222:残りが二塔になりました!
■ケィヒル・ダウンノーク 50歳
■第483期 Aランク【魔術師の塔】塔主
【霧雨の塔】が攻略された。
こちらは一塔も落せていないのにも拘わらず、二塔も失ったのだ。
【宝石の塔】は落ちるのが速すぎたが【霧雨の塔】はその倍ほどの時間を掛けられたと思う。
メイドの蹂躙っぷりを考えれば足止めできたと言えるのかもしれんが、それでも順調すぎる攻略であったのは否めない。
ザリィドの画面を共有して見てはいたが、やはりメイドの力が全てに起因しているのは間違いないだろう。
驚いたのはあの黒いハルバードだ。
最終局面、あのメイドはハルバードから四属性の
触媒を持っていない以上、あの異世界製のハルバードが魔法を放てる代物と見て間違いない。
【宝石の塔】でジュエルヒュドラなどをいとも簡単に斬っていたことから、武器としても相当な業物に違いないのだが、それに加えて魔法も放てるとなると……一体このメイドはどこまで規格外だというのだ。この世界の理がまるで通用しない。
ともかくこれで塔の数は二対四となり、【女帝】と【輝翼】が自由の身となった。
魔物も削ってはいるし連戦による消費はあるだろう。(メイドが疲労する存在かは分からないが)
とは言え休ませるような真似は極力しないだろうし、即座に援軍に来るものと思われる。
【魔術師の塔】か【青の塔】、どちらに攻め込んでくるものか……。
これはもう攻略よりも防衛を固めてメイドの討伐に専心するしかあるまい。私もコパンもな。
確実に潰したのちに攻略だ。これしかない。
『ケィヒル様、ベンズナフを引き戻します』
【青】の攻撃陣は【忍耐の塔】の上層、あと一息というところまで進軍していたはずだ。
その状態でも戻すと。それで攻略に失敗してもメイドに攻められるよりマシと見たか。
「分かった。であればメイドの処理はベンズナフに任せる」
『はい。そちらに行くかもしれませんので、その際はお願いします』
こちらはすでに防衛陣を整えている。
出来るだけ周りの雑魚を削って、その上で【魔術師の塔】の上層までメイドを引き上げれば確実に勝てるのだ。
戦力を固め、限定スキルを使う。その準備はすでに終わっている。
【赤の塔】の攻略は進んではいるが今すぐにとはいかん。
赤い霧と、それを隠れ蓑にした魔法斉射が激しく、一方的に攻撃されながら徐々に進軍することしかできないのだ。
まさか劣る戦力でここまで策を講じてくるとは……アデル・ロージットめが忌々しい。
いずれにせよ、出来るだけ敵戦力を削り、出来るだけ攻略しつつ、焦点は防衛に当てるしかあるまい。
そう思っていた矢先、敵の塔に変化があった。
【赤の塔】一階層で見張らせていた魔物の視界に、援軍の姿を確認したのだ。
――メイドだ。
メイドとフェアリーのクイーン、ただの二体だけ。
それが【赤の塔】に侵入するなり、ものすごい速さで一階層を駆け抜けていく。
つまり援軍の先は【赤の塔】か……! 問題は【赤】がどちらの塔を攻めるつもりなのかということだが……。
と考えていた時、画面のコパンが叫ぶ。
『ケィヒル様! 【忍耐の塔】に例の
「なにっ!? では【女帝】と【輝翼】で援軍先を分けたというのか! それは出来ぬと神の立ち会いで確約したではないか!」
『いえケィヒル様、それは【世沸者】と【六花】に限った話です! その二塔に関しては属した先を変えることは出来ないと……ですから【輝翼】に属した【女帝】が【輝翼】と同じ塔に属す必要はないのです!』
なんだと!? そんな馬鹿な! そのような抜け穴を……と言うかコパンも気付いていたのならば先に言えばよかろう! なぜそのような大事を言わぬのだ! 全く使えぬ男よ!
……ともかくこれで【女帝】【赤】【六花】の組と【忍耐】【輝翼】【世沸者】の組に分かれたわけか。
【赤の塔】にフェンリルがいて、【忍耐の塔】にリッチがいたから間違いあるまい。
二組がともに攻撃に回せるだけの余裕を得た。
ならばどちらが【魔術師の塔】に来るのか……まずはそれを見極めねばなるまい。
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
『シャルロットさん、エメリーさんの体力は大丈夫ですの?』
「私も心配したのですが全然大丈夫みたいです。ご本人はやる気ですね」
『ありがたいですわ。でしたらまずエメリーさんとターニア様を防衛の援軍にお願いできますか』
【女帝の塔】が次に属するのは【赤の塔】。そして攻め込む先は【魔術師の塔】です。
当初の予定では【輝翼】の時のように攻撃と防衛で分けてそれぞれ魔物を送り込む……というつもりだったのですが、アデルさんの案でそれは取りやめました。
理由の一つは【赤の塔】と【忍耐の塔】の防衛が予想以上に上手くいっている為。
相手が攻略よりも防衛を優先しているからというのもあるそうですが、もっとギリギリの防衛を想定していたそうです。
もしくは、最悪を想定した場合、どちらかがすでに攻略されているとも。
そうなっていたら話は全く変わっていたのだと思います。
もう一つは私の部隊を少しでも休ませる為。感謝ですね。
それでもエメリーさんとターニアさんは休まずに協力して欲しいということで、お二人だけで【赤の塔】に行ってもらいました。
あのお二人なら誰より速く塔を走破できますからね。きっとすぐに追いつけます。
アデルさんの案は【赤の塔】を防衛しきる、つまり敵攻撃陣を完全に殲滅してから【魔術師の塔】の攻略に乗り出すというものでした。ですからその時まで休んで下さいと。
【魔術師の塔】の攻略にはジータさんやクルックーなども連れて行きたいということで、その戦力を出す為にも防衛しきる必要があるということですね。
【忍耐の塔】のほうも同じような感じで、ゼンガーさんとフィルフだけを防衛の援軍に回し、その他の戦力は小休止。
敵攻撃陣を殲滅してから【青の塔】に乗り込むようです。
ベンズナフさんという
ということで私はエメリーさんとターニアさんの様子を見つつ、【魔術師の塔】攻略に向けての戦力を布陣させておきましょう。
ナイトメアクイーンはどうしましょうかね……働きすぎですしヴァンパイアも何体か斃されていますし……。
本当はお留守番にさせたいのですが、きっと戦いたがりますよね……どうしましょうか。
■ドロシー 24歳 ドワーフ
■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主
【青】の攻撃陣は六階層の『砦』で三つのルートに分けられた。
右ルートに入ったベンズナフとコボルトキング部隊は罠だらけの道に入ったが、ベンズナフがいたせいでその罠も全くの無意味になった。
道は直線の最短ルートだからボス部屋に抜けるのも一番早い。
本来ならばここに配置しているボスと戦うんやけど今回の
中央ルートに入った主力部隊は大部屋でこちらの大部隊との乱戦になった。
ウチが配置していた魔物は全滅。
ライアンだけではなくサンダーファング(A)やアサシンリンクス(C)など一体しか召喚できない魔物も軒並みやられた。
そうしていくらか減った部隊は大部屋を抜けてボス部屋に入る。そこでベンズナフらと合流した。
左ルートに入った残りの雑魚部隊は迷路じみた砦構成の道に入ったが、そこにはノノアちゃんの
敵はBランクが五体とCランクが三十体だけ。
リッチ三体とデスリーパー(A)だけでも過剰戦力や。ここは問題なく殲滅完了。
左ルートの全滅を眷属伝達で聞いていたであろうベンズナフは、中央ルートから出てきた部隊と合流し、すぐに七・八階層『大広間』へと進軍……というところで【霧雨の塔】が攻略された。
ベンズナフは七階層の転移魔法陣を使ってすぐさま帰還。部隊は残された格好や。
なぜ全ての部隊を引き上げなかったのかとウチは疑問に思った。
ベンズナフを戻すっちゅうことは攻略を諦めるのと同義や。戦力も削れてるし、こっちにウリエル(★S)やらいるのは知っとるはずやし。
考えた末に出した結論は二つ。
一つはすぐに【青の塔】を攻めさせない為。ウチかアデルちゃんのどっちが【青の塔】に攻めるかは分からんはずやけど、ここまでの戦況を把握すれば【忍耐】が来るだろうと予測はできる。
せやからその攻撃陣を遅らせるために自分らの攻撃陣を【忍耐の塔】に残した。
もう一つはウリエルや
残した部隊と戦うんはスクイッシュドラゴン(★A)とか
だからこそそれを見ようっちゅう魂胆なんかなと思った。
まぁこちらは【青】がどう動こうが、ベンズナフがいようがいまいがやることは変わらん。
七・八階層で一気にケリをつけるつもりや。端からな。
いつもは九階層に配置しているウリエルやキラリンたちも全てを七・八階層に集めて敵に当てる。
さらに敵の背後からゼンガーさんとフィルフが駆け上がってくるし、六階層からディーゴの部隊も援護に入る。
相手はAランクと飛行系魔物の多い陣容やけど、これだけの戦力で前後から詰めれば確実に勝ちや。
ベンズナフがいればいくらか主力がやられたとは思うけど、それでも勝ちは変わらんかったと思う。
勝てる戦いなら完勝を目指す。下手に削られるわけにはいかん。
敵部隊を殲滅したら今度は【青の塔】に攻めなあかんからな。
その時に部隊をどう編成するか今から変えておかんと……フゥとノノアちゃんと要相談やな。
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