104:空対空のバトル、決着です!
■ブレバス 40歳
■第495期 Dランク【風見鶏の塔】
「げえっ! フェンリルに
向こうの攻撃陣が乗り込んできたからどんな面子か確認したんだが……さすがに驚いた。
あんなの【輝翼の塔】じゃリストにもいねえだろ。【風】の報酬か?
ともかく走るフェンリルにしがみつくように、爺さんと
速度を合わせて飛行するのは爺さんの周りにハイフェアリー。そして上空の鳥たちだ。
うちと同じくAランクのガルーダ、これが筆頭。他はCかDランクってとこか。全部で五十にも満たない攻撃陣だ。
さすがに嘗めすぎだとは思うが油断はできねえ。
勝負は五・六階層だがそこに行くまである程度は減らさねえとな。
そして最終地点に配置しているサイクロンワームとグリフォン十体で確実に仕留める。
仮にあの爺さんが英雄ジータ級の相手だったとしても絶対に負けない。
問題は攻撃側だ。爺さんがこっちに来てるってことは大ボスが他にいるはず。
Aランクのガルーダ、フェンリルも攻撃。ならば防衛の切り札は何だ……まさか固有魔物か?
一年目でDランクに上がったばっかなのに固有魔物なんか……いや最悪を想定しておいて損はねえな。
だったらこっちの戦力をなるべく維持したままそこまで行かねえと。
無駄な戦闘は極力なしだ。とにかく最速で上に。
こっちの動き次第でグリフォンを追加で向かわせることも考えにいれておくか。
■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 51歳 ハイエルフ
■第500期 Dランク【輝翼の塔】塔主
『うわぁ……ゼンガーさんめっちゃ大変やん。身体ぐわんぐわんいうとるで』
『酔いそうですわね……あれで本当に戦えますの?』
「問題ない。自分で回復しとるからのう」
『
『人間界における精霊教の始祖ってお聞きしてたんですけど……』
そんな肩書きもあったのう。わしには妖精を追いかけまわしている変態爺のイメージしかない。
【風見鶏の塔】は一・二階層、三・四階層、五・六階層、そして最上階の四階層分しかない。
とことん鳥を戦力に考えた塔構成というわけじゃな。
それはわしも望むところ。向こうにとっても戦いやすいが、わしにとっても戦いやすい。
ここの塔はわしのとこと違い平野が多いのが特徴じゃな。侵入者が隠れるのを防ぐような創りじゃ。
見通しの良い階層で高い空から鳥が攻撃すると。
【輝翼の塔】ではわざと森に隠れさせて死角から攻撃というのが主流じゃから、攻め方一つとっても個性が出ておる。
と言っても戦いは全て小競り合い程度。戦力を減らさずになるべく上へ。急いで上へ。
それは向こうもこちらも同じじゃな。
鳥系魔物の欠点なんぞお互いよく知っておる。極端に打たれ弱いとな。
だからこそ戦いそのものを避けたい。一方的にやれる状況で一気に叩くと、そういうことじゃ。
向こうで言えば五・六階層『岩石砂漠』の最終地点、サイクロンワームとグリフォンの部隊。ここだけ見ればDランクの域ではない。
サイクロンワームというのはわしもファムを通じて初めて知ったが、20mだか30mだかもある巨大なワームじゃ。それが地面の下で待ち構えておる。
グリフォンと戦うつもりで近づけば奇襲をくらうというわけじゃ。
弱点は水属性。だからこそフェンリルを行かせた。なにもゼンガー爺の足となる為に召喚したわけではない。
防衛も
というわけで【輝翼の塔】四・五階層『渓谷』の名物、『遮る壁』の登場じゃ。
――ゴゴゴゴ……
『『『おおおお!!!』』』
『それどうやってますの? 絶対何か裏がありますわよね? こんなに上手く嵌るわけないですもの』
ふふふ、企業秘密じゃよ。と言うか知ったところでアデルでは真似できんからのう。
まぁ透明になった
ともかくこれで敵部隊は半壊。これで大ボスに挑むつもりかのう?
――さあどうする。
■ブレバス 40歳
■第495期 Dランク【風見鶏の塔】
「なんだありゃ! あんなのありかよクソッ!」
まさか『遮る壁』で部隊を分断するなんて……どんな罠配置すりゃそんなんできるんだよ。
いや愚痴ってても仕方ねえ。考えないと。
今のでブライトイーグル四体と地上部隊のほとんどが持ってかれた。
敵の大ボスが固有魔物だった場合、この陣容では不足だろう。いや、地上の魔物ならワンチャン……ダメだ。向こうは四・五階層を繋げてるから六階層だけじゃ高さが足りねえ。ガルーダでも地上の魔物に負ける可能性がある。
じゃあこっちからグリフォンを送り込むしかねえ。
先に行かせるべきか? そうなると敵部隊を食い止めるのがサイクロンワームだけになる……くそっフェンリルさえいなければ
出来れば早めに防衛を成功させてからグリフォンを向かわせたい。それまでは攻撃側は待機だ。
六階層に上がらなければ四・五階層には空に十分な広さがある。
ガルーダたちも留まり続け耐えることは可能なはず。
サイクロンワームが動かせれば爺さんたちのところに向かわせて襲わせるんだがあの巨体を動かせるわけがねえし。戦わせる場所は変えられねえ。
大人しく爺さんたちが進軍してくるのを待つしかできねえか……。
■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 51歳 ハイエルフ
■第500期 Dランク【輝翼の塔】塔主
「――と考えているじゃろうが……甘いのう」
盤面の駒を動かされた時点でそれは負けじゃろう。
情報は力じゃ。それをちゃんと活かせれば始まる前から勝負にならん。
部隊編成の時点で、もっと言えばよく知らんわしの
『悪い顔しとるなー、完全に悪役やん』
『主人公の邪魔をするタイプの軍師ですわね』
『エルフの人がこれを見たらそれでも崇拝するんですかね?』
『み、味方で良かったです……』
じゃかあしいわ! 今いいとこなんじゃ!
「よし、
『クルルゥゥッ!』
大ボスが大ボス部屋から動かないなどということはない。
配置された魔物がその階層でしか戦ってはいけないなどというルールもない。
まぁ一般的ではないがのう。これが『意表を突く』ということじゃ。
◆
その後に立ちはだかったのはサイクロンワームとグリフォンのみじゃった。
どちらかと言えばグリフォンの方がキツイ。Bランクが十体じゃからな。
しかしこちらにはCランクが大勢おるし、そこにゼンガー爺の魔法と回復が加わる。
フェンリルがワームを抑えつけている間に何とか殲滅させることに成功した。
最後に残ったワームを遠距離魔法で総攻撃すれば終わりじゃ。
影の殊勲は
うちの魔物はゼンガー爺の言うことを割と聞くほうじゃが部隊全体での連携を考えれば不足。
そこを
『くそっ! くそっ! くそがよおおおお!!!』
『すまぬな。精霊の御許の前で清らかなる安らぎを――』
相手の
あの場面で使わんということは戦闘に不向きなものだったんじゃろう。
どこぞの侍女のように尋問めいたことはせん。ゼンガー爺が
『はーいしゅ~~~りょ~~~! 【輝翼の塔】の勝ち~~~! おめでと~~~!』
ふぅ、やれやれ。いつもより楽とは言え疲れるものは疲れるのう。
とは言え勝ちはした。次につなげる為にも危な気なく勝ちたかったから、それはまぁ及第点なのではないだろうか。
あとは三人に託す。次は――ドロシーか。
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