366:世沸者の塔はいろいろ苦労しています!



■ノノア 17歳 狐獣人

■第500期 Dランク【世沸者よわきものの塔】塔主



 新塔主の塔がオープンしてから約一月で私たちは幾度も塔主戦争バトルを行いました。

 ずっと申請しては断られ続けてきたので、ありがたいことではあるのですが、それにしても多かったなと思います。


 やはりこの時期は新塔主を中心に塔主戦争バトルが多くなるので、その結果が神様通信で送られてくることも多いんですよね。

 そうなると「うちも塔主戦争バトルをやっておくか」とか「どこかに消される前に申請しなきゃ」とか、そういう心理が働くそうです。アデルさん曰く。

 だから私たちが戦う機会も得られた、と言えるのかもしれません。



 いずれにせよ短期間で五戦ですか。まさかこれほど出来るとは思っていませんでした。

 【世沸者】対【狂乱】から始まり、【輝翼】対【隠者】、【六花】対【鬼面】、【六花】対【息吹】、そして【赤】対【氷牙】と。


 おそらく【六花】対【熱線】もこの後に控えているでしょうし、この流れで【女帝】と【忍耐】が何もないとも思えません。

 申請しているどこかが受理をするか、突然申請されるかは分かりませんが、おそらく強敵と戦うことになるのでしょうね。

 まぁシャルロットさんとドロシーさんの心配はしていませんが。



 【氷牙の塔】と言えば、驚いたのは私の塔と同じように固有魔物を三体召喚可能だったこと。

 かなり稀にあることのようなのですが、実際に私以外に見るのは初めてなので少しビックリしましたね。


 三位一体で戦う狼たちはすごく迫力がありましたし、仮にジータさんとランスロット(★S)さんのお二人で戦っていたら……とか考えてしまいます。下手したら負けそうですよね。



 となると、私も召喚しておいたほうがいいのかぁと考えてしまうのです。


=====

□デーモンスライム★/A/22,000TP

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 これですね。エンジェルスライムパルク(★A)の神聖魔法と反発してしまうのではないかと思って躊躇していたのですが、パルクはリッチディーゴ(A)とも仲が良いですからね。

 天使と悪魔やアンデッドのように極端な関係性ではないのかもしれません。


 もしデーモンスライムが闇魔法を多用する戦い方であれば、ヨグ=ソトースヨギィ(★S)を前に出して、パルクの回復とデーモンスライムのデバフであの狼たちと同じような戦い方が可能となります。


 まぁヨギィの欠点である足の遅さは改善されないでしょうが、攻撃力の低さはデバフでカバーできますからね。

 そう考えると、召喚しておいたほうがいいのかなぁと。



 ただ他にも召喚したい魔物はいるのです。主だった召喚報酬がこんなところ。


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【霧雨の塔】霧魔獣ザイオン(★S)、ミストドラゴン(★A)

【魔導書の塔】六道魔導オルフェウス(★S)、ウィッチクイーン(A)

【狂乱の塔】狂竜ラグナヴォイド(★S)、狂戦士シンフィヨトリ(★A)


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 まだ召喚していないのでどうしようかと。

 特に【魔導書】の魔物が非常に魅力的ですね。人型ですし魔法使い系ばかりですし。


 ただ現状は眷属枠もいっぱいなので、これらの魔物どころかデーモンスライムも眷属化できません。

 Cランクに上がっても一枠増えるだけですからね。そこでまた悩みそうではありますが。



 報酬TPも溜まりに溜まっているのですよねぇ……こんなことを言うとまた皆さんに羨ましがられそうですが。

 ヨギィを眷属化させた際に十四万TPほど失ったのですが、そこから塔を二つ斃したので、今は三十五万TPほどあります。


 やろうと思えばめぼしい魔物を全て召喚することは出来ますし、何なら限定スキルを取得することもできます。

 ですが私の限定スキルはちょっと分かりづらくてですね……。


=====


□世沸者の熱情/290,000TP:敵の感情の起伏をTPに変換する

□世沸者の慟哭/360,000TP:状態異常【叫喚】にする

□世の沸上/450,000TP:自管理エリアを熱狂させる


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 おそらく<世沸者の熱情>が内政型、<世沸者の慟哭><世の沸上>がデバフ型だと思うのですが、現状で取得できるのはTP的に<世沸者の熱情>くらいです。

 これを急いで取ってもなぁ……と考えてしまうのですよ。


 諜報型やスキルに対する防御型であれば優先したのですがね。何と言いますか「絶対に必要だ」とはならないのです。


 それこそBランクに上がる為にTP稼ぎも兼ねて<世沸者の熱情>を取得しよう、という感じになるのではないでしょうか。

 少なくとも今の私には限定スキルは必要ないな、と思っています。



 ということで、じゃあ魔物を召喚しようか、となるのですが眷属枠もないし急を要する感じではないと。

 結局は棚上げしている状態です。



『だったらさっさと塔構成を創っておけ。どうせ後期でCランクに上がるんじゃからな』



 とフゥさんにも言われています。魔物の召喚は置いておいて塔をある程度創っておかなければなりません。


 どうやら私はCランクに上がるそうです。皆さん曰く。

 そうなったら全十階層ですからね。広くも高くもなりますし、そうなったら大変な修正作業に追われることでしょう。


 私の塔は小部屋ばかりで複雑な塔構成ですからね……少し広くなるだけでも大変なんですよ。

 既存の階層でも部屋を増やしたり、部屋を広くしたり、ギミックを移動させたり、罠を設置し直したりと。


 でも『無の階層』のままよりかは創っておいたほうがマシですからね。今のうちから創りましょう。



 現状の【世沸者の塔】は最高到達地点が三階層の前半。

 三階層の往復転移魔法陣に辿り着いた侵入者の方々はかなり驚いていましたね。普通は五階層にあるものですから。

 その情報はすぐに冒険者ギルドに入り、結構大騒ぎになったようです。


 今まで一、二階層で厳しいと感じていたパーティーも、三階層まで一度でも行けば一、二階層を無視できるわけですから。そこまでは頑張ろうと意気込んで来てくれているようでした。


 集客を増やす目的だったのでそれは成功だったのですがね……なぜTPが沢山ある現状でそこまで集客に拘ってしまったのか分かりません。今も初志貫徹の精神で集客を増やそうとしています。



 現在の【世沸者の塔】ですが、四階層の途中までが創り終わっています。

 一応、階層ごとのテーマがありまして、一階層は『足止め、時間稼ぎ』、二階層は『討伐orダメージTP稼ぎ』です。

 内容は同じようなギミックだらけの連続小部屋なのですが、ギミックや罠の種類を変えることで二階層のほうが危険性の高いものになっているわけですね。



 そして三階層ですが『分断』がテーマになっています。

 これは大人数での侵入や塔主戦争バトルを意識してのことです。まぁ後者は考える必要がないかもしれませんが。


 私の塔を攻略しようと考える人は、おそらく人海戦術でどうにかしようと考えるはずです。

 どこかの国が文官衆を引き連れて攻めて来る、というのが一番危険そうではあるのですが、DランクやEランクの文官さんなどいないでしょうからその線はほぼなくなりました。

 となれば軍師のいる騎士団であるとか、参謀のいる傭兵団であるとか、そういった人たちが怖いわけです。


 それを分断できないかと。欲を言えば大隊を小隊レベルまでした状態で各個撃破できればいいなぁと思ったのです。


 冒険者パーティーであっても大体四~六人編成のところが多いのですが、それが二~三人ずつに分かれれば強さは半分以下になるでしょう。やはりパーティーが揃って強さが発揮されるみたいなところもあるでしょうし。

 そういった意図、目的を持って創った階層となっています。



 三階層の入口にはまず塞がれた扉が二つあり、正面の壁には『手形の絵』が掛けられています。

 その手形に手を当てると、右側の扉が開きます。その扉の先に誰かが入った状態で手形から手を離すと、左側の扉が開きます。


 つまり誰かが手形に触れていないと右側の扉には行けませんし、誰かが右側の道に入らないと左側の扉が開かないということですね。


 塔を創る上でのルール『道は繋がっていなければならない』というのも大丈夫です。右側に進んでも左側は開いたままですので。



 これを模したものが【女帝の塔】や【忍耐の塔】にも使われています。

 【六花の塔】で私が考案した階層も似たような感じですね。

 さすがにここのギミックをそのまま使うことは出来なかったようですので、若干違う形ですが。


 冒険者パーティーでこれをやる場合、一人を残して先に進むか、半分ずつに分かれるかという選択になります。

 そうして左右の道に分かれた先でそれぞれ謎解きがあり、時に合流したり、また分かれたりを繰り返しながら階層突破を目指します。



 ただ『分断』した上で各個撃破が目標ではありますので、当然トラップは凶悪ですし、この階層からは本格的に魔物も出てきます。


 謎解きに間違えたら襲ってくるだとか、隠し部屋かと思ったら魔物部屋だったという感じですね。

 基本的にはリッチに召喚してもらったスケルトン(E)の群れですが、スケルトンソードマン(D)やスケルトンガードナー(D)も混じっています。


 それと後半は二分割ではなく四分割であるとか、なるべく敵部隊を小分けに出来るような形にしています。

 五分割以上になってしまうと冒険者パーティーがクリア出来なくなってしまうので、せいぜいその程度ですね。

 あとはもう少人数になっても頑張って罠に気を付けながら謎解きして下さいという感じです。



 そして今作成中の四階層ですが『対斥候、対魔法使い』をテーマとして色々組み込んでいます。

 今までの階層も『対斥候』ではあるのですが、もっと的確に狙いを絞って討伐TPを狙う感じですね。

 ここまで来るともう侵入者対策というよりは魔物対策の意味合いが強いです。


 私の【世沸者の塔】が塔主戦争バトルで使われないというのは分かっていることなのですが、高ランクの塔が謎解きに特化した限定スキルを持っていて、仕掛けて来るという可能性もあります。


 もちろん申請されれば私だって怪しいと思いますし却下の線が濃厚なのですが、万が一戦わざるを得なくなった時のために魔物の対処を考えておかなければなりません。

 まぁ同盟全体で脱Cランク病にも取り組んでいますしね。その一環でもあります。



 例えばシャドウアサシン(C)の<影潜り>対策で照明部屋を創るというのもそうですね。【女帝の塔】や【輝翼の塔】にもありましたが、私ももちろん創っています。

 そして<罠察知>の効かないギミックと、効いても意味がない罠。部屋に入ると自動的に毒ガスを浴びるだとかそういう類のものです。


 魔法使いに関しても、後衛に対して物理攻撃となるような罠であったり、属性魔法を当てて扉を開けさせ、その相反属性の攻撃が出るような罠であるとか。

 これがなかなか緻密で難しいのですが、出来る限り敵部隊を削ろうと思って創っています。



 そういったわけで、とりあえずはこの四階層を仕上げることが優先ですね。

 色々と案はありますのでそれを形にするだけなのですが……それが難しいんですよねぇ。

 ドロシーさんあたりに手伝ってもらいたいくらいですよ。はぁ。



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