16:初めての召喚、初めての魔物眷属です!
時間は少し戻りまして、ドロシーさんと同盟を結んだ翌日です。
大体の塔の構成をエメリーさんと考え、そこに配置する魔物を召喚してみようと。
塔主となってから一月弱。ここまで魔物の召喚を全くやっていない塔主など他にいないでしょう。
バベルの五百年の歴史でもはたしているのかと思ってしまいます。
「でも七階分の塔を創るだけでも結構TP使っちゃいますね。新塔主でDランクがいないって言うのも分かりますよ。普通にやってたらTP足りませんもん」
「今にして思えば【正義の塔】と
「なるほど」
バベルジュエルを私の
さらにエメリーさんが道中回収していた魔石も魔力として
魔石は売ってもお金になるのですが、お金に関してもラスターさんの所から拝借しているので余裕があります。
そのお金をTPに変えるのは最終手段ですね。変換効率悪いですし。
それで塔の構成にTPを使い、残ったTPで魔物と罠を配置するのですが、構成以上にこちらの方がTPを消費します。
仮に10TPのスライムを召喚した場合、それが侵入者に斃されると『時間を置いてリポップする』か『一度斃されれば終わり』かを設定する事ができます。
当然後続の侵入者の事を考えれば前者になるのですが、リポップの際に自動的に10TPを消費します。
所持TPを余分に確保しておかなければいけないという事です。TPがなければリポップはしません。
斃されたのを確認して私が「この魔物はリポップさせよう」「この魔物は斃されたままでいいや」とすればいいのかもしれませんが、全ての魔物を管理できるわけもありませんので、設定に頼らざるを得ないのです。
ちなみに
Dランクの私は三体まで
「リポップ時の消費TPは考えなければいけませんが、同時に侵入者からもTPが入るのであまり気になさらない方がよろしいのでは? もちろん最初は安全に運用すべきですが」
「侵入者がどれほど入るか、どれくらいの探索時間でどれくらいTPが入るのか、どれほど魔物が斃されるのか……それを確認してからでないとちょっと怖いですね」
エメリーさんが戦うのであればこちらの消費TPを気にせず延々と増え続けるのでしょうが、弱い魔物ですとすぐに斃されてしまうでしょう。私も小さいとは言え商店の娘です。収支は気になります。
侵入者の討伐TP、ダメージTP、滞在時間TPで増えるより斃されるペースが早かったら目も当てられません。
そこら辺は経験と言うか、様子を見てから調整したいと思います。
「何はともあれ一度召喚してみますか」
「ええ。念の為、わたくしはお嬢様のお隣で控えておきます。襲って来られたら困りますので」
そんな魔物がいたら新塔主の人はとっくに全滅していると思うんですけど……守って下さるお気持ちは嬉しいのでそのままにしておきましょう。
さて、初めての召喚です。
少し緊張しつつ、画面の召喚リストの中から魔物を選びます。
最初に選ぶのは【ウッドソルジャー:10TP】。
一階層で最初に侵入者と戦う役割です。他の塔で言うところのゴブリンみたいなものでしょう。
このウッドソルジャーを数多く配置するつもりでいます。
画面を指で触れると、数を入力する画面に切り替わりました。最初は一体でいいです。
下方に【決定】という項目があるのでそこに触れます。
すると、玉座の前、5mほど離れた場所で魔法陣が描かれました。
鈍い光と共に魔法陣からにょっきり生えてきたのは、木製の兵士。
140cmほどの身長。右手に剣、左手に盾、鎧も含めて全てが『木』です。
顔はツルンとして何もありません。膝や肘は球体になっていて、まるで本物の人形のよう。
足元の魔法陣が消えるとウッドソルジャーは意識を取り戻したように動きます。こちらに向かって敬礼。
かわいらしいですが兵士であるのには違いないようです。
「ウッドソルジャーさん、私の言葉が分かりますか?」
『コクリ』
「貴方には私の塔の一階層で侵入者から城を守る役割を担ってもらいます」
『コクリ』
良かった。話も通じますし、こちらの言う事も聞いてくれます。
エメリーさんも一歩下がりました。安全という事でしょう。
「今から貴方のお仲間を百体ほど召喚します。まとめて配置させますので横にずれて待っていて下さい」
『コクリ』
さて、じゃあ続きをやっていきますか!
◆
それから様々な魔物を召喚し、各階層に配置していきました。
一部にボスっぽい魔物も置きましたが100TP前後の魔物ばかりです。
リポップの事を考えればあまり高価な魔物はまだ使えません。
しかし六階層は悩みどころです。
ここは大通路といくつかの中部屋という構成なのですが、七階層の【謁見の間】に行く前の最終関門という感じで考えています。
七階層への階段の前に大ボス部屋。
大ボス部屋に入る為の大扉にはいくつか『くぼみ』があり、『証』をはめ込まなければ開かない仕組みです。
そしてその『証』を手に入れるには中部屋を巡って、各部屋にいる中ボスを斃す必要があると。
このアイデアはエメリーさんに出してもらいました。私じゃこんな難しい事考えつきません。
なんとか侵入者を六階層で食い止める為に何か方法は……と考えていたら教えてくれました。
ボスを斃す事を『鍵』とすればいいと。さすがエメリーさんです。経験があるのでしょうか。
ともかく、中ボスを何体かと大ボスを配置する必要がありまして、半端な魔物を召喚するわけにもいかないのです。
【リビングアーマー:250TP】【リビングローブ:300TP】……弱いですかね? 何体か配置するのも手です。
【スレイプニル:850TP】……城の中に馬って言うのも変ですよね。
【デュラハン:1000TP】【ハイフェアリー:1000TP】……うーん。
「お嬢様、クイーンはいかがですか?」
「クイーンですか……確かに欲しいですけどすごく高くなりますよ?」
「どうせ大ボス部屋には強力な魔物を置くのですし、クイーンならば配下を生んだり、統率したりといった事が得意な種もあると聞きます。それに知性を持ったクイーンであればわたくし達以上に魔物に詳しいはずですし、相談も出来るのではと」
「ああ、なるほど」
それは確かにそうですね。いずれクイーン系は何体も召喚したいと思ってますし、情報源として早めに召喚するのも手です。
初期コストとしてはかなり高いですが……。
【ハーピィクイーン:4000TP】
【ラミアクイーン:3500TP】
【クイーンアルラウネ:4000TP】
【サキュバスクイーン:3300TP】
【アラクネクイーン:3000TP】
候補はこんな所ですかね。【ビークイーン:2000TP】とか【クイーンアント:2300TP】だと会話が出来なさそうですし【★
「うーん……アラクネですかね、TP的にも安いですし」
「三階層の牢獄エリアに蜘蛛系の魔物を配置しますし、統率する意味でもよいのではないでしょうか」
「喋れますよね?」
「分かりません。喋れなかったら指示するのみです」
女王様に指示ですか……いえ、召喚する塔主ですし【女帝】としてシャンとしなければいけません。
よし! じゃあ思い切ってやってみましょう!
そうして画面を操作し、【決定】に触れるとヴォンと今まで以上に大きく複雑な魔法陣が広がりました。
そこから溢れる光もまた今まで以上。ゴクリと唾を飲みこみます。
浮き上がるように現れたのは――真っ白の巨体です。
下半身の大蜘蛛は真っ白でフサフサ。しかし八本の足先は牙のように鋭い。
上半身は白く長い髪、白い肌、白いイブニングドレス。とても美人な女性ですが、瞳だけ真っ赤です。
全体で見れば体高2m、体長3m弱といった所。見上げる感じです。
まるで『白の貴人』。
恐ろしい下半身があるのにとても美しく、とても華美に見えます。
これがアラクネの女王か……と驚いていると――。
「貴女が主様でいらっしゃいますか?」
喋ったああああ!!! 良かった! と喜ぶわけにはいきません。キチンと接しませんと。コホン。
「ええ、私が【女帝の塔】の塔主、シャルロットです。貴女を召喚いたしました」
「私はアラクネクイーン。名もなき女王ではありますがどうぞお見知りおきを」
「こちらこそよろしくお願いします」
アラクネクイーンは見事なカーテシーで挨拶してきました。私は返答だけです。女帝らしく。
しかし名付けか……残りは12,540TP。
仮に名付けを行うと、
せっかく召喚した知性あるクイーン。色々と相談したいですし
しかし安全の為にも余剰分で10,000TPは確保しておきたいと思っていましたし、名付けをすれば10,000TPを切ります。
まだ六階層の中ボスも全く決まっていないのに……どうしたものでしょう。
ちらりとエメリーさんを見ます。……頷きました。私の好きにしていいと目で言っています。
うーん……よし! やっぱりちゃんと名付けましょう! となれば名前は……。
「……貴女はヴィクトリアと名付けます」
「まあ! 名付けて頂けるとは! ありがとうございます。シャルロット様をお助けできますよう、精一杯務めさせて頂きます」
「ええ、それで早速色々と説明と相談をしたいのですが」
「リビングにどうぞ。お茶をご用意いたします」
こうして私の『眷属』が仲間になりました。
眷属としてはエメリーさんに続いて二人目。魔物では初めてです。
お茶を飲みながら話し合ってみましょう。
=====
名前:ヴィクトリア
種族:アラクネクイーン
職業:シャルロットの眷属
LV:40
筋力:B
魔力:B-
体力:C
敏捷:C+
器用:A-
スキル:糸操作、統率、配下召喚、縫製、土魔法
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