274:バトルをする前に殴り合っています!
■シャルロット 16歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
「あー、こう来ましたか……」
私の提示した条文に対し、相手方からさらなる修正案が届きました。
さすがに色々と不可解に思われたようです。
=====
・
・
・【轟雷】【空白】【氷海】同盟は【女帝の塔】を攻略すれば勝利。【女帝】は相手方の三塔を攻略すれば勝利とする。
・勝敗は
・
・神との立ち会いで詳細を決定し、その二日後の二の鐘から勝負を開始し、勝敗がつくまで継続する。
=====
二つ目の文章が追加になっていますね。その他は私が出したものそのままです。
つまりは完全に「戦うのは【女帝】だけだ」と念を押しているわけです。
同盟の皆さんからはあらゆる補助が受けられないと。
例えば「【赤の塔】自体は参加しないけど仮にも
限定スキル等による強化も禁止ということですから【魔術師】のケィヒルさんが持っていた「自戦力の魔法威力上昇」のようなバフの同盟版みたいなものを想定しているのでしょう。
それをアデルさんが持っていたなら、
なるほど、よく考えるものです。……まぁそんなものはないのですが。
『おそらく向こうはシャルロットさんがどれほど譲歩してくれるのか見極めたいのでしょうね』
「私が出した条文が向こうに有利すぎたからですか?」
『一概に有利とは受け取ってないやろ。でも三塔vs一塔を認めたのは確かや。向こうはそこを重視しとって、あとはどれだけ業突く張っていけるか……ってとこやろな』
『甘い蜜なら出来るだけ啜りたいと。生粋の商人じゃのう』
私が条文を修正したことで、向こうは防衛戦が厳しくなると承知している。
でも三塔vs一塔は変わらない。まだ自分たちが有利な状態だと。
それをさらに確実なものとするために条文を追加した、ということですか。
私としては何の痛手もないのでこのまま受けてもいいのですが……
『まだ受理してはダメですわよ』
「ダメですか……」
『当たり前でしょう。それでは「こちらにそのような術がない」「勝つ方法は他にある」と言っているのも同じですわよ』
「あー、なるほど」
『それにこっちを縛る条文ばっかで平等も何もないやん。神様かて止めると思うで』
確かにそれはそうですね。一応は
まぁこちらで条文を修正して提示しているわけですから、ある程度不平等に見えてもゴリ押しできそうですが。
それでも神様は立場上言わなきゃいけないでしょうからね。「これ不平等だけどいいの?」と。
しかし「勝つ方法は他にある」と分からせないためにはどうすればいいのですかね?
追加された条文をそのまま削除だけでは堂々巡りになりそうですし……それだと私が出した修正案に戻っただけですからね。
『追加の条文を認める代わりにこちらからも追加で条文を入れてはどうじゃ?』
「例えばどんなのです?」
『分かりやすいのは″限定スキルの使用禁止″じゃな。向こうがこちらの限定スキル使用を禁止しとるんじゃからそっちも使うんじゃないぞと』
限定スキルですか。確かにそれはありがたいですね。
私がターニアさんに調べてもらった中で【轟雷】のファモンさんが諜報型限定スキルを持っているのは確認しています。
ただ【青】のコパンさんが持っていたような代物ではなく「限定的な盗み聞き」らしいのです。
どういう形で盗み聞きしているかは分かりませんが、場所が限定されて、尚且つ聞き出せる情報量も少ないようですね。
少なくとも私の声を盗んだり、その情報で【女帝の塔】の詳細を知っているということもないようです。
そういったことも知ることができたので益々「三塔まとめて斃さなきゃ」となったのですが。
ファモンさんの限定スキルが
ただ万が一を考えれば使えなくしてしまったほうが楽にはなります。不安が減るという意味で。
『フッツィル殿、そうしたらシャルロット殿が
『それで有利になったと思ってくれたらラッキーじゃろ。まぁないとは思うが』
『おそらく向こうは「万が一持っていたとしても内政型」と思っているでしょうね。そして「そんな提示をしてくるくらいだからやはり内政型なのだろう」と思うはずですわ』
『ただ″億が一″戦闘系の限定スキルを持っていることも考えれば受ける一択やろうな。意味のない条文で本質を誤魔化すちゅう意味ではこっちの勝利や』
『はぁ~、なるほど。勉強になります』
私もシルビアさんと同意見です。
本当にこの御三方の頭はどうなっているのでしょうか。私には全く分かりません。
思考を読んだり誘導したりと、よくもまぁ考えられるものです。
味方で良かったですねぇ……敵に回すと恐ろしいとはこのことです。
『あ、あのー、ついでに″
「それはさすがに却下じゃないですか? 私が
『そ、そうしたら却下させていいんじゃないでしょうか。″限定スキルと
『アリやな。こっちも厳しいんやぞってアピールするのは悪くない。そこが弱みと見て益々食らいつくで』
『わたくしも賛成ですわね。どう転がってもこちらに旨味しかありませんもの』
ほぼ唯一の不安要素と言っていいでしょう。
【空白】のカラーダイスさんが【剣の
これが
まぁ対策としては近づかずに遠距離攻撃で
それと【氷海】のドミノさんが持っている【本の
こちらは能力がほぼ特定できているのですが、どうやら私の召喚リストを見ることができるらしいのです。
最初にそれを知った時には驚きました。そんな
ただあくまでリストを見るだけで、そこから何を召喚したのか、私がどのような戦力を持っているのかは分からないようです。
とは言え、例えば飛行系魔物が少ないであるとか、例えば水棲系魔物がいないとか、そういうことは分かると。
おそらく召喚報酬となっている魔物も確認はできると思うのですが、そこまでは把握できていません。
ドミノさんはそれをもって想像するわけですね。
【女帝の塔】はこのような塔構成でこのような地形だから、こういった魔物を召喚しているはずだと。
それを同盟の三塔で共有しているようです。
ファモンさんとカラーダイスさんはドミノさんの予想を当てにしている節があるようですから、それだけドミノさんの考察力が優れているのでしょう。かなり信用しているようですからね。
……まぁ私との
結局私の戦力は把握できないのですし、仮に把握できても魔物の召喚リストに載っていないエメリーさんがいるわけで。
ただ「そんな
それらの
おそらく向こうの反応は「限定スキルならまだしも
そういった返答が来れば私は「じゃあ限定スキルだけでいいです」と修正案を出すわけです。
それが最終案になればいいんですけどね……どうでしょう。
向こうは向こうでドロシーさんやフゥさんみたいな性格の人たちばかりですからね。
……一筋縄ではいかなそうです。
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