221:霧雨の塔との戦いに決着をつけます!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
【輝翼の塔】の七・八・九階層。その防衛戦は成功しました。
敵の攻撃陣はネクロトレント(★A)を斃そうと森の中でまとまって攻撃をし始めましたが、当然のように物理攻撃など効かず、魔法攻撃にしても敵方は闇と水魔法しか持っていませんのでネクロトレントには決定打となりません。
かといってネクロトレントの根や枝を使った攻撃も相手に刺さらないと。
泥沼化しそうな戦いでしたが、森の上から
森の中からヴィゾフニル(B)が。
そして後方から追いついた
ゴースト系の魔物は光魔法や神聖魔法の集中砲火を浴び、地上部隊はナイトメアクイーンを中心とした軍勢の前に沈みました。
ただヴァンパイアやアラクネが削られましたけどね。前に出すぎたのが原因です。
ちなみに「相打ちで構わん」と言われていたネクロトレントは生き残りました。本当にすごい防御性能ですね。
ともかくそんなわけで防衛は成功。
防衛陣は休憩したのち、【輝翼の塔】の一階層で待機するよう言いつけました。
これで終わりじゃないですからね。時間はもう夜になりそうですが……明日の朝までは戦いっぱなしでしょうから。
一方で【霧雨の塔】に攻め込んでいる攻撃陣ですが、一応順調には進めています。
エメリーさんは進軍速度を落としても
というのも【霧雨の塔】は上層に行くに従って、雨が激しく降っていたり、霧が濃かったりと普通に探索するだけでも困難なのです。
そこに攻撃陣にもいたファントム(B)などのゴースト系やミストリザード(B)、ポイズンボア(C)などが襲い掛かって来るので後続部隊だけでは危険だったと。
それで全体で布陣し直して、速度を落としてもちゃんと攻略しようとなったわけです。
それからも探索は続き、【霧雨の塔】の十三・十四階層に到着しました。
二階層分をつなげた階層――ここが最終決戦場のようです。
壁もなにもない、よくある大広間……そこにはまたも霧が立ち込めていました。
見通しが悪いと言っても森と違って遮蔽物のない階層ですから、多少は奥まで見られます。
待ち構えるのは攻撃陣にもいたD~Bランクの魔物の群れ。
スピリットレギオン(S)はさすがにいないようですが、スペクター(A)やスピリット(B)などのゴースト系はいますし、アシッドナーガ(A)、ミストリザード(B)、それにラミアクイーン(B)のラミア部隊もいます。総数は百体を超えるでしょう。
さらに最後尾に不穏気な三体の魔物。
一つは『霧のようなドラゴン』。ぼやけた感じで浮いています。
一つは『霧のような大獅子』。この周りがやけに霧が濃いですね。
一つは『赤い馬に乗った赤服の騎士』。これだけ毛色が違います。
三体とも固有魔物だと思います。騎士は別の塔からの報酬なのでしょう。
これに対して私たちは一塊で当たります。本来ならば部隊に分かれて個別に当たりたいところでしょうが、この霧ですからね。ある程度まとまった方がいいという判断なのだと思います。
襲い掛かる魔物を
パトラさんたちもラミアクイーン部隊から相手にしていました。
『こちらは任せましたよ! ハアッ――!』
しかしエメリーさんだけは突貫――。
さすがに危険と思ったのか魔竜斧槍の魔法を解禁し、四属性の範囲魔法を同時に使用。そのまま最後尾まで突っ込んで固有魔物を狙いました。
それはたまにしか見られない、エメリーさんの本気だったと思います。武器は魔剣ではありませんが。
私の知る限りでは【傲慢】同盟戦でルシファーを斃したあとに残った魔物を次々に斃していったあの時以来だと思います。【宝石の塔】でも見せていませんし。
それくらい、自分がどうにかしなきゃいけない状況だと判断したのでしょう。
最初に狙ったのは赤い騎士。近づいて分かりましたがどうやら悪魔のようでゴースト部隊の指揮官のようでした。
エメリーさんはそれを一蹴。素早い動きからハルバードの四連撃を浴びせ即座に斃します。
速度を維持したまま次は霧の大獅子へ。
どうやらこの魔物は霧を発生させる能力を持っていたようです。身体からは常に霧が放出されていました。
霧に隠れて姿を消す……その上で獣の俊敏性と攻撃力を持つという魔物なのだと思います。
エメリーさんは<気配察知>を使いながら攻撃していたと思いますが、同時に霧のドラゴンも仕掛けてきました。
おそらくザリィドさんがエメリーさんを集中して狙うよう指示を出したのだと思います。
固有魔物二体が相手でも普通に戦えればエメリーさんが負けるとは思えません。それくらい動きが速いですし。
しかしドラゴンは身体が霧で出来ているようでハルバードの斬撃が全く効かないのです。
見た目は全く違いますが【死屍】の魔物にいたゴーストドラゴンと似たような感じです。
こうなるとエメリーさん一人では分が悪い。
そこでエメリーさんはターニアさんを呼んで、二人で戦うことにしたのです。
エメリーさんは魔竜斧槍の魔法で、ターニアさんは様々な魔法を駆使して。
魔物は全てエメリーさんを狙ってきているようで、ゼンガーさんたちも攻撃し放題となり、当のエメリーさんはこれ幸いと避けながら延々と攻撃を加える。
ターニアさんもハイフェアリーのフォローをしなくても攻撃に集中できるとあって、逆に戦いやすくなりました。
結果、ごく僅かな犠牲を出しながらも討伐は完了。
その足で最上階へと向かいます。
布陣は【傲慢の塔】の時と同じように、エメリーさんが前、後ろにターニアさん、さらに後ろにゼンガーさんで。
ザリィドさんは玉座から立ち上がって待ち構えていました。
絶望で無気力、というわけではなく明らかな敵意をむき出しにして。
「くそが……ふざけんじゃねえぞコラアアアア!!!」
剣を振りあげながらの突貫。それは私の目から見ても″強者″とは言えない攻撃だったと思います。
エメリーさんは当然のようにハルバードで迎撃……とはできませんでした。
斬られたザリィドさんの身体が本当の霧のように霧散したのです。
一瞬の静寂に包まれた次の瞬間――
「死ねやオラアア!!!」
エメリーさんの背後からいきなり剣と腕が飛び出て来ました。
霧となった身体をその位置で固めた、ということなのでしょうか。
それは確実に虚を突いたものとなり、エメリーさんを斬りつけ……というのも無理ですね。
いかに背後をとろうとも、いかに虚を突こうとも、大声を出してそのまま攻撃なんてエメリーさんに通用するわけがありません。
もしかしたら<気配察知>で分かっていたのかもしれませんが、とにかくエメリーさんはザリィドさんの攻撃を避け、そのまま魔竜斧槍の魔法を行使。
さらにターニアさんの攻撃も加わって、ザリィドさんは断末魔すら残さず、霧の身体のままに消え去りました。
限定スキルだったのは間違いありません。
使用条件は分かりませんが普通に使えば密偵や暗殺に向いているスキルなのでしょう。
その力を過信したのか、気が動転していてミスしたのか、ザリィドさんの最後の攻撃は無残なものとなったようです。こちらとしては助かりました。
「お疲れさまです、エメリーさん! 皆さん! お身体は大丈夫ですか!?」
『お疲れさまです、お嬢様。接収後に帰還します。眷属は問題ありませんが配下に疲れが見えますのでご承知下さい』
「分かりました! こちらでも話し合っておきます!」
これで二塔目の攻略。さすがにクイーンの配下は体力と魔力がキツイでしょうし、クイーンの皆さんも色々と消費はしているでしょう。
エメリーさんの言を信じるならば眷属は大丈夫とのことですが……本当は少し休ませてあげたいのですがね。
一応の予定は決まっていますがアデルさんとドロシーさんに相談してから細かいところを決めますか。
あとは【青の塔】と【魔術師の塔】。
これを攻略するためにもう少し、皆さんには頑張って頂かねば……。
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ちなみにザリィドの限定スキル↓
<雨集霧散>:自身の身体を雨と霧に変える
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