333:世沸者の塔vs魔導書の塔、決着です!
■ノノア 17歳 狐獣人
■第500期 Dランク【
フォルアさんの持っている
どうやらこちらの魔物の強さや弱点などが分かるようなものらしいです。
すごく便利ですね。
以前にシャルロットさんが戦った【空白の塔】も本の
そう考えると、下手な武器や防具の
ただ戦況を覆すようなものではありませんし、
そこで情報を得たところで覆せない戦力だったら意味ないですし、実際今そのような状況になってしまっているわけですし。
……そう考えるとやはり外れの部類なんですかね。
ともかくフォルアさんは
これが【黄神石の塔】だったら相性的にもヨギィは苦戦したでしょう。斃されないけど斃しにくい魔物ばかりですから。攻撃は苦手ですからね、ヨギィは。
でも【魔導書の塔】の魔物は魔法使い系ばかりですし、ヨギィが苦戦するような相手ではありません。
まぁフゥさんがそういった塔をチョイスしてくれただけなのですが。
唯一難敵と言えるのがリッチ(A)でした。
リッチの闇魔法は吸収、杖で殴りかかってきても効かないということで、リッチの攻撃は完封できます。眷属召喚しても無駄ですからね。
ただ闇魔法の<重力魔法>は多少効くようです。身体が潰されることはありませんが、少なくとも足を止められる程度には効果があると。ヨギィ本体だけに効く魔法だったら吸収されるんですけどね。どうやら空間に作用する魔法のようです。
で、結局はヨギィが触手を伸ばしてリッチを拘束し、身体の中にズブズブと取り込みました。おそらく体内で溶かして斃したのでしょう。
『うわぁ……』という皆さんの声が画面から聞こえましたが、私も同じ感じです。
あのエメリーさんでも苦手とするリッチがこんな簡単にやられるのかと。
ともかくそこさえ乗り越えてしまえば特に怖い魔物もいません。
最終的には固有魔物の六本腕の亜人魔法使いも出てきましたが、問題なく斃せました。
いえ、すごい魔物でしたよ? 六本腕にそれぞれ短杖を持っていまして、火風水土闇雷の魔法を連発してくるのです。神聖属性以外は全て使えるというのも驚きました。
どことなく
そしてあとは最上階まで行って
最上階の接収もヨギィに任せました。
ただヨギィ自身が、何がお宝で何がゴミなのか分からない感じだったので、目につくものを片っ端から持って帰って来た感じです。食料や家具、蔵書や生活用品まで。謎解き部屋のレイアウトに使えるので助かりますが。
本当にすごいですね、ヨギィの隔離空間というのは。どれだけ容量があるのか分かりません。ヨギィに聞いてもよく分かりませんし。とにかく便利だとただそれだけです。
それから同盟の皆さんと色々話し合いました。今回の
目的があって仕掛けた
『単体性能で見ればエメリーさんに次ぐ第二位と見て間違いないでしょうね。ジータやゼンガーさん、ウリエル、
『攻撃・防衛どちらも使えますし鉄壁ですからね。まさしく【世沸者の塔】を体現している魔物かと』
『まぁ問題は足の遅さと攻撃くらいかのう。触手攻撃自体は数もあるし鋭いんじゃが、あれだけでは斃せん敵も多いじゃろうし』
『せやな。極端な話、飛ばれて上空から酸で攻撃されたらヨギィ一人じゃ辛そうやし。エメリーさんみたいに避けまくる相手でも無理やろ』
『そこは他の部隊でカバーできますよ。部隊戦は苦手そうでしたけど、小隊の一部に組み込めば壁役として使えますし。ね、エメリーさん』
『そうですね。如何様にもできると思います。少なくとも相手にとって嫌な魔物には違いないのですから有効利用すべきでしょう』
というお話です。
これなら
それは私にとって最高の賛辞でした。
私はいつも皆さんの足を引っ張ってばかりで悩んでいましたので……魔物の数も少ないですし、弱い魔物ばかりですしね。
パルクにしてもウリエルさんのほうが上ですし、ディーゴにしても普通のAランク魔物ですから。
でもヨギィならちゃんとした戦力として皆さんに貢献できる。それがとても嬉しかったのです。
となればヨギィが活かせるような部隊を私のほうで創らなければなりません。
それが今後の課題ですね。
『その前にノノアは四・五階層を創るのを優先させい。ある程度形を創っておかねば今後困るじゃろう』
『六階層は魔物置き場のままでもいいですがね。わたくしたちの『脱Cランク病』のためにも【世沸者の塔】の塔構成は参考にしたいですもの』
『まんま真似るちゅうのは無理やけどな。何かしら流用できるんなら御の字やし』
『確かに。ノノア殿の柔軟な発想力は同盟に力添えになりますからね』
『私たちも頑張って色々考えますのでノノアさんもよろしくお願いします』
そ、そうですよね。そっちが優先ですよね。
いえ、案は毎日沢山出しているのですよ? ただそれを形創るのに苦労しているだけでして……頑張って創ります、はい。
■セリオ・ヒッツベル 24歳
■第499期 Cランク【審判の塔】塔主
『神様通信
本日行われた
【魔導書の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』
「【魔導書】だと!?」
僕は思わず声に出してしまった。
時期的に見て【世沸者】が僕に申請し、その却下を受けて【魔導書】に申請したものと思われる。
おそらく僕の時と同じように
【魔導書の塔】はCランク69位。【世沸者】の一つ上だが十一年目というキャリアがある。
戦績で見ればたった二年の【世沸者】が圧勝だろうが、決して嘗めてかかれる相手ではない。
少なくとも魔法戦力だけで見ればCランクでも随一だろうと思われる。
なぜ【世沸者】は僕の【審判の塔】を優先させたのだ? 妥協した結果、僕より上位の【魔導書】を選んだのはなぜだ?
ランキング的に自分の身近にある塔を狙ったと、そう単純な話ではあるまい。
「やはり魔法戦力が欲しかったのでは? 第一に天使や飛行系の魔法戦力、第二に純粋な魔法使い系魔物と」
そう
僕の塔にはミリアや天使など飛べて尚且つ魔法が得意な戦力と、ナイト系の地上戦力が多い。
天使などどの塔も欲しい回復部隊だ。身近に【忍耐の天使ウリエル】がいる【世沸者】ならば余計に欲しがってもおかしくはない。
ルサールカにしてもそうだろう。飛びながら闇魔法と水魔法が使える、非常に有能な魔物だ。
だからこそ第一候補として僕の塔を狙った。
【魔導書の塔】はそれこそ魔法を扱う魔物ばかりだ。中には飛行系もいるだろうし、属性に関してもほぼ全てが揃うのではないかと思われる。
もし【世沸者】がそういった魔物欲しさに
斃しやすいDランクの塔ではなく、Cランクの塔を狙ったのも高ランクの魔物や固有魔物を狙ったためというのであれば理解できる。
Dランクの塔で固有魔物などそもそも召喚できない所がほとんどだろうし、Cランクの塔ならば一体くらい召喚していて当然と思うだろう。僕でもそう思う。
だからこそそういった魔物を狙って仕掛けたのではないかと。
「だがなぜ【世沸者】が魔物を欲するのだ? あの塔に魔物は必要ないだろう。だとすると……」
「間違いなく″同盟の戦力として″ですね。近々何かあるのかもしれません。派手な何かが」
一番可能性が高いのは【節制】同盟。ABBCの四塔同盟だ。筆頭が5位の【節制】なのだから【魔術師】同盟以上に厄介な相手に違いない。
メルセドウ貴族としても【赤】のアデルが王国派で【節制】のアズーリオが中立派。戦う理由は十分にある。
あとは【聖】同盟だが……SABBの四塔同盟はあまりにも強すぎる。いくら新進気鋭の【
人間至上主義を唱える【聖】同盟が、【
仮に【聖】同盟から申請がきても却下するだろう。いくらなんでもそれくらいの分別はあるはずだ。
……まぁ今まで想定外の下剋上を繰り返して来た【
「とりあえず申請を受けなくて正解でしたね」
「当然だろう。あれを受ける【魔導書】のほうが理解できない。何かしら勝てる算段があったのだろうがな」
「限定スキルでも取得しましたかね」
「可能性はある。その力を過信したか、それとも【世沸者】がそれを上回ったか。いずれにせよ戦う相手を間違えたということだ」
仮に強力な限定スキルを取得しても、いきなり【
まずは適当な低ランクの塔に仕掛け、その手応えを得てから受けるべきだ。
まぁ僕なら仮に手応えを感じてもあの連中と戦おうとは思わないが。
あの同盟にはすでに限定スキルを取得していると思われる【女帝】【赤】がいるのだ。
【世沸者】と戦ったとしても同盟連中に覗かれるから看破されるかもしれないし、【女帝】や【赤】のアドバイスを受けながら戦える【世沸者】が対応しないはずがない。
実際に【魔術師】【傲慢】といった限定スキル持ちの塔をいくつも斃しているしな。
仮にBランク以上の塔が全て限定スキルを取得しているとすれば、いくつの″限定スキル持ち″を破って来たというのだ。
あの同盟の実績は半端ではない。経験値で言えばそこいらの十年塔主をも軽く超える。
とにかく僕はあの同盟には関わらない。それは確定していることだ。
例え僕が今後、強力な限定スキルを得ることになったとしてもな。それだけは揺るがない事実だ。
……と、考えていたのだが、その目論見は約一月後に崩されることになる。
その時の僕はまだ知らなかったのだ。そんな日が来ることなんて――。
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