332:魔導書の塔を進軍しています!
■ノノア 17歳 狐獣人
■第500期 Dランク【
フゥさんからいくつかの塔を紹介してもらいました。
私の塔で活かせそうな、強い魔物を抱えている塔はどこかと。Cランクの中で。
最初に挙がったのが【審判の塔】。三年目でCランク72位。
ここは去年にドロシーさんが申請して却下された塔ですね。それでもフゥさんが勧めるほどの塔だということです。
魔物はナイト系や天使系がおり、
まぁ天使系は
ということで申請しましたが、却下でした。残念。
めげずにそれからも何件か
そして五件目でヒットしたのが【魔導書の塔】です。十一年目のCランク69位。随分と高いところになってしまいましたね……もうちょっと弱そうなところが良かったのですが……。
塔主はフォルア・ゴルドンさん。バレーミア王国の王都にある学院の元魔法教師、だそうです。アデルさん曰く。
【魔導書の塔】は魔法使い系の魔物が多く、【女帝の塔】にもいるウィッチ系統やハイフェアリー(C)、【赤の塔】にもいるブラディウォーロック(B)やデビルキャスター(B)、リッチ(A)などのアンデッドもいるということです。
【魔術師の塔】を彷彿とさせますが、あそこよりは四属性魔法を重視した魔物構成のようですね。アンデッドは少ないと。
固有魔物を一体召喚させており、それがAランクかSランクかは不明。六本腕の魔法使いのような見た目とのことです。
あとはウィッチクイーン(A)とリッチ(A)ですね。おそらく眷属だろうと。
固有魔物にしてもウィッチクイーンにしても人語を介せる指揮官タイプでしょうから、私としても欲しいところです。フゥさんも狙うならコレと仰っていました。だから【魔導書の塔】をチョイスしたのだと。
情報を聞く分には勝てそうに思うのですがね……やはり
おそらく限定スキルはまだ取得していないだろうと皆さんが予測していましたが、かといってないと決めつけるのもよくありません。
申請を受理するということは何かしら理由があるのでしょうし、それが限定スキルであるという可能性もありますから。
何が起こっても不思議ではないというつもりで臨みましょう。
◆
『はーい二人とも準備はいいかなー』
「はい」『は、はいっ』
『じゃあ始めるよー! 制限時間は六の鐘まで(約12時間)!
半日で【魔導書の塔】の全十階層を攻略しなければなりません。
あまり急がせるつもりはありませんが、私のほうが急いてしまいそうで怖いです。
「ペコ、パルク、ディーゴ、ヨギィ、みんな頑張ってね!」
『『プルプル』』『カタカタ』『うん』
今回は眷属全員で出撃です。私のそばから離れた事のない
あくまで主目的は
それに加え、大部隊での塔攻略というのも経験させます。これが第二目的。
ヨギィとパルクから離れてそれらを投入しますが、敵の殲滅はほとんどヨギィがやってしまうと思うので、本当に大部隊での行軍の経験とそれだけですね。
スライム部隊はペコが指揮官。アンデッド部隊は
スライム部隊だけでも斥候・壁役・回復・魔法攻撃と役割が分かれていますので、おそらくペコ一体だけでは指揮をとるのも不可能でしょう。
そこをディーゴとパルクに補助してもらいつつ部隊として動かしてみて欲しいという試みです。
一応、第二陣は第一陣の援軍という目的もあるのですが……ヨギィが苦戦するような相手がいればの話ですね。
さてどうなるか……私はなるべく見逃さないよう注視しておきましょう。
■フォルア・ゴルドン 50歳
■第491期 Cランク【魔導書の塔】塔主 69位
「一体何なのだ! あの魔物は!」
私は思わず画面に向かって吼えた。
ヨグ=ソトースとかいう固有魔物。それがあまりにも理解不能だったからだ。
おそらくスライム系の最上位種だというのは判明している。
なにせ身体からポロポロと小さいスライムを生み出すし、そいつらを偵察部隊のように扱っている。
ちなみに小さいスライムは【未完の魔導書】でも記載されなかった。別スライムではなくヨグ=ソトース本体が分かれたということなのだろう。
しかもヨグ=ソトース本体に攻撃を仕掛けようにも、魔法は全く効かない。やはり魔法は無効なのだろう。
仕方なしに物理攻撃も仕掛けさせたが――私の塔の場合、手段が限られるのだが――そのほとんどが返り討ち。
腕を触手のように変形させ、鞭のようにして薙げば、ただの一撃で斃された。
一回、本体に一撃入れられたこともある。
しかし斬れたと思ったら斬れていないようで、傷はすぐに復元し、ダメージも与えられていないようなのだ。
つまり物理も無効なのではないか、と予想したくもない予想をせざるをえない。
魔法も効かず、物理も効かず、じゃあどうやって斃せばいいのだと吼えることしかできなかった。
少女の姿は完全にフェイクだった。
その実はSランク固有魔物であり、最上位のスライムであり、何をどうやっても斃しようのない敵だったのだ。
「こうなれば遅滞戦しかありません」
「……ああ、そうだな。半日守り切ってのタイムアップ。それを狙うしかあるまい」
「幸いあのスライムの足は遅い。ただ淡々と歩いているだけです。それを止めることを目指しましょう」
それから、ただ耐え続ける時間が続いた。
少女と白いスライムの二体は本当にただテクテクと歩き続けた。
小さいスライムを階層中に走らせ、その偵察結果で順路を導いているようだった。
順路を外れることがあってもその方向にいる魔物を斃し、魔石を拾ってすぐに順路に戻る。
つまりはただ寄り道をして魔石を集めているだけだ。
時間の限られている
だったらもっと時間を潰させてしまえばいい。
私は眷属に通達し、時には必要以上に
だがそれが通用したのは最初だけだった。
少女と白いスライムは順路のみを進むようになり、順路を外れる場所にいる魔物については後続の本隊が対処し始めたのだ。
スライムとアンデッドの混合部隊。それが数にあかせて階層中の魔物を襲い始めた。
どうする……どうすればいい……!
ろくに足止めもできない。魔物はどんどんと斃されていく。
このままでは――。
■ノノア 17歳 狐獣人
■第500期 Dランク【
「ヨギィ、遠めの魔物はペコとディーゴに任せましょう。貴女は順路を選んで進んでみて下さい」
『うん、わかった』
ヨギィには事前に「なるべく多くの魔物を斃したい」という旨を伝えていましたが、さすがに順路優先と言いますか、攻略時間優先で進むよう改めて指示をしました。
敵が釣り出すような動きを多用し始めたのと、あとは単純にヨギィの足が遅いのが原因です。寄り道している暇はないなと。
そこまで焦るようなものではないんですがね。
何があるか分かりませんし、ヨギィが散歩感覚で歩いているので余計に焦ってしまうのですよね。
多分走ればある程度早いとは思うのですが、そこまでさせるのもどうかと思いますし……。
『なんか本当に子供のおつかいを見ている感覚になるのう』
『こちらも呑気になってきますわね。欠伸が出そうですわ』
『やっていることはとても呑気とは言えませんがね……ただの殺戮ですし』
『本当にすごいですね……構えもなし、殺気も出さず、何気なしにこのような攻撃を……』
『姿から何から全てフェイクやな。ただ軍や部隊としたら使いにくそうやけど』
そうなんですよね。行軍速度も遅いですし、攻撃方法も特殊なので部隊には向かないんですよ。
かと言って遊撃として扱えるほどの足もない。
壁役として突出させるか、行軍中の足だけ確保しておいて、ボス戦だけ任せるといった感じになるかもしれません。
とは言え、ミニヨギィの偵察は問題なさそうですし、魔物の処理も問題ないですし、罠に関してもミニヨギィにスイッチを踏ませる形で対処しています。罠自体の察知は出来ていないのですがね。
ただ罠と言っても、槍が出て来るような罠が仮にヨギィ本体に当たっても無傷ですし、毒も麻痺も無意味です。
火が出て来るような罠がどうか分かりませんね。魔法でないので吸収できないかもしれません。まだ喰らってないので分かりませんが。酸の罠だと効きそうですがね。これもまだです。
となると、やはり罠に関してはシャドウスライム(B)やアサシンスライム(D)に任せたほうが無難ですね。
ミニヨギィは地形把握や魔物を発見するのに使うべきでしょう。
第二陣のスライム部隊とアンデッド部隊に関しては予想以上に連携がとれています。
アンデッドはディーゴの召喚したスケルトンナイト(C)が多いので統率がとれているのも分かるのですが、あれだけ多種のスライムをペコが制御出来ているのが不思議です。
スライムは単純なので扱いやすいのでしょうかね。いつもスライム同士で遊んでいるので単に仲が良いだけかもしれません。
とりあえずもう少し様子見しながら色々と試してみましょう。これもいい機会ですから。
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