255:【バベル新聞】最も注目されている新塔主を直撃!
この度、我々バベル新聞社は【六花の塔】シルビア・アイスエッジ様に単独インタビューさせて頂く機会を得た。
第501期の新塔主として華々しいスタートをきり、数々の
最も注目される新塔主、その裏側をたっぷりとお聞きした本記事は全三回に渡ってお送りしたいと思う。
第一回となる本号は塔主と選ばれてから今までの道のりについてお伺いした。是非ご覧頂きたい。
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――本日はどうぞよろしくお願いします。
シルビア様(以下、シ):よろしくお願いします。
――まずは塔主となって半年が経過した今の率直なお気持ちをお聞かせ下さい。
シ:想像の何倍も難しいですね。私なりに塔主はこういうものだろうと予想していたつもりですが予測が甘かったと日々痛感しています。
――それは塔の運営が難しいということでしょうか。
シ:塔運営もそうですが、侵入者のことであったり他の塔のことであったりバベル自体のことであったり、とにかく知らないことが多すぎるので手探りの毎日です。
――シルビア様はAランク冒険者としてバベルに挑戦されていました。そうした経験があっても難しいものですか。
シ:冒険者として塔に挑むのと、塔主として運営するのでは全く異なります。もちろん経験が活かせる部分もありますが、それは決定的なアドバンテージとはなりえません。私も運営するまでは「バベルのことはよく知っているしある程度できるだろう」という安直な考えを持っていましたがすぐに改めました。改めざるを得なかったというほうが正しいですね。
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新塔主の誰よりもバベルのことを熟知しているのはAランク冒険者として数々の塔に挑戦されていたシルビア様だと記者は思っていた。だからこそ有利な塔運営が出来、プレオープンでも優秀な成績を収めたのだろうと。
しかしそうではないと。塔主としての難しさは挑戦者としての経験では解決できないものなのだとシルビア様は仰る。そして順風満帆に見える現在でもそれは継続しているのだと。
それを踏まえてこれまでの経緯をお伺いしたい。
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――塔主に選ばれた時の心境はいかがでしたか。
シ:信じられないという気持ちが強かったですね。塔主となれば【氷槍群刃】からも抜けることになるのでメンバーにも迷惑をかけますし、素直に喜べなかったというのが正直なところです。
――パーティーメンバーの方々の反応は。
シ:私以上に喜んでいましたよ。応援もしてくれました。今も時々会いますが敵味方としてではなく友人としての関係性が続いています。まぁ秘密にしなければならないことも増えましたがね。
――ご実家へは連絡されたのですが。
シ:ええ、驚いた様子でしたがそれ以上にアデル様の手助けとなるよう言われましたね。私もそれは望むところでしたので言われずともという感じなのですが。
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シルビア様のご実家はメルセドウ王国のアイスエッジ侯爵家。貴人でありながら冒険者としての経歴を持つ稀有な御方である。
一方で【赤の塔】のアデル・ロージット様は第500期のプレオープン1位であり、【
ロージット公爵家とアイスエッジ侯爵家はメルセドウ内においても近しい間柄にあるとは噂に聞いているが、どうやらそれは正しかったようだ。
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――塔主となられるにあたってアデル様からは何かありましたでしょうか。
シ:それこそ内定式の前から色々と相談にのって頂きました。メルセドウにいた頃から面識はありましたので新塔主となった私を気遣って下さいまして、それは今でも継続しています。
――アデル様は一年先に塔主となり今も大活躍を見せています。そうした経験というのはシルビア様にとっても大きかったのでは。
シ:仰るとおりですね。たった一年ではありますがその濃密さは私が言うまでもなく周知のことでしょう。間違いなく歴史に名を残す偉業ですし、それを現在進行形で行っていらっしゃる。そもそも私とは才が違いすぎますから、アデル様からの助言というのは全て私の糧となっています。
――プレオープン1位の成績を収めた裏にもアデル様の御助力があったのでしょうか。
シ:もちろんアドバイスは頂きましたが私なりに勉強し、頭を使い、経験を踏まえた上で塔を創ったつもりです。それでもアデル様に言わせると改善点の多く見える出来だったようですが。
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シルビア様は【六花の塔】と
その塔は今も新塔主のトップに相応しい難関の塔としてあるわけだが、決して『メルセドウの神童』たるアデル様の手腕によるものではなく、あくまでシルビア様ご自身の手で創り出したものらしい。助言に留めていたということだろう。
しかしプレオープン1位の塔がアデル様から見れば未熟に映るというのは非常に興味深い。
だからこそ【赤の塔】の強さが窺えるというものだ。
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――【
シ:そうですね。それまでに何度もお話しさせて頂く機会はあったのですが、こちらの塔が少し落ち着いた頃を見計らってお誘い頂きました。
――【
シ:冒険者だった頃はその戦果を聞くたびに驚いていましたよ。幾度となく下剋上を果たしていましたからね。理解しようにも理解できませんし、いくらアデル様に才があると知っていても簡単に信じられるものではありません。
――その同盟に誘われた時の心境は。
シ:嬉しいよりも「なぜ私を」という気持ちが強かったですね。足手まといになるだけですし、私を同盟に入れたところで諸先輩方のご迷惑になるだけだろうと。
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プレオープン1位の成績を残したシルビア様でさえ【
傍から見ればそれだけの成績を残したのだから【
身近なシルビア様であっても、いや身近であるからこそ高い壁に感じるものなのかもしれない。
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――同盟に加入してから他の塔主様がたと交流などはありましたか。
シ:はい。皆様の塔にお邪魔もしましたし、毎日のようにお話しし、アドバイスを頂いています。
――それは新塔主のシルビア様にとって素晴らしい環境に思えます。
シ:仰るとおりですね。才能溢れる五塔主ですから私の疑問などあってないようなものです。運営に悩むことがあっても即座に答えが返ってきますし、私としてはそれに甘えてばかりですね。
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だからこそ足手まといのままではいられないとシルビア様は決意を胸に仰っていた。甘えてばかりではだめだと。
そう律せられる精神こそがシルビア様の才なのではないかと記者は感じた。
いずれにしても【
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――シルビア様から見た五塔主の印象は。
シ:直接お会いして色々とお聞きしましたが、あの五名は″異なる才の集合体″です。加入して初めてそれに直面しましたが驚かされることばかりです。
――異なる才の集合体、ですか。非常に興味深いのですがお一人ずつお聞かせください。まずアデル様の印象は。
シ:何をやらせても人並み以上に熟せるというのは元々知っていましたが、最近思うのは特に思考能力の高さですね。考えを巡らせるその速度と量が常人離れしていると。それと向上心や不屈の精神力といったものが図抜けていると思います。
――シャルロット様はいかがでしょう。
シ:一番不思議なお人ですね。理解しようだとか才を言語化しようだとかそういうのは私には無理です。ただ人としての魅力に溢れ、シャルロット殿の周りにはいつも人が集まると。皆の中心にいるのが当たり前といった存在です。
――ではドロシー様は。
シ:奇才と言いますか鬼才と言いますか、【忍耐の塔】を知る者であればその凄さはすぐに分かるでしょう。罠一つとってみても他の塔には真似のできないものばかりです。おそらく他者の視線や思考を読むことに長けているのではないでしょうか。
――フッツィル様はいかがでしょうか。
シ:アデル様と近いようで別方向の思考能力をお持ちではないかと思います。伝手もなしに500期のプレオープン4位ですからそれを創り出せるほどのお力を持っているのは疑いようもない。もし【輝翼の塔】が501期だったなら私は2位でしたね。
――最後にノノア様は。
シ:考え方が非常に柔軟で、私としてはドロシー殿と似たような頭の持ち主だと思っています。他の誰が【世沸者の塔】を賜ったとしてもあのような塔には出来ないでしょう。あの塔こそがノノア殿の才の結晶なのだと思います。
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聞いていてなるほどと思わせるところが非常に多い。
以前【
異なる才の集合体――シルビア様はそう称した。
バラバラな色彩の糸は一つにまとまり驚異的な同盟となって結ばれている。
そして記者の対面に座るシルビア様の左手首には″六色の組紐″が。
新たな″彩″となった【六花の塔】は今後どのような活躍を見せるのだろうか。
次号はその【六花の塔】について詳しくお聞きするので期待してお待ち頂きたい。
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