118:女帝の塔の運営方針会議です!



■シャルロット 16歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



「なんかもうものすごいですね」



 私はいつものように玉座に腰を下ろしながら画面を見ます。

 壇下の女王様たちも言います。



塔主戦争バトルの後の反響はいつもあるものですが……」


「これはちょっと予想外なのよー」


「一階層も二階層も溢れてますわよ。どうしますのぉこれ」


「フェアリーちゃーん、そこですよ~いけいけ~!」



 塔主戦争バトルの翌日から侵入者の入り方が異常です。

 【力の塔】同盟との塔主戦争バトルや【風の塔】同盟との塔主戦争バトルの時も、その直後は一気に侵入者数が増えたのですが、今回はその時の比ではありません。


 おそらく新年祭のパレードやレイチェルさんとの話題で盛り上がり、その勢いを維持したまま今回の『疑似同盟戦ストルグ』とも言える五連戦を行ったことでさらに盛り上がっているということかと。


 一時的に増えているだけだと思いますが、これだけCランク・Dランクの侵入者がいるのも驚きですし、他の同ランクの塔はちゃんと人が入っているのかと心配になるほどです。



『こ、こちらも大盛況が続いています、おかげさまで……』


『やはり塔主戦争バトルの翌日は酷かったのう。とは言えまだその勢いは残っておるが』


『うちとフゥんとこはEランクも入るからなぁ。数も増えたまま継続って感じかなー』


『こちらは塔主戦争バトルの翌日だけ爆上がりしてそれきりですわよ! シャルロットさんの方に行ってしまいましたわ! やはりわたくしが最終日を飾るかBランクでも斃すなりしていれば――』



 と、アデルさんには申し訳なくなるほどです。


 いえ、何度も言うように今回の塔主戦争バトルは【傲慢の塔】対策の一貫として年末から進めていたものですし、それが五連戦になったのも私が最終戦になったのも偶然なのですよ。

 新年祭のあれこれなんて全くの予想外ですしね。



 ともかく【女帝の塔】史上最多の侵入者が押し寄せているわけで、おそらく近日中……下手すれば今日にも五階層到達者が出るのでは、と期待しています。


 五階層まで行けばその侵入者は往復魔法陣が使えるようになります。一階スタートではなくなると。


 さらに五階層の『庭園』は下手に探索しなければ駆け抜けて六階層に行くことも可能。中ボス部屋もないですし。下手すればBランクがいますけど。


 そうなれば一気に攻略は進むでしょうし、その情報は流れまた侵入者で賑わうのではないでしょうか。

 最前線が長らく四階層で止まっていたので嬉しい気持ちもありつつ、情報が流れてしまうのは痛手だなぁとも思います。



「やはり数は脅威ですね。【強欲の塔】に乗り込んだ私たちが言えた義理ではありませんが」


「気持ち良かったねー。もうあれを基本戦術にして欲しいくらいなのよ」


「次はもう少しまともな部隊戦にしてみせますわぁ」



 クイーンお三方は昨日の部隊戦がお気に入りだったようです。やはりクイーン種として配下と共に戦うというのがやりがいあると言うか、向いているのでしょうね。種族特性的に。


 ただ当然ですがこんな戦い方は滅多に出来るものではありません。

 向こうの塔に広がれる屋外階層があり、屋内階層でもある程度の広さがあり、敵の強さが適度な上、守りを気にしなくていい状況だからできた策なのです。


 ついでに言えばもし塔主のマグドリオさんが戦術眼に優れ、魔物配置や罠配置にこだわる人であったならもっと苦戦していたでしょう。


 こちらが苦戦するに値する質の魔物が沢山いましたからね。

 それを各個撃破して突き進んでいった結果が昨日のあれです。


 エメリーさんもこう言います。



「もしあれを次の塔主戦争バトルでもやるようでしたら、さすがに防衛を考えないわけにはいきません。ターニアだけでは不足です」


「Aランクがアスラエッジ、ミスリルヘラクレス、マンティコア、ヴァンパイアの四体だけ。Bランクが我々とユニコーン、ヴァルキリー、ハイウィッチ、シルバーファング、グレイオーガ、ダークボア……十三体だけですか。攻撃側も考えますと不足なのですかね」


「一年目のCランクと考えれば相当強いんじゃないのー?」


「戦う相手をAランクと見越しているのですからねぇ」



 そうですね。Cランクと見ればかなり戦力はあるほうだと自負しています。

 しかし【傲慢の塔】と戦うことを想定すればやはり厳しい。


 うちの塔はDランクの魔物が沢山いて、Cランクの魔物も増やしている最中です。B以上の層が薄いという印象なのです。


 対策としてはやはりこの二体。


=====

□ウィッチクイーン/A/18,000TP

□ナイトメアクイーン★/S/64,000TP

=====


 これを召喚すればBランクのハイウィッチやCランクのウィッチ、AランクのヴァンパイアやCランクのダンピールが主戦力として計算できます。


 ウィッチクイーンなんて固有魔物でもないのに18,000TPですよ? 高すぎです。

 同じAランクのマンティコアなんて8,000TPですからね。まぁマンティコアは報酬の一回限りですし、塔によるTPの多寡もあるのでしょうけど。


 しかし眷属枠もないので仮に召喚しても名付けができません。

 眷属化してないクイーンでどこまで統制できるのか、こちらと連携がとれるのかは未知数です。



 TPに関してはかなり余裕があります。

 塔主戦争バトル前の準備として使ったのはミスリルヘラクレスとヴァンパイアの召喚くらいのものです。


 そしてあの殲滅戦により大量の魔石を獲得。マグドリオさんは当然のようにTP長者だったようでバベルジュエル内のTPも潤沢。さらに最上階の家探しをした結果――。



「あの宝物庫は驚きましたね。貯蓄のつもりだったのでしょうが」


「まぁいざという時にお金がないと安心できないという商人思考だったのでしょうねぇ」


「大人数で行って正解だったのよ。あんなのエメリーさんのマジックバッグだけじゃ持ち帰れないしー」


「塔内に宝箱もないのに装備品やら高価なアイテムなどもありましたし」



 下手にご自分の店とかに隠しておくより塔の最上階の方が安全だというのは分かります。

 そこに侵入者が入る=自分はすでに死んでいる、ということですから。

 お店がどうなっているのかは知らないですけどおそらく隠し財産的なものだったと思いますし。


 ともかくそうした押収品も山のようにありまして、今ならお金をTPにするのも問題ないと言えるほど。あくまで最終手段ですが。


 装備品とかはどうしようかと悩んでいるのですが、私の塔では宝箱を置くつもりもないですし、魔物に持たせても最終的には侵入者を強化するだけです。


 なのでノノアさんの塔に少し寄付して有効利用してもらおうかとも考えています。

 あの入口の財宝と同じように、謎解きで手に入れられるお宝ということで。



 それと忘れてはいけない魔物の召喚権利ですね。


=====

□メデューサ/B/2,500TP

□イエローデビル/C/1,300TP

□ファットデーモン/A/9,800TP

□ハイオーク/C/1,500TP

□オークキング/B/3,100TP

□カーバンクル/A/12,800TP

□輝石竜ヴィーヴル★/A/25,000TP

□強欲の悪魔マモン★/S/58,000TP

=====


 主だったところでこんなものです。



「カーバンクルは絶対に召喚します」


「神聖属性は貴重ですからね」



 それに非常にかわいいのです。アデルさんが持っているのですが羨ましかったので。

 あとは特に召喚する予定もないです。ヴィーヴルは気になりますけど場所が……。



「マモンはやはり召喚しないのですか?」


「それこそ最終手段ですね。すごく悩んでますけど」



 気になっていたマモンの能力とスキル。召喚すればその全てが分かるでしょう。


 しかし召喚したところで完全に『個』としての戦力ですし、【女帝の塔】のコンセプトからはかけ離れます。アスラエッジとかはまだ『城の門番』としての役割がありますが。


 それに高いTPを払うくらいならナイトメアクイーンを召喚した方が何倍も価値がある。



 何より一番の問題は「あんな嫌味で危険で気持ち悪い悪魔、配下にしたくない」ということです。



 まぁマモンをどうするかというのはエメリーさんやクイーンの皆さんだけでなく、同盟の皆さんやレイチェルさんとも相談した上で考えるべきでしょう。


 レイチェルさんと言えば、さっそくお祝いのお手紙が届きました。勝利おめでとうと。

 こうこうこういう理由で五連戦することになったとは伝えてあるので気になさってくれていたのだと思います。


 相手が【強欲の塔】ということもあり心配なさってくれていたようで、それをどうやって破ったのか、マモンをどう斃したのか、特にお付きのセラさんが気にされているというお話でした。



 これのお返事に悩みました。


 攻塔戦アディケイトに持っていってからの『空城誘い』というのは言ってもいい。

 四個小隊での攻略、殲滅戦も大丈夫でしょう。

 しかしマモンをどう斃したのかは……魔剣のことはまだ秘密なのです。魔竜剣もですが。


 相談した結果「どうやって斃したのかは秘密ですがエメリーさんがヤりました」と書くに留まりました。

 ただ「妙なスキルか能力を使われたのですが何か知ってますか」とも書きました。


 返ってきたお手紙がこうです――「お茶しましょう」と。


 なるほど。お手紙のやりとりだけでは埒が明かないということですね。

 というわけで近日中にまたお茶会です。楽しみですね。



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