キッチン、ダイニング、トイレ、浴室などは最低限必要です」
「えっ、魔物の召喚とか塔の強化とか……」
「ご安心を。わたくしが侍女として、お嬢様を立派な淑女に、そして立派な【女帝】になられるよう、全力でサポートいたします」
いや、その、TPの使い道としてですね、今は5,000TPしかないわけですし――。
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