367:フゥさんが限定スキルを取得します!
■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 52歳 ハイエルフ
■第500期 Cランク【輝翼の塔】塔主
【赤の塔】が【氷牙の塔】に勝利した。
本来ならばもっと苦戦したじゃろうな。少なくとも最初から引き籠らず
いくら【氷牙】の魔物が火属性に弱いと言ってもフェンリル五体ほどの群れを送り込まれたらそれなりの防衛陣を揃えなければいけないし、そうなると攻撃陣が薄くなる。
ジータに加えSランク固有魔物が三体もいたから、あの固有魔物三体を同時に戦えたのであって、一体でも減っていればまた別の策でいくしかなくなるからのう。
それこそ
鍵となったのはランスロット(★S)じゃと思う。
全身がアダマンタイトで出来た騎士は、Sランク固有魔物の攻撃を防ぎきり、氷のブレスは足止め程度にしかならず、固有スキルと思われる雷纏いも効果なし。限定スキルで凍結が付与されていようとも意味がない。
これは【氷牙】にとって火属性以上に相性の悪い相手じゃ。
それを攻撃陣として送り込むことが出来たことが、勝利に繋がったと思う。
もちろんクルックーの偵察もあるがのう。ファムを使っとるわしが言うのも何じゃがあれは反則じゃな。デメリットもあるが。
ともかくそうした戦いを見ていて思ったのは、やはり『攻撃陣に使える前衛の重要性』じゃな。
わしの塔には
飛行・魔法戦力が多いからなんとか誤魔化しておるが、それを活かすならばちゃんとした地上部隊を創るべきじゃ。
物理攻撃・壁役・斥候、これらを用意しておかなくてはならない。
それは【隠者の塔】戦でより強く思ったことでもある。
ちゃんとした攻撃陣を創っておれば十四階層でヒュドラと悪魔部隊に対し、『戦わずに最上階に抜ける』という選択肢をとる必要もなかった。
どれほどの魔石と召喚権利を失ったのかと。勿体ないことをしたと今でも悔む。……まぁ勝利が優先なので仕方ないがのう。
候補としてはこんなところじゃな。
=====
【人形の塔】パペットマスター(★A)、人狼王ガストン(★S)
【隠者の塔】陰魔シュルガット(★S)、シャドウデーモン(A)、シャドウデビル(C)、デーモンナイト(A)、デビルプリースト(B)、デビルキャスター(B)、シャドウアサシン(C)、アサシンリンクス(C)、ファントムイーグル(B)、キラーオウル(C)、マーダーカメレオン(B)、クリアリンクス(C)、ミミックファング(A)
=====
シュルガットを指揮官とした悪魔部隊が一番バランスは良いんじゃが、そうなるとうちの神聖属性使いと干渉するかも……と危惧しておる。ヴィゾフニル(B)とかガルーダ(A)とかじゃな。
天使ではないからそこまで気にしなくてもいいかとも思うが、【輝翼の塔】に配置するならやはり別階層にすべきじゃろうな。
というわけでBランクに上がったら悪魔階層を創るのは決定。その際に召喚することにしよう。
【人形】の固有魔物も捨てがたいんじゃよなぁ……パペットマスターは単純にTP消費なしで部隊を形成できるし、ガストンはウェアウルフ部隊を召喚すればなかなかの前衛となれる。
攻撃・敏捷・体力が高く嗅覚も優れているウェアウルフ部隊というのは色々と不足しているわしの軍からしたらありがたい。
まぁいずれにせよ今の【輝翼の塔】は実質全五階層しかなく、魔物を置けるのも四階層分しかないわけじゃ。あれこれ自由に召喚とはできぬし、大改装をして無理矢理スペースを創るような真似もしたくはない。
今の塔の出来にはある程度満足しておるからのう。
では早くBランクに上がるためにはどうすればいいのか――限定スキルの取得しかない、と。
現状、TPは持っておる。【隠者の塔】戦の準備ではヴィゾフニル(B)の召喚と照明部屋くらいしか使っておらんからのう。
元々貯蓄してあったTPに加えて報酬TPで三十五万TPといったところじゃ。
それで限定スキルのリストを見てみれば――。
=====
□輝天の翼/270,000TP:空を飛べる
□輝翼の扇/310,000TP:風をつくる
□輝きの森/520,000TP:自塔指定エリアに隠れ家をつくる
=====
この説明不足すぎるラインナップが出て来るわけじゃ。
取得可能なのは<輝天の翼>か<輝翼の扇>の二択となるが、どうしたものかと悩みに悩んだ。
ゼンガー爺や眷属たちとも相談したし、同盟の皆とも相談をした。
どちらにせよ憶測で可能性を見出し、あとは運の勝負になる。有用かそうでないか、取得してから見てみるしかない。
結果、わしは<輝翼の扇>に決めた。当初は安い<輝天の翼>にしようと思っておったが、何となく汎用性がありそうな<輝翼の扇>にしたわけじゃ。
そうして意を決してスキル取得に踏み切ったわけじゃが……なるほど、劇的な変化は何もない。シャルたちが言っていたとおりじゃな。
まずわしのステータスを確認。おお、確かに取得はしておる。
そこにある<輝翼の扇>をタップし、その内容を確かめて見れば――。
=====
□輝翼の扇/310,000TP:風をつくる
【効果①】
扇を創り出し、それを扇ぐことで風を発生させる。ダメージは発生しない。
扇は塔主しか持つ事はできない。創り出す風の強さで消費魔力が変化する。
【効果②】
操作画面の【塔内魔物・罠配置設定】にある【輝翼の扇】タブを開いて自塔内に気流の発生点・方向・風量を指定する。
風にダメージは発生しない。操作は侵入者が塔内に入っている状態でも可能。
設置するたびにTPを消費する。
=====
「ほうほうほう! なるほどのう!」
「ふむ、検証は必要ですがこれは想定していたよりも当たりの部類なのでは?」
これを攻撃型と言っていいのか、それともトラップ型とでも名付ければいいのか分からぬが、少し考えただけでも有用なのは間違いない。
わしは【効果①】のようなものを想像しておったからのう。″扇″というくらいじゃし、それが具現化されるならばゼンガー爺に持たせて戦場で使わせようと考えておった。
それがわし以外に使えぬというのは残念ではあったが、代わりに【効果②】が付いてきた。これが俗に言う『取得してみないと分からない限定スキルの効果』というやつじゃな。
塔内に自由に気流を生み出すというのは、ダメージこそ入らぬがいくらでも応用が効く。
風自体は【天候設定】で弄れるが、『とあるエリアにいつも強風』とか『定期的に強風』とかに出来る程度じゃ。
それが侵入者が入っている状態でも自由に弄れるという。
つまり、通常営業時でも
これなら『橋を渡っている最中にいきなり横から突風が来た』ということも出来るし、下降気流を敵部隊にぶつければ飛行系魔物は地に落ちるかもしれぬ。
上昇気流を地上部隊にぶつければ陣も乱れる。……まぁ地面から上昇気流を創ることが出来るかは分からぬが。
風自体にダメージはなくともそこからTPを稼ぐことも可能じゃろう。少し考えただけでも案は出て来る。
あとは設置にどれほどTPが掛かるかじゃな。それと【効果①】のほうもわしの消費魔力を調べておかなくてはならぬ。
それと重要なのが、『わしが直接戦いに関与できるようになった』ということじゃな。
塔主というのは事前に塔を創っておいて、戦いとなれば魔物や眷属に全てを任せる。あとは玉座に座って指示をするのみ、というのが基本じゃ。
塔主自身が戦う場合もあるが、それこそ例外中の例外としておく。
しかしわしがいつでも気流操作できるとなれば、例えば敵部隊が
これこそさすがに検証や訓練が必要じゃが、可能性が広がったのは間違いない。
なるほど限定スキルとは反則めいた力じゃと、取得して初めて実感した。
『いいなー、ウチが好きそうなスキルやん。そんなん欲しかったわ』
と、ドロシーは言う。確かにドロシーが好きそうな限定スキルと言われればその通りじゃな。
わしもこのようなトラップめいたスキルがあること自体知らんかったからのう。
アデルの<赤き雨の地>も内政型と言うかデバフ型と言うかそんな感じじゃからな。
「羨ましがるならドロシーも取ったらどうじゃ。どうせ狙っておるんじゃろ」
『そら狙ってるけどもやな、もうちょっとって所やねん。貯蓄はヘルキマイラ(★S)の召喚で減ったし、【竜翼】の報酬もパルテアの眷属化に使ったし』
ドロシーは前々から限定スキルを狙うと言っておったからのう。それが先延ばしになっている格好でもある。
まぁドロシーの場合は限定スキルのリストが明らかに防御特化になっておって正直魅力的ではないからのう。
それもあって踏み切れていないと思うのじゃが。
とは言え、わしに先を越されれば焦らざるを得まい。
別に急かしているつもりはないがのう。わしとしては共に仲良くBランクと行きたいものじゃ。
おそらく今まで以上に
Dランク以下でも構わんとばかりに数を熟そうとするかもしれぬ。……まぁ簡単に受理されるとも思えぬが。
いずれにせよわしは応援するのみじゃな。
こちらはこちらで先に検証しておかなければならぬ事が多いし。
ふふっ、忙しくなってきたのう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます