117:マモンの能力について話し合います!



■シャルロット 16歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



『それでエメリーさん、あの質問の意図はどういうことですの? 戦いの最中に何か感じまして?』



 あの神様への質問ですね。アデルさんも気になっていたようです。

 そこからエメリーさんの説明が始まります。



 まず対峙した時に、『魔剣の名前』と『名前』『ステータスが高いこと』を知られたと。


 まぁ名前に関しては事前に調べていただけかもしれません。侵入者相手にも名乗っていますし、冒険者ギルドでも周知でしょう。

 ただそれを塔主が知っていたとしてマモンに教えるか、と言われるとどうかなーというところです。


 ともかく名前も知られた、という前提で話を進めます。



「こちらの世界にあるかは分かりませんが、わたくしの世界には<アイテム鑑定>というスキルがありました。仮にそれを使われた場合、【魔剣グラシャラボラス】の名前は分かっても使い方や効果などは分からないはずなのです」


『こちらにもありますわ。商人などによく見ます。しかし効果なども分かるはずですが』


「魔剣に関しては名前以外分からないものなのですよ」



 曰く、魔剣というのは『迷宮』というこちらで言う『塔』のような場所でしか入手できず、<鑑定>しても名前以外不明なのだとか。


 しかしマモンは使って見せた。つまり効果を知ることができたと。


 これに関しては<アイテム鑑定>持ちの人に一度見せてみてはどうかという話になりました。

 その結果でどう判断するか変わりますから。

 もちろん魔法契約書は必須ですね。



「そして名前とステータスです。これらを知る術はわたくしの世界にはありません」


『……こちらもないですわね、おそらく』



 おそらく、というのは【限定スキル】のような特殊なものがあるからだと思います。

 誰がどんな特殊なスキルを持っていてもおかしくはない。塔主になった今だからそういう考え方ができます。



「ここまでが前提です。それでわたくしはお聞きしました。スキルなのか悪魔の能力なのかと」


『悪魔の能力とは?』


「わたくしの世界には【魔眼】というものがあったのです」



 とある種族が先天的に持っている特殊能力のようなものだそうです。スキルではなく体質なのだと。


 エメリーさんの侍女仲間には【看破の魔眼】という嘘を見抜く瞳をもった方がいらしたそうです。その方は見るだけで<アイテム鑑定>も行えたと。


 他にも見るだけで即死させるだとか、見るだけで石化させるだとか、そういう恐ろしい【魔眼】もあるそうです。

 なのでその種族の中でも【魔眼】持ちは忌避されるべき存在だったのだとか。



「ですので悪魔にもそうした魔眼――今回の場合ですと、【武器と人の詳細が分かる】能力を持つ者がいるのかと思ったのです」


『なるほど。興味深い話ですわね』


『スキルと能力どっちか聞いたんは? 危険やったらどっちも同じやない?』


「魔眼などの能力でしたらほぼ防げないでしょうし、大悪魔以上の存在に限定される能力と言えるでしょう。もしくはマモンに限定された能力かもしれません。

 しかしスキルであれば【限定スキル】を防ぐ要領でなんとかなるかもしれません。ただそうなるとスキル取得条件を満たした者は誰でも使えることになってしまいます」



 仮に特殊能力であればよほど限られた存在――それこそ大悪魔以上に限定されるに違いないと言います。そうでなければ特別な存在たりえないから。


 しかしスキルであれば誰でも、何なら人間にも取得可能なものになってしまう。ただしそれを防ぐ手段がないこともない。……今の私たちには無理ですが。


 つまりエメリーさんは今後の対策を見ているわけです。

 誰が持つ可能性があり、それは防ぐことが可能なのかと。



「それから二つ目の質問です。ステータスはどのように看破されたのか。宝珠オーブで見ることのできる情報がそのまま読み取れるのか、それとも他の表記方法か」


『他の表記方法とは?』


「わたくしが考えるのは二つ。一つは宝珠オーブの情報よりも大雑把なもの」



 これが宝珠オーブで見るエメリーさん。


=====

名前:エメリー

職業:シャルロットの神定英雄サンクリオ 侍女長

LV:99

筋力:S

魔力:B+

体力:S+

敏捷:S

器用:S+

=====


 それが例えばこう見えている。


=====

名前:エメリー

職業:シャルロットの神定英雄サンクリオ 侍女長

LV:99

筋力:大

魔力:中

体力:大

敏捷:大

器用:大

=====



「これならばマモンが【筋力】と【敏捷】をとったのも頷けます。S+である【体力】【器用】を無視して」


『と、とんでもないステータスですね……』


『SとS+の差がわずかだから即戦力と言える【筋力】と【敏捷】にしたのでは?』


『うむ、わしがマモンの立場で見えたものが宝珠オーブと同じでも【筋力】【敏捷】にするかのう』


「そういうものでしょうか。わたくしはSとS+の差がわずかだとは思っておりません。ちなみにわたくしの世界のステータスだとこうです」



=====

名前:エメリー

職業:シャルロットの神定英雄サンクリオ 侍女長

LV:99

筋力:2,518

魔力: 702

体力:8,764

敏捷:4,016

器用:9,877

=====



『なんやねんこれ! こんなん絶対【器用】やん!』


『うむ、どう考えても強さの生命線が【器用】だと分かるのう。もう一つが【体力】か【敏捷】かは悩むが』


『仮にこちらのステータスが見えていたら【筋力】をとる意味がありませんわね』



 つまり、マモンが詳細なステータス――数値化されたようなものを把握していたとは考えにくい。

 だからといって宝珠オーブで見るステータスも、エメリーさんからすれば大雑把で適当な情報でしかないと言います。


 それはそうでしょう。これだけ数値が違っているのにSかS+かでしか表記されないのですから。


 もしくはもっと大雑把な大・中・小のようなもので判別しているかもしれないと。エメリーさんはこちらだと思っていたようですが。



 これは『ステータスを見られても目安を計られているにすぎない』ということを指しています。


 F-~S+という表記も強さを計る一端にすぎない。ならば仮に見られてもそれほど気にする問題ではないというエメリーさんなりの結論です。あくまでステータスに関しては、ですが。



「加えて言えばわたくしのスキルも見られていないのではと」


『あ、あの宝珠オーブのステータスの一番下のですか?』


『仮に宝珠オーブのステータスと同じもんを見てるんならスキルも一緒に見てるんちゃうん?』


『エメリーさん、その心は?』


「武器を奪うことが確定しているのに<斧槍術>を奪っていないからです」



 マモンは明らかに<斧槍術>を持っていない。それはエメリーさんが確信しています。


 なのにエメリーさんのスキルは奪わなかった。それが『見えないから奪えない』なのか『スキル自体奪えない』なのかは不明です。

 ただ仮にスキルが奪えるとすれば奪って当然だろうと。



「わたくしにはステータス以上にスキルの方が『奪いやすいもの』だと感じるのです」


『うーん、奪う″もの″と考えれば確かになぁ。ステータスを奪うとか意味分からんし』


『自分と相手を交換するという話だったのでは……ああ、それにしても″もの″ですわね。自分の適当なスキルと交換すればいいですもの』


「ええ、ですからわたくしは、『そもそもスキルを確認できていない』と思うのです」



 まとめるとこんな感じです。


=====


①ステータスを見る能力ないしスキルは完璧な数値を読み取るわけではなく大雑把なものである。(最高でも宝珠オーブ程度)


②その能力が<アイテム鑑定>と同じであった場合、アイテムの効果も大雑把にしか得られていない可能性がある。(腐蝕すると知っていたかどうかも不明。魔竜剣は魔法を放つ武器だと知っていた)


③スキルは見られない可能性が高い。


=====


 これがエメリーさんの考える、【大悪魔の持つ魔眼ないしスキル】の正体だと。



『そして結局、神様にはぐらかされたと』


「それもほとんど答えですけれどね」


『え、どういうことです?』



 ノノアさんと一緒で私も分かりません。どういうことです?



『あの言い方ですと、″喋れない″ではなく″喋りたくない″のだと思いますわ。もっと言えば″言わない方が面白いから喋りたくない″と』


『あーなるほど。今後も気を付けろということか』


『やっと分かったわ。神様っぽいっちゅーか何ちゅーか……』



 え、つまり、あれですか?

「今後も同じようなの使うやついるから気を付けてね」ってことですか?



 ……もしかして七大罪ヴァイスの大悪魔ってそんなのばっかなんですか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る