310:女帝の塔vs影の塔、始まります!
■サミュエ・シェール 36歳
■第486期 Bランク【影の塔】塔主
【女帝】から申請受理の一報を受けました。
却下されるかもと思いましたがまずは一安心。
やはり今までAランクやBランクの塔を相手に連戦連勝していますから、今さらわたくしがBランクだからといって恐れることはないのでしょう。限定スキル持ちだとも思われているでしょうがね。
あの戦力を保持しているからこその自信とも言えます。
おそらく【女帝】は自塔の戦力をわたくしの塔以上だと思っているのではないでしょうか。
それはある意味正しい。Aランク以上の数で言えば【女帝】が上。総数ならばわたくしが上ですが。
確かにバベルの
Cランクの塔はAランクの塔に戦力で敵わない。Cランクの魔物は群れたところでAランクの魔物には敵わない。
これが本来のバベルの
しかしそれを覆してきたのが【女帝】並びに彼の同盟。
ご自分に出来たことをわたくしが出来ないと決めつけるのはよくありません。
その自信と浮ついた心を正し、わたくしが【女帝の塔】を攻略してみせましょう。
――カラァン――カラァン――
『はーい、そろそろ時間だよー! 二人とも準備はいいかなー!』
『はい』「はい」
『では
わたくしは【女帝の塔】へと向かう攻撃陣に声をかけると、そのまま画面を注視しました。
転移門から入って来る【女帝】の軍勢を確認します。
=====
ヴァンパイアのクイーン(S)+ヴァンパイア(A)10+ダンピール(C)30
フェアリーのクイーン(S)+ハイフェアリー(C)30
天使(不明)+
デュラハン(C)30
=====
Sが2、Aが10、Cが100、不明が1。計113体。
相当に少ない。おそらく私の塔が暗闇階層ばかりと知って選抜したのでしょうが、それにしても……と思ってしまいます。
狙いは分かります。デュラハンとダンピールが壁、ハイフェアリーが索敵、天使が回復……となると攻撃は全て固有魔物とヴァンパイアに任せるつもりでしょう。
非常に思い切った手ですね。眷属の力を信用していると言えば聞こえはいいですが、ただの愚策にすぎません。
これだけで十五階からなるわたくしの塔を制覇できるとお思いでしょうか。Cランクの塔とて無理がありますよ。
もしくは第一陣のつもりですかね。
ある程度の暗闇階層を今の面子で突破し、ルートが分かったところで第二陣を投入。
そこから本格的な攻勢に出ると……こちらのほうが正解かもしれません。
となるとウィッチクイーン(A)あたりが出て来るかもしれませんね。
限定スキルを防げる者を塔主のそばから離すわけがありません。
となれば四体の眷属を攻撃と防衛に振り分けるしかない。あの塔構成ですから防衛には自信があるのでしょう。だからこそ眷属の質は攻撃側に厚く、ということでしょうね。
つまり防衛側の大ボスはあの正体不明のクイーンで決まりです。
【女帝】の固有魔物であろうSランクの二体が攻撃側なのですから、あのクイーンもまたSランクと見たほうがいいですね。
まさか攻撃にSSときて防衛にAAとなるわけがありませんから。そこはSAとするでしょう。
これでウィッチクイーン(A)を第二陣に出しても防衛にはSとメイドが残るわけです。
敵のプランがある程度予想できたところでわたくしは画面を再度注視します。
【女帝の塔】に乗り込んだわたくしの攻撃陣の様子はどうか。こちらもチェックしなければなりません。
その攻撃陣ですがこのような編成になっています。
=====
影鬼(★A)、デュラハン(C)40
デーモンナイト(A)5、デビルプリースト(B)10、デビルキャスター(B)30
シャドウデーモン(A)5、シャドウデビル(C)50
ダークフェンリル(S)1、ダークガルム(A)5、ダークスコル(B)20
シャドウアサシン(C)30、アサシンリンクス(C)30
=====
Sが1、Aが16、Bが60、Cが150。計227体。
Bランクに上がったばかりの塔を相手にするには十分ですが【女帝の塔】を攻略するには不十分、そう【女帝】は思うでしょう。
敵戦力と塔構成を把握しているわたくしには分かります。
しかし実際には影鬼の″影″の中に【影の女王スカアハ(★S)】が隠れています。
スカアハは<影潜り>という希少なスキルを持っています。
影に身を潜め、影から影へと移動し、完全なる隠密を可能とする強スキル。スカアハの存在が知られることはありません。
スカアハには影に潜りながら斥候と指揮をしてもらいます。
目に見える分にはシャドウアサシンの部隊が斥候、影鬼が指揮官なのですが――実際そのとおりなのですが――斥候と指揮の大本はスカアハにあるとそういうことですね。
影鬼が魔法を使うふりをして影からスカアハが魔法を放つ、ということもできます。
彼女にはわたくしが調べ上げた【女帝の塔】の情報を全て渡してあります。
迷路の順路などは多少変わっているでしょうがある程度は分かりますし、それこそわたくしの魔物は斥候系が多いですから攻略に難はありません。
おそらく攻略速度の速さに【女帝】も焦るのではないでしょうか。その綻びを突きたいところです。
強いて言えば五・六階層以降に出て来る魔物の強さが問題ですが、十二・十三階層あたりまではAランクの魔物を指揮官としたC~Bランクの部隊という感じなので各個撃破していけば問題ありません。
それこそ順路が分かっているので戦闘自体も少なく済みますしね。
最終的には十四階層あたりで敵大部隊と乱戦が予想されますが、そこを守備的に粘っている隙にスカアハが<影潜り>したまま最上階に潜入し、【女帝】を暗殺すると。そういう作戦でおります。
その場合に問題なのが【女帝】のそばにいるであろうメイドの察知能力。限定スキルだけを防げると考えるのは早計ですからね。
とは言え万が一メイドがスカアハの存在に気付くとしてもかなり接近している状態でしょう。実際わたくしの″目″も遠くでは気付かれませんでしたから。
ならばスカアハは遠目から魔法で攻撃すればいい。
メイドがそれを防ごうと思っても、【女帝】と
それでこちらの勝ちです。
欲を言えば眷属のクイーンを何体か斃し召喚権利を得ておきたいところですが……まずは攻略を第一に考えなければいけませんね。
攻撃側と防衛側、両方を様子見しつつ狙えそうならば狙う。最悪【女帝の塔】さえ斃せればそれでいい。そうしたスタンスでおります。
さて、まず防衛側ですが敵部隊が【影の塔】の一階層『暗闇迷路』を探索中……ですが非常に歩みが遅い。
それもそうですね。<暗視>持ちや<魔力感知>持ちがいても<罠察知>持ちがいなさそうですから。
おそらく<危険察知>などを使いつつ探索しているのでしょうが、これでは侵入者の探索と変わりありません。相当時間がかかるものと思われます。
まぁ多少明るめの階層であれば急ぐのでしょうけれどね。
それこそご自慢のSランク眷属を前に出してくるのではないでしょうか。
本当はそこを狙いたいのですがね。わたくしの魔物は斥候や暗殺に長けたものが多いですから、仕掛けるにしても奇襲が主だった方法となります。
とは言えSランク固有魔物を斃せるほどの魔物となるとやはり上層に限られますし、当初の目的通りに奇襲は『削り』に使うべきでしょう。
まず狙うべきは魔法部隊と天使部隊ですか。そう通達しておきます。
しかし……それにしても進軍速度が遅いですね。やはり第二陣待ちなのでしょうか。それも警戒しておきましょう。
一方で攻撃陣のほうは順調そのものです。
一階層は斥候部隊が罠を注意して、悪魔部隊が空襲に気を付ければそれで事足ります。
魔物も弱いですし、迷路もだいたいの順路が分かっていますから。あとはただ進むのみ。
二階層はボス部屋に入るための『証』を探す必要がありますが、大体の目星はつけてあります。
出て来る魔物もせいぜいCランクの小部隊ですしね。これも問題ありません。
三階層は罠が厄介になる階層ですがここもわたくしの斥候部隊であれば全く問題なし。
ボス部屋のラミアクイーン(B)部隊もダークフェンリル(S)が前に出ればそれで終わりです。
四階層が少々厄介ですね。迷路の順路は弄られていますし、罠の数が一番多い階層。
罠自体は問題ないのですが、道幅が狭かったり坂道だったりするので行軍に難が出ます。
ただ魔物にしても弱いものばかりですからそこは楽ですね。
結局、遠距離魔法攻撃で多少のダメージは入ったもののデビルプリースト(B)の回復もあって被害はなし。
すんなりと往復転移魔法陣のある五・六階層にまで到着しました。
一方で防衛側は……まだ二階層ですか。これは本当に遅い。
こちらも大したダメージは与えられていないのですが、それにしても
仮に第二陣を送り込んで来たとしても進軍速度の差は歴然。
【影の塔】の半分ほどに辿り着いたくらいで【女帝の塔】の攻略が終わっていそうなほど差があります。
それほど防衛力に自信があるということでしょうか……まぁそれも頷けるほどの塔構成と魔物をお持ちなのは知っていますが。
しかしわたくしは【女帝の塔】のことをよく知っておりますのでね。
遠慮なく攻略させてもらいますわ。今から焦ってももう遅いですわよ。
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