365:【赤の塔】vs【氷牙の塔】決着です!
■アデル・ロージット 19歳
■第500期 Bランク【赤の塔】塔主
わたくしは攻撃陣を編成し、【氷牙の塔】の攻略を開始しました。
色々と悩んだ部分もあるのですが、結局はこのような陣容に。
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ジータ(神)、ブラッディアサシン(B)、カーバンクル(A)、オルトロス(A)、ファイアウルフ(C)
ランスロット(★S)、ロイヤルナイト(A)、ジェネラルナイト(B)、ブラッディナイト(B)
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総数で百五十ほど。そのうちファイアウルフ(C)が四十ほどですから、基本はBランク以上の少数精鋭という感じです。
【氷牙の塔】ウルフ系が多いのでそれに対抗するため、ウルフ系が多くといった編成になっています。
斥候はあくまでブラッディアサシン(B)ですが。
ジータが総指揮。集団戦となった場合はジータが遊撃になりますのでランスロットが本陣の指揮をとることになります。
【黄神石の塔】で得たTPの多くはランスロットと配下のナイト部隊に使っています。そこに【赤の塔】の魔物であるブラッディナイト(B)も組み込んだ形ですね。
鍵になるのはクルックーとパタパタの飛行部隊になると思います。
火魔法が弱点というのもそうなのですが、【氷牙】には飛行系魔物がほとんどいないのですよ。それは確認しました。
その分、天井高が一階層分しかないのが難点ではありますが、天井付近からの魔法攻撃というのは効くはずです。
ただ固有魔物の狼やフェンリルあたりがジャンプすれば天井まで攻撃が届くでしょうから、そこは要注意ですわね。
くれぐれも近づかないよう、遠距離を保たなければなりません。
そうして【氷牙の塔】の攻略を始めましたが、道中は特筆すべきところはありません。
すでに順路もそこにいる魔物も把握しておりますし、罠にしてもブラッディアサシン(B)で対処可能ですからね。
指揮官も多いので統率のとれた行軍ができます。
塔構成や罠配置、魔物配置は今まで戦った相手よりも巧い印象です。よく考えられているなと。
正直、今のわたくしたちの塔の方が巧くて難易度も高いとは思いますが、一人でこれを創っていると考えれば塔主の力量の高さが伺えるところです。
同じ寒冷の塔としてシルビアさんが参考に出来るところもあるのではないでしょうか。
しかし最初にアイスウルフ(C)の群れと当たった時に違和感があったのです。
同じCランクのファイアウルフが完全に力負けしたのですよ。
さらに攻撃を受けた箇所が凍り付くような状態異常も起こしていました。火属性の狼なのに、です。
アイスウルフは【六花の塔】にもおりますが、シルビアさんから見ても「これはおかしい」と思ったそうです。
おそらく限定スキルだろう。それは同盟の皆さんも全会一致でした。
ザゥラは自塔内の魔物に対するバフ型の限定スキルを持っている。
だから【赤の塔】に仕掛け、だから完全防衛策に出たのだろうと。
なるほど、【忍耐】や【輝翼】よりもわたくしの方が狙い目というのも分かる話です。
そうなるとまず考えるべきは近寄らせないこと。それと壁役をしっかり使うこと。指揮官の腕の見せ所ですわね。
魔力の消費は増えますが致し方ありません。
接敵するたびに斥候を下げ、壁役を前に出すという形で対処します。まぁ基本に忠実と言えばそれまでですがね。
「こうなると十四階層が益々厄介ですわね」
『シャルロットの嬢ちゃんの付与魔法が欲しくなるな。まぁこっちの魔法部隊に頑張ってもらうしかないが。……やっぱあの剣、借りてくりゃ良かったな』
エメリーさんの魔竜剣ですね。あの特大剣ならば<
あまり頼りすぎるのもどうかとも思いましたし、リスクを考えるとあまり持ち歩きたくはないのですよね。
万が一、こちらが負ければ【氷牙】の手に渡るというのもそうですが、武器を盗んだり複製するような限定スキルがあってもおかしくはないですから。そうなれば敵に塩を送るだけです。
ですので基本的には【女帝の塔】だけで使うようにしましょうと、これは同盟としての考えでもあります。
エメリーさんにとってはただの予備武器なのかもしれませんが、わたくしたちから見れば
異世界の国宝級武器などわたくしたちには荷が重いですから。
そのようなことを考えながら十三階層に辿り着きました。被害はファイアウルフ(C)が十体だけ。
まぁその程度ですわよね。そうなるように部隊編成をしたのですから。
【氷牙】にしても十四階層での迎撃しか考えてないでしょうし。
そこでクルックーが合流。鳥部隊と回復部隊を統率します。
今まではパタパタが担っていましたが、十四階層に限っては別の役割があるのですよね。
――ジータと共に油瓶を投げまくる、という役割が。
ジータのマジックバッグには油瓶が大量に入っています。それをジータとパタパタにはまず投げてさせます。
最近の【
【赤の塔】は火属性の塔ですから一番有効活用できそうですし、せっかくなのでわたくしも使わせてもらいますわ。
もちろんジータは遊撃兼メインアタッカーですし、パタパタは風魔法でのサポートをしてもらわなければなりません。
しかしまずは油だと。
ランスロットが防備を固めているうちに、なるべく多くの敵を油まみれに、そして即座に燃やしていきます。
雪原ですから油による行動阻害はほぼ意味ないのですが、火属性のダメージを稼ぐチャンスですからね。
どうやら狼たちは油を当てられると雪の地面でゴロゴロして油を落とそうとしているようなのですよ。
ですので瓶を当てた傍から火魔法を放ちます。そこはクルックーに任せましょう。
襲い掛かる狼たちを火だるまにし、それを抜けてくる者はランスロットが防ぐ。
マンモスは後回しですわね。足も遅いですし。あとで適当に焼いておきましょう。
そうしてジータたちは十四階層の入口から動かず、あくまで敵を迎え撃つという姿勢を崩しません。
これは十三階層に一時避難するということも考えてのことです。広い雪原は敵の庭なのですから、何もそこだけで戦う必要もありませんしね。
こちらの策は順調に嵌っていたと思います。まずは近寄らせない、そして近寄ったら壁役で守る。その隙に油瓶と火魔法でダメージを稼ぐと。途中までは面白いように戦果を稼げておりました。
しかし最後尾で見かねていた固有魔物たちがついに動き出したのです。
Sランクの狼が前、Aランクの二体が後ろという三位一体の陣で襲い掛かってきました。
当然のように足は速いのですが、何も足場のない空中でジャンプなどもしています。おそらく<空跳>というスキルでしょう。
三体とも氷のブレスを吐くようなのですが、Sランクは雷を纏って攻撃も出来るようですし、Aランクのほうは一体が神聖魔法による回復、もう一体が闇魔法によるデバフと、役割が明確に分かれています。
【世沸者の塔】のAランク固有魔物も天使と悪魔のスライムだったので、もしかしたら同じように役割分担出来る前提なのかもしれません。
『あれは私が相手をします! 部隊はフェンリルを当たれ! クルックー殿、援護を!』
Sランクの狼の前にはランスロットが立ちふさがりました。
Sランク同士、かたや氷と雷の巨大狼、かたやアダマンタイトの騎士。
限定スキルによる強化があってもランスロットは簡単に斃されたりしません。物理防御・魔法防御共に最硬ですから。
そこにクルックーの回復が入ればもう要塞のような堅牢さです。
『パタパタ! 黒い方を足止めしてくれ! 俺は先に白いのをやる!』
『了解!』
まず斃すべきは神聖魔法使い。ということでジータは白いほうのAランク固有魔物を狙いました。
その間、パタパタが闇魔法使いを対処すると。
こちらは問題ないでしょう。ランク差が違います。いくら狼が強化を受けていてもパタパタは飛びながら魔法を放つわけですしね。機動力と魔法力で確実に勝てます。
ジータにしても問題はありません。
狼に近づいてしまえば神聖魔法も意味ないですし、その速さと攻撃力が高いといってもエメリーさん以下なのは確実。
【風】の
それはそうですわよね。固有魔物と言っても所詮はAランクですし。
ジータと正面から戦わせるにはせめてSランクの魔物が必要でしょう。
おそらくザゥラにとって多くが予想外のことだったでしょう。
油瓶もそうですが、順路を間違えずに塔を最速で攻略したりだとか、十三階層で突然クルックーが現れたりだとか、Sランク固有魔物が三体もいるだとか、そういった積み重ねがあったはずです。
ジータにはSランクの狼を当てるつもりでいたのは間違いありません。
まさかジータ以上に守備能力に特化した眷属がいるとも思わないでしょうし、それが攻撃側で来るとも思わないでしょう。
そして偵察・回復・火魔法攻撃のできるクルックーの存在。
今回の
Aランクの狼二体が斃れ、Sランクの狼も集中攻撃をくらう形となりました。
さすがはSランク固有魔物とばかりに動き回り、飛び跳ね、我武者羅に攻撃してきましたが、ジータと三体のSランク固有魔物が相手ではどうしようもありません。
巨大な狼は斃れ伏して、最後にマンモスが残った格好です。足が遅く攻撃力が並でも防御力と体力だけは馬鹿げていますからね。最終的には燃やされていましたが。
最上階に行くと、塔主のザゥラは暴れておりました。
『なんでだアデル・ロージット! なぜ俺の愛が分からん! なぜ受け入れようとしないのだ! 俺がこんなにも想い続けていたというのに――』
気持ち悪いことこの上ないですわね。
ジータに近づけさせるのも嫌でしたのでクルックーに遠距離魔法で
『なんじゃ、【赤】を狙ったのは色恋沙汰というわけか。とんだ変態がおったもんじゃのう』
『うわぁ……大変やなぁアデルちゃんも……ご愁傷さまやで』
『いくらアデル様がお美しいとはいえその命を奪おうとするなど……理解できませんね』
皆さんに哀れみの言葉を頂きましたが余計に悲しくなりましたわ。
なんでこう妙なのに好かれるのですかね。【傲慢】の
把握できたら即座に消していきたいですわね。こんなもの害虫駆除と同じですわ。
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