298:ノノアさんがついに……です!



■ドロシー 24歳 ドワーフ

■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主



 塔主戦争バトルの翌日、案の定と言うべきか【忍耐の塔】は盛況となった。

 やっぱり五竜王ドラゴニアの【竜翼の塔】というネームバリューは大きいんやな。

 幸いにもウチの塔に足を踏み入られることはなかったから翌日の営業も問題ないし、結果だけ見れば万々歳や。


 【竜翼の塔】の最上階を接収した時もお金やら貴金属品がかなり多くて、さすがお貴族様って感じやったな。

 スフィーやウリエルたちが頑張って持って帰ってきてくれたけど、どうしたもんか悩ましい。宝石の入ったアクセサリーとかはウチには無用の長物やしな。

 ノノアちゃんとこのお宝にしても冒険者相手には喜ばんやろ、これ。



『でしたらシャルロットさんとシルビアさんにお渡しすればいいんじゃないですの?』


『ええっ!? わ、私はアデルさんに買って貰ったのがありますし……』


『わ、私もそうです。塔主総会くらいしか付ける機会もありませんので……』


『何を言ってますの。もうすぐ新年祭ですのよ? パレードで着飾らないでどうするのですか。それにいくつあっても困るものではないでしょうに』


『『は、はぁ……』』



 なるほど。そういうことなら二人に渡してまおう。有効利用してもらうべきや。シャルちゃんには多大な借りがあるしな。



 それと【竜翼】の召喚報酬なんやけど、これも考えものや。

 今【忍耐の塔】の六階層『砦』は大ボスにスクイッシュドラゴン(★A)、それとリザード系が多数。あとはウィッチクイーンフワリン(A)とハイウィッチ(B)の部隊を配置しとる。

 二階層の『沼地』と三階層の『湿地』にはE~Cランクの蛇もおるな。


 んで、【竜翼】の召喚報酬にはBランクのリザード系、Aランクのドレイク系、D~Aランクの蛇系がおるわけや。

 ついでに言えばフェアリードラゴン(C)とかもやな。

 これらを機を見て召喚、もしくは六階層のリザードが削られたタイミングで追加召喚したいと。

 急ぎではないけど考えておいたほうがええやろ。



 それより考えるべきは【竜人将パルテア】(★S)やな。

 これはウチが前から欲していた『攻撃側の指揮官となれる前衛タイプ』と合致する。

 飛んでブレスも吐ける格闘タイプやな。その強さはウリエルとの戦いで見させてもらったし。



「では眷属枠の残り一つはパルテアで決まりですか」


「TPもまだ余裕がありますしね」


「そうしたいんやけどなぁ……ウチには飛竜もおらんしワイバーンを召喚するスペースもない。パルテア用の階層を用意するならBランクに上がってからかなぁとも思っとる」



 攻撃側に飛竜やワイバーンを連れて行けるわけもないんやけどな。防衛戦力の一つとして見た場合のことや。

 完全に攻撃で使うのならパルテアの他にC~Bランクの飛竜ドラコ系を用意してパルテア専属の部隊を創る。それくらいしかできないちゅう言い方が正しいな。

 まぁスクイッシュドラゴンと組ませることもできるやろうけど……地竜に竜人を乗せるもんなんかなぁ。



「いずれ召喚するのが決まっているのならば召喚しておいて損はないと思いますが」


「パルテア本人にお聞きすればよろしいのでは? それを参考にBランク用の塔構成を考えておくのもいいと思います」


「そうか、まぁそれもそうやな。……よっし! じゃあ召喚しとくか!」





■ノノア 16歳 狐獣人

■第500期 Dランク【世沸者よわきものの塔】塔主



 そんなこんなでドロシーさんはパルテアさんを五人目の眷属にしたらしいです。

 画面越しにご挨拶しましたが、やっぱり礼儀正しい騎士っぽい印象の方でして、何と言いますかスフィーさん、ウリエルさん、パルテアさんと皆さんお堅い感じなんですよね。

 ドロシーさんは賑やかで軽い感じなので三人とも正反対に思います。ドロシーさんは何となく苦笑いでした。



 ともかくこれでドロシーさんの眷属も★Sが二体、Aが三体という超強力なラインナップ。

 フゥさんも★Sが一体、★Aが二体、Aが一体とゼンガーさんで眷属枠が埋まっています。

 アデルさんが★Sが二体、Aが一体とジータさんで二枠余っているんですよね。魔物だけ見ればドロシーさんのほうが上回っている状況です。



『わたくしも悩んでいるのですがね。何と言いますか「これ!」というのがないんですのよ。強いと言えばルサールカ(A)かナインテイル(★S)が候補なのですが』



 ルサールカは【霧雨】の、ナインテイルは【魔術師】の召喚報酬ですね。

 人語が介せて闇・水魔法が使える飛行系魔物と火属性特化の巨大な狐。なんとも贅沢な悩みに思えます。



 シルビアさんはAが二体、Cが一体、あとの一枠をどうしようかと悩んでいるそうです。

 シャルロットさんは言うまでもありません。★Sが三体、Aが一体とエメリーさん。で残り一枠は斥候系の指揮官を探し中。

 とんでもない陣容ですね。Aランクの塔ともまともに戦えそうです。



 そして私はと言いますと、★Aが一体、Aが一体、Cが一体で残り一枠となっています。

 シルビアさんとほとんど変わりませんしフゥさんとの差がありすぎるなと思っています。

 まぁ魔物の総数からしてフゥさんの十分の一程度しか持っていないのですが、同盟戦ストルグのことを考えれば眷属くらいはもう少し充実させておいたほうが良いのではないかと。



「……というわけで私のSランク固有魔物を召喚しておこうと思うんですけどどう思います?」


「「プルプル」」「カタカタ」



 賛成ですか。やっぱりTPがあるうちに召喚しておくべきですよね。


=====

□ヨグ=ソトース★/S/68,000TP

=====


 これがどのような魔物か分かりません。

 スライムなのかそうじゃないのか。属性も大きさも何もかも分からないのですが、少なくとも戦力にならないということはないでしょう。


 よし! と気合いを入れて宝珠オーブを操作。

 すると玉座の前に召喚魔法陣が現れました――が、その大きさは尋常じゃありません。

 直径20mほどの魔法陣にはびっしりと文字が描かれており、それはこれから出て来る者の強大さを示しているようです。



 魔法陣から現れたのは″無数の触手″でした。床一面から数えるのも億劫になるほどのものです。

 魔法陣という出口が狭いとばかりに広がり、私にまで迫ってきそうなソレに思わず「ひいっ!」と声を上げました。


 そして触手に連なるように本体が現れます。

 それはやはり、いえ、おそらくスライム状のナニカ・・・

 深淵を思わせる漆黒の粘性球体。それが出てきた時、触手は徐々に短くなって結局はスライム状のソレ・・だけが残りました。



 完全に腰の引けていた私は声を掛けられずにいました。塔主のくせに挨拶もできず。

 するとソレ・・はうねうねと動き始め、徐々に小さくなっていきます。

 巨大なスライムに見えていたものが段々と形を変え……フゥさんのような小柄な少女の姿へと。



「え、えっと……あ、貴女がヨグ=ソトースさんですか……?」


「うん」



 喋ったああああ!!! と心の中で叫びつつ平静を装います。



「わ、私は【世沸者の塔】の塔主、ノノアと言います。よろしくお願いします」


「うん、よろしく」


「え、えっと……貴女には……ヨギィと名付けます。私の眷属になって下さい」


「おお、ありがと」



 不愛想でしたが感情が出るのですね……まだよく掴めない子(?)ですが少し安心しました。

 ヨギィには色々と説明しつつ能力を調べたりしなければなりませんが……とりあえずは服を着せないといけません。

 私の服だと大きすぎますから仮で着せておいて、フゥさんかシャルロットさんに相談しましょうか。





■シャルロット 16歳

■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主



 ――と、そんな報告を受けました。

 ヨグ=ソトースを召喚するというのは事前に聞いていましたがね。誰もそんな魔物知りませんでしたし、賭けでもあり楽しみでもあるような……いえ、ノノアさんにそんなことは言えないですけど私も実はかなり興味があったのですよ。



「どうします、フゥさん。うちのアラクネクイーンに頼みましょうか」


『どちらでもよいぞ。わしの服も無駄に買い込んであるしのう。まぁ防御力を考えればアラクネクイーンのほうが良さそうじゃが』


「じゃあお互いに出し合うってことで。あとはノノアさんに任せましょう」


『す、すみません、よろしくお願いします』



 少女の姿なのに裸というわけにはいきませんからね。

 と言いますか、スライムが少女の姿になって人語を介せること自体が驚きですけど。さすがはSランク固有魔物ということでしょうか。



『ノノアさん、それで能力はどのような感じですの?』


『えっと、まだ詳しくは分からないのですがステータス的には壁役っぽいかなぁと……。体力が異常に高くて、次に魔力と器用、筋力・敏捷が低いですね』



 まぁ本体の姿を聞けば斃しづらそうなスライムですものね。超巨大で触手ばかりとか。

 少女の姿のまま戦えるのかは知りませんけど。


 ――と話していると、隣にいるエメリーさんから声が上がりました。



「ノノア様、スライム形態の時は浮遊していましたか?」


『い、いえ、床にでろーんという感じで……』


「では分裂や吸収といったスキルか能力はお持ちでしょうか?」


『え、えっと……持っていますね、はい』


『エメリーさん、何かご存じですの?』



 アデルさんが画面越しに聞いてきます。



「わたくしの世界にいた敵で最強格の者が同じような能力を持っていました。触手にまみれた巨大なスライムで人型になることもできると」


『まさしく同じじゃありませんの』


「魔物ではありませんでしたがね。魔族という人種で。世界最強であるわたくしのご主人様も苦戦したほどの敵でした」



 うわぁ……異次元のお話ですね。スライムが人種・・というのも分かりませんし、エメリーさん以上にお強い″ご主人様″も意味不明ですし、それが苦戦するほどの敵がヨギィさんに似ているというのも……。



「その者はわたくしの魔剣で斬っても腐食した箇所を切り離してすぐ再生するので全く効果がなかったのですよ。魔法も効きませんし、おまけに仲間を吸収して強化めいたことをしたりですとか」


『『『うわぁ……』』』


「ど、どうやって斃したんですか? そんな敵を」


「それを言ってしまうとヨギィの弱点に触れるかもしれませんのでこの場では控えておきます」



 ああなるほど。諜報型限定スキルの可能性ですか……。さすがにうかつには喋れませんね。



『まぁ同じようなことがヨギィに出来るとも限らんやろ。少なくともエメリーさんの世界のヤツはヨグ=ソトースちゅう名前やなかったんやろし』


『まずはノノアに色々探ってもらうしかあるまい。ひょっとすればその魔族とやらより優秀かもしれんしな』


『ア、アハハ……まぁあとでゆっくり聞いておきます』



 ともかくこれでノノアさんも眷属枠が埋まりましたか。

 ミミックスライムペコ(C)がますます浮いちゃいますね。神造従魔アニマの辛いところでもありますが。


 ……まさか新年祭のパレードでヨギィをお披露目とかしないですよね?




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