381:嫌な報せが届いたようです!
■セリオ・ヒッツベル 24歳
■第499期 Cランク【審判の塔】塔主
『神様通信
本日行われた
【白雷の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』
まぁ続くだろうな、とは思っていた。
502期の新塔主がオープンしてからあちこちで
僕としても同盟を組んだことで、例年にないほど戦いを経験しているつもりだ。
【
たった一月でBランクが三塔も消えるとは何事だ、と言いたいところだが【
六塔同盟のうち四塔が
そう思っていたところに今回の一報だ。
【女帝】が【白雷】に勝った。またBランクかと。
前期の総会の時点でBランクは35塔あった。内10塔はCランクから上がった形なので当分
残る25塔のうち、【
相変わらずと言うか、何と言うか……とにかく僕はほぼ味方のような状態で助かったと言うしかない。
そんなことを思っていた矢先、25塔のうちの一塔から手紙が届いた。
=====
【針葉樹の塔】から
形式:
受理 却下
――手紙添付なし――
=====
「またか……」
「懲りないですね。まさかイェグディエルに気付きましたか」
「もしそうなら今までのは何だったのだという話になるが……タイミングが良すぎるのも不可解だな」
Bランクの【針葉樹の塔】。十八年目で昨年後期のランキングでは45位だったな。
遅咲きと言うか、じりじりとランクアップしている印象だが、塔主のシュルクエールについてはあまりいい印象を持っていない。
シュルクエールは我がグリンラッド王国の出身なのだ。
ヒッツベルのような田舎街とは違うのだが、それでも他街の農家の出だという情報は得ている。
僕は貴族ではないが父は一応準男爵の位を賜っているし、仮にも一つの街を預かる領主だ。
そのヒッツベルに対して
普通ならば自国の貴族に喧嘩など売らないだろう? まぁ準男爵家が嘗められるというのはありがちなのだが、それにしても普通の民の思考ではない。
ではなぜシュルクエールはわざわざ僕に
反貴族主義なのか、グリンラッドを嫌悪しているのか――いや、そうではない。
シュルクエールは……ただの天使好きなのだ。
それはもう判明している。新年祭のパレードでもおそらく自塔の固有魔物である女性と共に、天使を二体侍らせていた。
何なら過去の新聞で記事にされていたらしい。僕が実際に見たわけではないのだが、インタビューで天使の素晴らしさについて熱弁していたと。
わざわざインタビューで何を喋っているのだと頭が痛くなった記憶がある。
つまりシュルクエールは僕がグリンラッド貴族(の家系)であるとか関係なく、ただ「【審判の塔】には天使がいるはずだろう」と
今までも何度か申請はされてきたがその時はまだ大天使などいなかった。小天使ならばいたがな。
当然だ。塔主になって三年やそこいらで大天使を持てるようなら苦労はしない。どこかの同盟じゃあるまいし。
しかし最近僕もやっと召喚できたのだ。自塔のSランク固有魔物【審判の天使イェグディエル】を。
召喚してみれば思ったよりも性格的な相性の悪さは感じない。二人で話し合っているのもよく見かける。
ただ一緒に戦うとなると不都合が出るので、そこは区分けするしかない。闇と神聖の併用というのは難しいのだ。
余談ではあるが、最初に【女帝】と会合をした時【忍耐の天使ウリエル】を連れて来た意味もようやく分かった。
<悪意感知>や<魔力感知>も理由の一つにはあったと思うがそれだけではない。
一部の大天使は<人物鑑定><アイテム鑑定>が使えるそうなのだ。見ただけで情報を得られると。
つまり【女帝】は僕ら……というかおそらくミリアとティナだろうが、その能力を測っていたのだと思う。
まだあの時は敵になるか味方になるか分からない状態であったから、敵となった場合を考えて備えていたというわけだ。
全く持って抜け目がない。一本取られたと悔しく思ったものだ。
となると新年祭のパレードに大天使を連れて来ていた【世界】【聖】あたりは塔主や眷属の情報をあの場で得ているということになる。
同時に、別に見られても問題ないと思っているから連れてきているわけだ。
そう考えると僕はイェグディエルをパレードに連れて行くべきか悩むのだが……それはまた今度考えておこう。
今はシュルクエールの話だ。
とにかく僕がイェグディエルを召喚したこのタイミングで
もし知った上で改めて申請してきているのなら、それは諜報型限定スキルを持っているという証拠だ。それ以外に知る術がない。
もともとこちらには戦う気などないのだが、ずっと見られていると思うと気持ち悪くなるものだ。
シャルロットは「見られていて当然と思っておくべき」というようなことを言っていた。僕もそれには賛成だ。
しかし相手がシュルクエールとなれば嫌な気分になる。正直言って嫌悪しているからな。
「まぁ却下は却下なのだが……どうしたものかな」
「アレを斃せるくらいになるまで早くお強くなればいいのでは?」
「無茶を言うな。これでも僕にしては急いでいるほうなのだぞ」
伯母上の【風雷の塔】を守るため、ティナを守るため、【風雷の塔】を強くしなければならないし、同時に【審判の塔】も強くする必要がある。
群がってくるであろう敵から身を守るには相応の力が必要なのだ。
最低限、限定スキル持ちと渡り合うくらいはどうしても必要になる。それもなるべく早く。
さすがに【
伯母上のためにも、まだ歩みを止めるわけにはいかない。
……かと言って【針葉樹の塔】と戦うような無茶はしたくないのだが。
■ドロシー 25歳 ドワーフ
■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主
=====
【針葉樹の塔】から
形式:
受理 却下
――手紙添付なし――
=====
「うわぁ……去年から何度目やねん」
「最近は大人しいと思ったのですがね。まだ諦めていませんでしたか」
「すみません、私は詳しくないのですがこの相手は因縁か何かなのですか?」
そうか。パルテアを召喚してからは初か。そう考えると結構時間が開いたな。
【針葉樹の塔】は一年前に【傲慢】同盟を斃したくらいから定期的に申請してきとるBランクのベテランや。
塔主のシュルクエールは天使好きの変態らしくてな、ウチらが【傲慢】を斃したから天使を持っているに違いないと当たりを付けて申請してきとるわけや。
せやからこっちはパレードにも出さんとずっと隠してんのに。
まぁシュルクエール以外にもバレとるとは思うけどもな。
「でしたら【聖】同盟を狙ってくれればいいのですがね。【聖の塔】でなくとも【鋭利の塔】であるとか。【純潔の天使ラグエル】がいるのですし」
「【忍耐】よりも【鋭利】のほうが一応は上ですし順当は順当なのでは?」
「それか【鋭利】にも申請してウチにも申請して、他に天使がいそうな塔ならどこにでも申請しとるかもしれん。変態の考えることはよぉ分からんわ」
ひょっとしたら【審判】とかにも申請しとるんかな?
シャルちゃんから聞いてもらってもいいかもしれん。
まぁウチはどのみち【針葉樹】からの申請なんて却下……んん?
「ドロシー様、今ならば受けても良いのではありませんか?」
「ウチもそう思ってたトコや。反射的に却下しそうになったけど……ちょっと一考の余地ありやな」
最初に申請が来た時はウチもCランクに上がったばかり。
ウリエルは眷属化しとったけど、それでもBランクの塔となんか戦えるわけもなく申請なんて速攻で却下した。
それから何度か申請が来たけど同じように「【針葉樹】なんか戦えるわけあるかい!」と問答無用で却下してたわけや。
ただ今は
フゥも限定スキルをとったし、ウチもとっとかんと【輝翼の塔】だけがBランクに行ってまうこともありえるわけで。
まぁ今から限定スキルをとったからって確実にランクアップできるとは言えないんやけど。
とにかくTPが欲しいちゅうのは変わらんし、あれから【忍耐の塔】も強くなっていると思う。
今なら【針葉樹】が相手でもやり合えるかも……と思うくらいには。
うーん、ちょっと同盟のみんなに相談してみるかな。
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