103:輝翼の塔vs風見鶏の塔も始まります!
■ノノア 16歳 狐獣人
■第500期 Fランク【
『いや早まったらあかん! ノノアちゃん、それは早計やって!』
「しかし確実に勝なければ――」
『それは分かっておる! 分かっておるがもうしばらく待ってくれ!』
私は今、画面の中の皆さんに説得されています。
どういう事かと説明しますと、一階層と二階層、それぞれの最終地点には扉があるのです。
そこに入ると扉は閉まり開けることはできません。
入った先はぐるっと外壁沿いの細い一本道になっていまして、階層のスタート地点まで戻ってしまいます。
スタート地点からその出口は見えませんし入れません。隠し通路のような扱いです。
つまり遅延用の罠ですね。好奇心をもって扉に入れば最後、またスタートからやり直して下さいと。
で、今侵入している魔物の群れは二階層へと上がったところ。
時間もないしさっさと二階を探索しなければ、という事でしょう。もしくは後から扉を調べるのかもしれませんが。
つまり一階には入口に塔主のインテリーノさんがポツンといるわけです。
なぜ部隊と一緒に行かないのか。おそらく敵の塔に侵入するのが怖いのだろう。
なぜ自塔に引き返さないのか。なるべく早く
本当にそうかは分かりません。理解できませんし。
ともかくこの状況であれば、虎の子のウェアウルフを隠し通路から行かせて確実に塔主を斃せるのです。
私としては早くに決着をつけたいところだったのですが――
『せっかく二階層まで来たんやで!? すぐに終わらせてええんか!?』
『わしの考えたギミックを解けるものか気になるんじゃがのう……』
『どうせ向こうの負けは確定しているのですから遊ばせてあげればいいのでは?』
『あと鐘二つ分もないですしね……でも私はノノアさんの気持ちも分かるので何とも言えません』
いや私も気になりますよ? 自分で仕掛けた罠が有効かどうかとか、ヒントは見つけやすいのかとか、どこの謎解きでつまずくのかとか。もちろん何の情報も出ていない二階層をたった鐘二つ分で攻略するのは不可能だとも思います。でもですね、私だって延々とビクビクしながら見てるの辛いですし皆さんの為にも確実な勝利を…………え? 食事おごってくれるんですか? デザートも? い、いえ、それならまぁやぶさかでもないと言いますかなんと言いますか……。
◆
――カラァン――カラァン――
『はーいしゅ~~~りょ~~~! インテリーノくんさようなら~~~!』
『ぎゃあああああ!!!』
『【世沸者の塔】の勝ち~~~! ノノアちゃんおめでと~~~パチパチパチ』
「あ、ありがとうございますっ!」
結局、二階層は三分の一程度しか攻略できませんでした。
むしろよく攻略できたと言ったほうがいいかもしれません。
それだけ優れた組織だったということでしょう。指揮官のハイウィッチが偉かったと。
『いやー、ボクも楽しみにしてたんだけどねーどこまで攻略できるんだろって』
あ、神様もそうだったのですか……良かった。途中でウェアウルフを嗾けないで。
『でもまぁ魔物の頭じゃあれくらいが限界だね。Sランクの人型魔物とかだとまだ分かんないけど。あとは人間の侵入者でもどっかの国の文官みたいな人が来てくれると面白いんだけどねー』
「いや、あはは……そ、そうなると厳しいですかね……」
『ボクとしては【世沸者の塔】はこのスタンスを貫いて欲しいね。今までにない塔だからさ』
おお、神様からそんなお言葉が……恐縮すぎます。
『一つボクの考えたギミックを仕込んでもらっても……ああ、いやダメかさすがに。これは肩入れになっちゃうね』
えっ、神様が考えたギミックとかすごく興味があるんですけど。
ダメですか? それ教えてもらっちゃダメですか?
『まぁとにかく報酬は
「は、はい、ありがとうございます」
『とりあえず初戦突破ってことでおめでとうー。また明日ねー』
そうして神様との通信が途絶えました。
画面の皆さんがお祝いしてくれます。良かった。とりあえずホッとしました。
祝勝会は五連戦が終わってからですね。私も明日からは皆さんを応援しましょう。
『神様のギミックが気になりすぎるんやけど。何とか教えてもらえんか?』
『無理じゃろ。きっと誰にも解けぬ謎とかに決まっておる』
『あ、攻略不可能になるから教えられなかったのですかね?』
『今現在でもほぼ不可能なのですから教えて頂いても一緒ですのに。残念ですわ』
ええ。残念なのは私も同じです。
■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 51歳 ハイエルフ
■第500期 Dランク【輝翼の塔】塔主
さて、昨日のノノアに引き続きわしも頑張らねばならぬ。勝ち星を皆に届けなければな。
そう心に誓って左手首の組紐をチラリと見た。
思えば
まぁ今だからこそということもあるがのう。ランクが上がれば上がるほど
その点
さて、今回の相手じゃが、本来ならば脳筋の【人形の塔】が狙い目だったんじゃがタイミングが合わなかったようで、仕方なく【風見鶏の塔】になった。
六年目でランキングは107位。ランクはわしと同じDでもその差は歴然。こっちは220位じゃからな。
逆に六年でDかと思われることもあるじゃろう。低いと。わしらが一年目だから余計にじゃ。
しかしわしにはその苦労がよく分かる。
鳥の魔物を主体にした屋外構成の塔というのは、まず人気がないしTPを稼ぎにくいのじゃ。
侵入者からすると斃しづらくダメージを受けやすい。そうなると稼げないから他の塔へ行こうとなる。
ならば侵入者を増やす為にどうしようかと塔構成をいじったり魔物の配置をいじったり、はたまた宝箱でも置いてみようかと考える。
向こうもそうした『鳥の塔』の辛さを分かっておるから
一年目でできることなどたかが知れている。
ともかくそうして六年間耐えDランクに上がったというのは評価に値する。
考える頭があり、運があり、そういったものを含めた実力があるということじゃからな。
すでに向こうの陣容は判明しているが、固有魔物はまだ召喚していないものの、Aランクのガルーダやサイクロンワーム、Bランクのグリフォンやブライトイーグルなど魔物の質が非常に高い。
Bランクの数などはうちよりはるかに多い。それだけ層が厚いということじゃな。
人気のある塔とは決して言えないDランクでよくぞここまで揃えたものじゃ。
とは言えわしが負けることはない。
高ランクの魔物が多かろうがわしにはゼンガー爺と
それを数で打ち倒そうとなれば戦略や戦術といったものが必要になる。
じゃがその戦略はファムの目でわしに見られている、と。
むろん油断は厳禁じゃ。
相手の
皆が見ている手前、下手なところを見せるわけにはいかぬのじゃ。
――カラァン――カラァン――
『はーい、二人とも準備はいいかなー?』
「うむ」『おう!』
『じゃあ始めようか! 制限時間はなし!
神の宣言と共に各々の攻撃部隊が転移門をくぐる。
相手方の陣容は――指揮官はガルーダ。ブライトイーグル十体、エアリアルクロウとシルバースワローの群れ。地上は部隊長とおそらく斥候を兼ねるグリンカムビ、その配下としてアサルトコッコ、ガードコッコ、チャープコッコの部隊。
見事なまでに鳥だらけじゃな。
【輝翼の塔】を『鳥を活かす塔』と見込んでおるのだろうし、それは間違いではない。
こちらの防衛もまた鳥ばかり。
バベルには珍しいであろう純然たる『空戦』じゃな。
速さが勝敗の鍵になるのは間違いない。こちらの攻撃側にも期待じゃな。
「頼んだぞ、ゼンガー爺」
『ほっほっほ。お任せあれ……ただちょっと乗り心地がこれ……』
ええい、つべこべ言っておらんでさっさと行けい。
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