380:【女帝の塔】vs【白雷の塔】決着です!
■シャルロット 17歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
エメリーさんの立てた作戦は今までで一番緻密なものだったと思います。
一言で言えば連携力が試される戦いだなと。
クイーンの皆さんの力は信じているものの、本当にこんな作戦が実行可能なのかと私は内心不安でした。
まず十三・十四階層の入口に布陣しましたが、案の定、敵は大軍で襲い掛かってきました。
と言っても階層中程から向かって来るわけですから距離はあります。
そこでまずスカアハさんが影の中から<
【影の塔】と戦った時にも使われましたが、エメリーさんも実際に間近で体験していますからね。その厄介さは承知していたのでしょう。
壁の向こう側が全く見えなくなるらしいですね。<気配察知>などで敵の位置を測るしかないと言います。
この影魔法を作戦の主軸に置いたのは、スカアハさんにとって初めての
<
スカアハさんは<影潜り>のまま<
同時にワキンヤン(S)を<
配下である斥候部隊は迂回してから壁を通って、スカアハさんのフォローをする動きですね。
エメリーさんはまずマンティコアに騎乗し、先頭で襲ってくる固有魔物の馬を迎撃。
【魔剣グラシャラボラス】で一撃です。時間を掛けていられないと判断したのでしょう。
腐食された馬はそのまま死亡です。一応見届けてからエメリーさんはまた動き始めました。
ベアトリクスさんはハイウィッチ部隊とガーゴイル(B)、フレスベルグ(A)を率いてサンダーイーグル(B)の掃討。
それが終わったら地上のナイト部隊目がけて魔法を斉射します。
壁の向こうの敵の位置に関しては、皆さん<魔力感知>とか<気配察知>とか持っていますが、一応私のほうでも伝えています。俯瞰視点で見られるのは私だけなので。
ターニアさんは捕らえたワキンヤンを斃した後、ハイフェアリーの部隊と共に迂回して壁を抜け、最後衛の精霊部隊を狙います。
ここはターニアさんが適任でしょう。精霊の魔法は強力ですから。
ハルフゥさんは本陣を固めつつ全体に目を向けていました。
まず行ったのはジェンダさん率いる地上部隊に向けての魔法斉射ですね。珍しくハルフゥさん自身も攻撃に加わっていました。
初撃のあとはバートリさんにバフを掛け、あとは回復がメインです。
そのバートリさんはハルフゥさんの魔法斉射を見届けた後にまっすぐ突貫。ヴァンパイア部隊と共に敵地上部隊に当たります。
これでバートリさんがジェンダさんを抑え、ヴァンパイアが大勢で蒼い騎士を抑える。
残りのサジタリアナイトたちにはヴァンパイアの他、
ここが一つ考え所でした。元々、ジェンダさんにはエメリーさんを当てるつもりだったのです。
しかしエメリーさんには色々と仕事があり、バートリさんも「戦いたい」と言ったことで布陣を変更。ジェンダさんとバートリさんの一対一が実現したのです。
ジェンダさんの剣技は騎士のそれではあるものの盾など持たず、直剣一本で戦うようなスタイルでした。
エメリーさん曰く、ジータさんより力はないものの雷魔法を併用する魔法剣士としての戦い方が見事だったと。
雷魔法は身体に纏うことでバフのようにも使えるようですし、当然攻撃としても使えるわけです。
それが想像以上に厄介だったとはバートリさんの言葉です。私もハラハラしながら見ていました。
ただ戦う前から厳しい相手であるとは分かっていましたし、万が一にもバートリさんを喪うわけにもいきません。
事前にハルフゥさんからのバフを入れて臨んだ上、それでも苦戦を強いられていたようですので、ハルフゥさんの回復と終いにはスカアハさんのデバフも入れてなんとか倒せたような恰好です。
一応、一対一の形式は保ちましたが実際は総力戦で勝ったようなものですね。
その頃、再びマンティコアに乗りこんだエメリーさんはヴァルキリー・ペガサス部隊に仕掛けていました。
この部隊が非常にネックだったのですよ。Sランクが五体、Aランク十体、計五十騎という大部隊が。
まずは先制とばかりにエメリーさんはマンティコアをとにかく回避優先で飛び回らせ、ご自身は魔竜剣の魔法やら投擲武器を撃ちまくる。
魔竜剣はいつものハルバードだけではなくジータさんにお貸しした特大剣なども使っています。魔法の威力が必要と見たのでしょう。
さすがにマンティコアに騎乗しながら魔剣は使えないようでしたが、敵の布陣を崩すことは出来ていたかと思います。
しかしそれだけで斃せる相手ではありません。
ベアトリクスさんの部隊も後から参戦し、天使部隊の掃討が終わったスカアハさんも地上からサポートに入ります。
ターニアさんは精霊部隊を斃したあと、サンダーガルーダ(S)とガルーダ(A)五体を相手に奮闘していました。
その頃にはハルフゥさんの本陣も壁を抜け、全員がどこかしらに関与するような戦いです。
もちろん一方的に攻撃し続けたわけでもありませんし、反撃をくらう場面や事故などもありました。
被害を出した上での完勝。そういった感じだと私は思っています。
その後、最上階にいつもの布陣で向かわせましたが、アドミラさんはただ祈るばかりでした。
ぶつぶつと喋る言葉の中には「申し訳ありません、アダルゼア大司教様」とエメリーさんには聞こえたようです。
私は
『は~い、終了~! 【女帝の塔】の勝ち~!』
押収品は特に多くもありません。バベルジュエルに入っていたTPもBランクとしては少ない方だと思います。
しかし……アダルゼア大司教
『【聖】同盟そのものが関与しているのか、【正義】が単独で動いているのか、はたしてどちらでしょうね』
『どちらにせよ許されざる事です。信徒を利用したか誑かしたかは分かりませんが、自らの代わりに
『諜報のつもりなんかな。だとしたらアドミラさんを通じてシャルちゃんの情報を得たのかもしれんけど』
『同盟でなくとも観戦できるような限定スキルか? それであれば手引きしたのは大司教ではなく別の塔主じゃろ』
『せ、【聖の塔】なら″枢機卿″って言いますよね、きっと……』
となると【正義】が単独で行動したのでしょうか。
同盟で知っていて野放しにしたのなら、やはり【聖】同盟自体が信徒を無下にするような集団ということです。
私は別に創界教徒ではありませんが……何となく腹立たしくなりますね。
【正義】にはいずれ【春風の塔】が申請するという予定ではありましたが……私が申請しちゃいましょうか。さすがに無理ですかね。
■アレサンドロ・スリッツィア 64歳
■第472期 Sランク【聖の塔】塔主
『神様通信
本日行われた
【白雷の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』
「これはどういうことですかな、アダルゼア大司教。神聖国の無垢なる信徒を生贄に出すなど」
『し、知らん! わしは何も言っておらんぞ! 【白雷】が勝手に仕掛け勝手に負けただけだ!』
「では貴方が【女帝】に仕掛けると言っていたのはこの件ではないと? どこぞの塔主に仕掛けさせるとか仰っていたと思いますが?」
『そ、それは……ええい! どうでもいいではないかそんなことは! 大した問題でもあるまい!』
【白雷】のアドミラは塔主の中でも貴重な敬純たる信徒だった。バベリオ創界教会にもよく足を運んでいたという。
それを【女帝】に仕掛けるよう指示を出したのはこの肉豚で間違いない。
全く余計なことをしてくれたものだ。何が「大した問題ではない」だ。問題だらけではないか。
創界教の上層部には暗部も存在しているからアダルゼアが他者に討伐を依頼するのは分かる。
しかしその相手がただの信徒であり、貴重なBランク塔主だったことが問題なのだ。
アドミラはこんなところで使い潰していい人材ではない。
それを好き勝手に使いおって……。
アダルゼアは理解していないようだが、すでに大きな問題が二つ発生している。
一つはこの勝利を受けて【女帝の塔】がさらに強化されてしまったこと。
【白雷の塔】には『飛行・雷・天使』という魔物の特色があった。
Bランク討伐の報酬TPに加えてこれらの魔物の召喚権利を【女帝】が得てしまったのだ。
特に天使は痛すぎる。だから【白雷】はこちらの手元に置いておきたかった。だというのに……。
これで彼の同盟には【忍耐の天使ウリエル】の他に、【白雷】の天使まで組み込まれたことになる。
天使は神聖なる象徴というだけでなく、単純に戦力としても強大なのだ。これが敵の手に渡るというのは誠に頂けない。
そしてもう一つは我らと彼の同盟の対立構図がより鮮明になってきたということ。
本国や信徒たちからは「奴らを絶対に許すな」「早く
それが出来ないと知っているのはバベルの内情に詳しい一部の者だけだ。
一方で信徒でない者、バベリオの民などは【女帝】を称え、逆に創界教や我らの同盟を明確に″敵″と捉え始める。
今までは互いに嫌い合っているという噂に過ぎず直接的な対立はなかった。
しかし今回の一件はただのBランク同士の
その上で【女帝】が勝ったのだから勝者こそが正義だという話になる。
バベリオというのはそういう腐った街なのだ。そこから世界に情報が広まるからまたタチが悪い。
いずれにせよ何かしらの手は打たなければなるまい。
一先ず【六花】あたりを消すか、それとも……肉豚を殉職させることも本格的に考えなければならぬか。
はぁ……全く気の休まらんことよな。
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