116:女帝の塔vs強欲の塔、決着です!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
あのあと、エメリーさんたちが最上階まで行くと、そこには心の壊れたマグドリオさんがいました。
全てを失った。
魔物も、
私はエメリーさんに命じて
結果だけ見れば完勝。しかし予想以上に危険な場面もありました。
学ぶべきところ、考えさせられるところもありました。
私はこれをしっかりと受け止め、前へ進まなければいけません。
バベルの塔主――【女帝】なのですから。
『五連勝おめでと~~~! イェイイェイ!』
色々あって盛り上がれる感じではないのですが相手は神様ですし、一応「ありがとうございます」と言っておきます。
『いやぁ~五日連続で楽しませてもらうことなんてないからさ~ナイス段取りだったねー!』
「いえ、連戦になったのはたまたまなので」
『狙ってやったことにしちゃえばいいじゃない。その方が注目度アップするしー』
勘弁して下さい。ホントに。ちょっとゆっくり塔運営とかしたいんです。
あと【傲慢の塔】絡みも残ってますけど。
と、話していると珍しくエメリーさんが神様とお話だそうです。
『神様、もしお答え頂けるならばお教え願いたいのですが』
『なになにー?』
『彼の悪魔が持っていた<鑑定>は独自の能力なのですか? それともスキルですか?』
『んー、ノーコメント』
『では彼の悪魔が見たわたくしのステータスは
『ん~~~これもノーコメントにしておこうかな』
『わかりました。ありがとうございます』
分かっちゃったんですか? 私、全然分からないですけど。
エメリーさん大人しく引き下がっちゃったんでもう何も聞けないですけど。
『まーとにかく今日はもう遅いしボクは退散するよー。帰還とかはいつも通りねー』
「はい、ありがとうございました」
『ばいばーい、またねー』
神様との通信が途絶えました。
皆さんが帰ってきたら労いつつ……色々とお聞きするのは明日以降ですかね。
とにかく今日は疲れましたし。美味しいもの食べてお風呂入って寝ましょう。
■セリオ・ヒッツベル 23歳
■第499期 Cランク【審判の塔】塔主
――ピロン
『神様通信
本日行われた
【強欲の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』
「なっ……!」
僕は思わず玉座から立ち上がった。
いや、やるとは思っていた。昨日までの段階で四連戦なのだから、おそらく今日もあるのだろうと。
残った【女帝】は一体どことやるつもりなのかと、気にはしていた。
しかしまさか【強欲の塔】とは……。
僕らの一年上のトップ。それも三期連続で498期トップだ。
間違いなく資金は豊富だし、
500期で言うところの【赤の塔】のような注目のされ方を最初からされていた。
実際、
塔の魔物のランクも高く、侵入者からの人気もあったように思う。
それがまさかここで消えるとは……相手が【女帝】だからと言えばいいのか、よく【女帝】が勝てたものだと言えばいいのか。
いずれにせよ、とんでもないことが起きたのは間違いない。
Cランクという括りで見ればドリームマッチと言える。頂上決戦に近い。
それに勝った【女帝】は、同時に『同盟五連勝』達成のおまけつきだ。
おそらくまたバベリオの街は盛り上がるのだろう。もうお祭り騒ぎかもしれないが。
「人気にあやかりますか?」
「よしてくれ。僕はあんなのと関わる気はない」
「いっそのこと同盟に入ってしまうというのは」
「冗談だろ。目をつけられそうな行為はごめんだよ」
なるべく関わりのないところでひっそりとやらせてくれ。追い抜いていっていいから。
■レイチェル・サンデボン 70歳
■第450期 Sランク【世界の塔】塔主
「やりましたよ、セラ。勝ったそうです」
「ほっ。良かったです、それは何より」
おそらく本格的な悪魔と対峙するのは初めてでしょうからね。
どうなるものかと思いましたが一先ずは勝てて安心です。
戦ったのはエメリーさんですかね、やはり。クイーンではどうあがいても負けますし、
確実を期すならばエメリーさんしかいません。
もう少し手駒が欲しいところですね。これから先を考えれば。
まぁまだ一年目ですから本来であれば考える必要などないのですが。
どうしても高ランクの塔というのは『天使・悪魔・竜』に寄ってきます。
高TPの固有魔物を主力に置こうと思えば結局はそこに行きつくのですから。
そしてそれが攻めと守りのどちらも使ってきた場合、打ち倒す為にはエメリーさん以外に何か手立てが必要になるでしょう。
【
クイーンの最大の強みは配下を従える『群』としての強さ。決して『個』が飛び抜けているというわけではありません。
【強欲の悪魔マモン】を配下にするという選択肢もありますが……さてどうしますかね、シャルロットさんは。
「自分たちが戦うよりも緊張しますよ。一日ハラハラしていました」
「うふふっ、セラもですか。私もですよ。どうしても心配で」
「まぁレイチェル様もですか」
「お祝いのお手紙でも書きましょうか」
「戦いの詳細を教えてくださいと、一筆お願いします」
「はいはい、うふふ」
■ガーネット 20歳
■Cランク冒険者 パーティー【紅陽千火】所属
「おいおいおいおい! 【強欲の塔】だってよ! 【強欲の塔】!」
「はあああ!? え、いや、は? え、マジ!?」
「おい、やりやがった! あいつらやりやがったぞ! しかも【強欲】だってよ!」
「
夜も遅い時間。だと言うのにギルドは人で溢れていた。
誰もがその情報を待っていたのだ。
――今日、【女帝】が
一日目、【世沸者の塔】が【千計の塔】に勝った。これはいい。
二日目、【輝翼の塔】が【風見鶏の塔】に勝った。ここもまだ静かなものだ。
三日目、【忍耐の塔】が【打突の塔】に勝った。ここから騒がしくなり始める。
【
ならばもしかすると四連戦、五連戦もあるのではないか。
普通ならばありえない。しかしヤツらなら……そんな期待の声がギルド内に充満した。
四日目、【赤の塔】が【昏き水の塔】に勝った。すでにお祭り騒ぎだ。
そして否が応にも五日目への期待が高まる。
しかし【女帝】が申請したところで受ける塔があるのか、あるにしても日程的に五連続だなんてそんな器用に調整できないだろうし仮にできてもやるメリットが【女帝】にない。
いやでもしかし【女帝】ならばあるいは……ギルド全体を巻き込む大々的な賭けに発展した。
そして五日目の今日、【女帝の塔】は【強欲の塔】に勝った、と。
今、ギルドは阿鼻叫喚。賭け札は舞い、誰もが信じられないと口にする。
五連戦自体がありえないのにも拘わらず、相手が【強欲の塔】だと?
こう言ってはなんだが、単に五連勝を狙うのであれば適当な低ランクで良かったのだ。
それの何がどうなって【強欲の塔】などというあからさまな強者の塔に挑むのだ。なぜ当たり前のように勝つのだ。
私には全く理解できん。
まぁ【女帝】を理解することをすでに諦めているのだが。
……ともかく勝ち札を交換しに行こうか。
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