110:赤の塔vs昏き水の塔、決着です!
■アデル・ロージット 18歳
■第500期 Cランク【赤の塔】塔主
対【昏き水の塔】を考えた時、一番始めに手を付けたのが
眷属枠を埋め、大量のTPを消費しSランク眷属を創る。
あとは相手が注目するであろうジータを一緒に行かせれば、攻撃に関しては問題なし。
しかし防衛には頭を使いました。TPにそれほど余裕もなくなりましたし。
どうしたものかと考えた末に
本来、五・六階層だった『サンゴ草湿地』『血の沼地』を七・八階層に移動。
七・八階層だった『紅蓮洞窟』『溶岩地帯』を五・六階層に。
侵入者が未到達で情報が出回っていないのをいいことにそうした変更を行ったのです。
これにより三・四階層の砂漠、五・六階層の溶岩と水棲魔物には厳しすぎる塔構成にしたのです。
途中に『湿地』を入れて休ませるわけにはいきませんからね。
干からび、そして茹だって頂きます。
そして本来八階層の中ボスであった
ここを最終関門としました。七階層以降はろくにボスもいませんからね。攻撃に出しましたし。
問題はAランク眷属のルサールカ。水・闇属性の霊体です。
これは【赤の塔】では唯一無二の神聖・光属性の魔物。
ルサールカの天敵といってよいでしょう。これを
さて、敵方はそこまで辿り着けることができるのか……現在、五階層『紅蓮洞窟』を進軍中ですね。
――ドォン!
『うわあっ!』
ただ洞窟には罠が付きものですし、それで十分な戦果になります。
壁が迫って来るような罠はよくあるものですが、通路脇の溶岩に落とされるように迫って来ればどうか。
仮に<危険察知>を持っていても働かないでしょう。ダメージを与える類の罠ではないのですから。
しかし壁によって溶岩に落ちようものなら水棲魔物にとって致命傷。
斃すのに火魔法も剣も必要ありません。地形こそが最大の敵なのです。
ともかく防衛は問題なし。この分では六階層に何体いけるか、という感じでしょうか。
できれば
そして攻撃陣は……うん、こちらも問題なしですね。
シーサーペントは水魔法も優秀で、攻撃・体力共に巨体相応のものがありますが、こちらは全て空中戦力。
ブラ
ジータがお荷物になっているのが難点ですが……階段のほうに放り投げさせましょうか。邪魔でしょうし。
フッツィルさんが仰っていた「この塔はシャルかわしに向いている」というのは正しい。
特にフッツィルさんの鳥部隊であれば楽に攻略できるでしょうしね。
同じ要領で八・九階層のクラーケンも問題ありません。
相手が全て飛んでいるという状況を予測していないのですから。
しかしそれはリアクアさんを責められません。
なにせ侵入者は地上戦力だけですし、【赤の塔】の情報は「ジータが最大戦力で飛ぶ魔物はインプだけ」くらいのものでしょうし。
まぁ侮ってくれてありがとうございますと、感謝の言葉でもかけておきます。
◆
『はーいしゅ~~~りょ~~~! 【赤の塔】の勝ち~~~! 同盟四連勝おめでと~~~!』
よし。正直当初の予定ではもう少し苦戦すると思っていましたが終わってみれば完勝です。
とは言えホッとしますね。
『いやー、順調だねえ! 明日のシャルロットちゃんにプレッシャーになっちゃうかな! 楽しみだねー!』
まるで苦戦してくれとでも言っているようですわね、本当にこの神様は。
「ああ、神様、少々お聞きしたいのですが」
『んー? なにかなー?』
「水棲の魔物、例えばシーサーペントをわたくしの塔で召喚するのはどう思います?」
使う気はないですけれど一応聞いておきます。
そもそも水なしで生きられるものなのかが分かりません。
『一応は使えるよ。でもAランクがBランクになっちゃう感じかなー。水の中での強さを考慮してのランクだからさ』
「そうなるとただの大蛇ですわね」
『水魔法を使える大蛇って感じだねー。レッドワームとどっちがいいのかって、まぁ好みだよねー』
「なるほど、ありがとうございます。参考にさせて頂きますわ」
『まぁこれくらいならアドバイスじゃないから全然いいよ~』
わたくし的には十分アドバイスの範疇なのですがね。神様の基準ならば問題なしと。
やはり強い魔物だからといって徴用するのはダメですわね。
塔構成に見合った魔物を使ったほうがいいと。元々リストにある魔物を使うのが無難なのでしょう。
ただルサールカはどうしても欲しいですがね。
今回の報酬で召喚も考えていますが……もう少し我慢です。
『んじゃあとはジータくんの
通信が途絶えました。
漁っているのが英雄ジータというのがまた何とも言えませんわ。
■シャクレイ・アゴディーノ 30歳
■第489期 Aランク【傲慢の塔】塔主
――ピロン
『神様通信
本日行われた
【昏き水の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』
「……何をしているのだ、こいつらは」
昨日の時点でまさかとは思ったが、これで四日連続だ。
こうなると明日は【女帝】の出番になるだろうが……
ただの人気取りのつもりだろうが『同盟の利』を捨てているのも同じ。
わざわざ自分から苦戦する方向へ持っていく意味がどこにある。
これだから平民やら亜人やらは理解が出来ぬのだ。
粗暴で浅慮なゴブリンと思考が同じなのだな。これが同じ塔主かと思うと溜息しか出ん。
視界に入れるのも嫌悪するが外套の件もある。適度に相手にしなくては――
「おおっ! 麗しの君が勝利! これはちょっと花束でも買ってお祝いに行かねば――」
……こいつもこいつで理解できんし。
力があるから飼ってやっているというのに。はぁ、とりあえず部屋からつまみ出さねば。
■レイチェル・サンデボン 70歳
■第450期 Sランク【世界の塔】塔主
「これで四つ目。明日はシャルロットさんですか」
「よくやりますね。同盟で一対一の五連戦だなんて」
「さすがに私も聞いたことがありませんからね。暴挙と見られても仕方ないでしょう」
おそらくバベル五百年の歴史でもないと思います。
そもそも五塔同盟自体が数多くありませんし、ましてやそれぞれ
誘う方も誘う方なら、受ける方も受ける方です。
相手の考えもあるのですから五連戦など狙ってできるものではありません。
聞いてはいましたから今さら驚きませんが、どうやら周到に計画を練った上での申請だったようですしね。彼女たちなりに十分な勝算あってのことらしいですから心配はしていません。
ただ最後の相手は【強欲の塔】なのですよね。
「アドバイスなどは送らないで大丈夫なのですか?」
「おそらく問題ないでしょう。これもいい勉強になると思いますし」
「授業料が高くつかなければいいのですが……」
うふふ、セラは心配性ですね。
老人は若者の成長を見守るものなのですよ。
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