141:私は塔の運営で忙しいのです!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
「相変わらず熱心ですねぇ」
「本日は……43名ですか。徐々に少なくなっていきますね」
それはそうでしょう。毎日何人かずつお亡くなりになっているわけですし。
あ、言うまでもなくニーベルゲン騎士団の皆さんの件です。
挑戦し始めて二週間弱ですか。毎日毎日大勢で押しかけてきます。
アデルさんの情報ではすでに「ニーベルゲン騎士団が【
私のところだけではなく同盟の皆さんの塔にも同じように毎日侵入しています。
始めの方はそれこそ百人規模で攻め込んで来ましたが、探索しづらいと思ったのか、負傷者が多かったのか分かりませんがどんどんとその数は減り、今では四~五〇人といったところです。
どうやら五塔にそれぞれ同数といった感じで振り分けられているようですね。
【女帝の塔】だけ数を多くして攻めろ、みたいなことはないようです。
これに対し皆さんは「今日も来てくれてありがとう」といった雰囲気です。
どういうことかと言いますと、この騎士団は他の侵入者に比べ、ダメージTPや討伐TPを落としやすいのです。
冒険者パーティーのような探索の思考は持っていないですし、そもそも斥候がいません。
集団でジリジリ攻めて、それでも罠や奇襲をくらうと。それを数で対処すると。そういう感じです。
こうなるとアデルさんもドロシーさんもフゥさんも、やりたい放題です。
勝手にTPを落としてくれるので騎士団に対しては極端な討伐TP狙いとなっているようです。
私も他人のこと言えませんけどね。<帝政統治>のTP試算にはうってつけの侵入者なので助かります。
ノノアさんも最初こそ心配していましたが今のところ問題なし。
謎解きは二階層の半分まで進んでいるようで、これは最高記録の更新となります。
やはり【世沸者の塔】において数は力。それも毎日続ければ二週間弱でここまで来られると。
逆に二週間弱でこれだけ? とも思いましたが、ノノアさんの罠と特製謎解きが功を奏して、探索は遅々となっているようです。
「こ、この先の謎解きはもっと難しいんですよ。た、多分この人たちじゃ大ボス部屋に届かないんじゃないかと……」
というノノアさんのご意見。いつになく力強いです。
仮に大ボス部屋に辿り着いても手持ちの魔物で十分に対処は可能。
エメリーさんとジータさんが画面共有で見て極端な偽Fランクみたいな人はいないとお墨付きを頂いてますので。
そういったわけでノノアさんも含め、五人全員「TPをありがとう」という気持ちで見ているわけです。
いつまで続くのですかね、これ。出来ればずっと続いて欲しいとさえ思っていますけど。
ちなみに【女帝の塔】で言いますと四階層まで進んでいます。
一階層、二階層は物量でどうにかできますし、三階層では罠に苦戦しつつもどうにかできました。
しかし四階層の『トラップ回廊』は無理でしょうね。相当時間がかかるでしょう。
まぁそんな騎士団の動向よりも私は<帝政統治>と向き合っている日々なのですがね。
「エリアはとりあえずここで固定ですか」
「そうですね。まだ検証段階ですけど現状では一番効率が良さそうです」
三か所に分けて設置していた<帝政統治>のエリアですが、今は三階層のボス部屋に三つまとめて並べています。
ここが一番、ダメージTPと討伐TPが狙える場所に思えたので。
即死系の罠と組み合わせるというのも色々と考えたのですが安定性を求めるならばボス部屋ですかね。
侵入者の人たちは階層最後のボス部屋となると無茶するケースが多いのですよ。
多少傷ついても斃せれば階段を上れる。そうなれば名声にもつながるし、上った先の帰還用転移魔法陣ですぐに帰れると。
ですのでボス戦でダメージを受けやすいですし、あわよくば討伐TPも狙えるというわけです。
そして一階層や二階層のボス戦よりも三階層のラミア部隊のほうがダメージを与えやすいということでここにしたわけですね。
人数で言えば一階層>二階層>三階層なのですがやはり魔物の差です。
ならば魔物の配置を弄ろうか、塔構成や罠配置も弄ろうか、よりTPを得るにはどうするか、と考える毎日。
自分で言うのもなんですが「あー、私塔主してるなぁ」と思ってしまいます。
「ラミアには出来ればあのエリアに侵入者がいる時に攻撃して欲しいんだけどねー」
「ラージャさん、それをやるとラミアさんたちが余計に戦いにくくなっちゃいますよ。今は普通に戦ってもらって大丈夫です」
「うーん、なんかもったいないのよー」
気持ちは分かります。が、それをやってしまうと「このエリアに入るまでは攻撃は控えておこう」となってしまうのでダメです。
結果的にダメージTPを稼げなくなると思います。
それに将来的には「ボス部屋の中央ほぼ全部」がエリアになると思うので今、下手に戦闘を縛る必要もないでしょう。
まぁそこに何エリア、何TP必要になるのか分かりませんけれど。
ともかくそうした試行錯誤でTP収入はわずかに上がり、騎士団の方々のおかげでさらに少しプラスという現状。
五連戦後の侵入者増加状態に比べればかなり落ち着きましたが、世間的には相変わらず「人気の塔」と見られてもいるようです。
これを徐々に伸ばしていきませんと……はぁ、早く黒字になりたい。
いえ、黒字と言うか先行投資分の回収ですね。<帝政統治>は恐ろしいスキルです……。
と、そんなところに同盟の全体通信がつながりました。
『見て見てー! こんな感じでどないやー? ちゃんと映ってるかー?』
おお! ドロシーさんの玉座の後ろ、その左右に旗が吊るされ飾り盾が飾られてあります。
こうして見るとかっこいいですね。私は自分の画面を見られないですから。
と言いますか創るの早くないですか?
ヴィクトリアさんが頑張っていたのは知っていますが――現在進行形で頑張って織っていますが――スマイリーさんも随分頑張りましたね。
『うわぁ~すごいですよドロシーさん! 王女様みたいです!』
『うむうむ、ええのう! わしも早く飾らなければな!』
『隣にスフィーさんとウリエルさんが立つと一層よろしいですわね。塔主総会でウリエルさんを見せるかは別ですが』
スフィーさんも翼があって騎士っぽい風格なのでウリエルさんに近いんですよね。ウリエルさんは天使の輪があって六翼なんですが。
それでもドロシーさんの玉座の両隣に並ぶとすごく迫力があります。
ウリエルさんは塔主総会で見せるのですかね。普通なら秘密にしておきたいところです。
しかし「【忍耐】なら天使がいて当然」とも思われているでしょうし、あえて見せることで注意をそこに向けるといったこともできます。
ここは要相談ですね。主に【傲慢の塔】同盟にどう思わせるかという点で。
ドロシーさんの盾は黄色・白・金・赤茶などがベースの色となっていて、二本のハンマーと三対の白翼、五色の輪が組み合わさったような図柄になっています。
私のように四つに区切って、とかはしていません。
旗はその塔章を中心に黄色・白・赤茶で縦線を形成しているようなデザインですね。
ちなみにデザイン自体は皆さん出来上がっていまして
アデルさんは赤・金をベースに杖と特大剣、そして炎と五色の輪が組み合わさった塔章。
旗も同様に真っ赤で豪華な印象ですね。
フゥさんは緑・白・銀をベースに木々と杖と五色の輪。中央に白い鳥が羽ばたいているのが象徴的です。
旗も緑と白の縦線で縁取りに銀色も使っています。
ノノアさんは茶色と白をベースに小さい四角が延々と並んでいる不思議なデザイン。その中央には狐の顔を模した紋章があります。すごく独特ですが理路整然としていてカッコイイです。
旗もまた小さな四角を散りばめた面白い柄です。よくこんなのデザインできますね。
ヴィクトリアさんも楽しそうに織っています。
「ドロシーさん、バベルの転移門には飾るんですか?」
『悩んどんねん。やっぱり侵入者の手の届くとこって怖いやん。腹いせにいたずらされても塔の中にいたんじゃ分からんし』
『わたくしも気になったのですがシャルロットさんは大丈夫ですの?』
侵入者の方々のマナーというのは『塔主を塔以外で襲ったり斃すなど言語道断、大罪、不名誉』みたいな考えがあるそうなのですが、同様に、例えば転移門の上にあるプレートを攻撃するみたいなこともしないようなのです。
しかし中には素行の悪い侵入者もいますし、お仲間が亡くなった腹いせに嫌がらせしようとする人もいます。
私の場合、狙われるのは目立ちまくっている飾り盾になるわけですが――
「ターニアさんがファムで教えてくれてエメリーさんがすぐに出動します」
『『『うわぁ……』』』
『それは【女帝の塔】でしか使えない手ですわね……』
一度あったのですよ。腹いせに飾り盾を攻撃されそうになったことが。
冒険者パーティーが盾の前でわーわー言っている所にエメリーさんが最速で向かいまして。
『こちらを攻撃した場合、貴方がたを塔内にお戻しした上で相応の対処を致しますのでご了承下さい』
と忠告をしたところ、彼らは逃げ帰っていったそうです。
ターニアさんの情報では彼らは這う這うの体でギルドに行き、その旨を伝えたと。
そして「飾り盾には手を出すな」というギルド全体での周知が行われたそうです。
「ですので冒険者に関しては大丈夫だと思いますけど、それこそ騎士団とかは分かりませんからね。用心はしておくに越したことありません」
『なんちゅうか……少しは安心感はでたけども……って感じやなぁ』
『わたくしは警備兵でも雇おうかしら。騎士団が帰るまで』
『わしはファムに頼むしかないのう。ただゼンガー爺にエメリーと同じ真似はできぬが』
『わ、私は様子見で最後に考えます……』
やっぱり怖いですよね。気持ちは分かります。
でもカッコイイので私は飾っていたいです。
ターニアさん、エメリーさん、万が一の時はよろしくお願いします。
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