235:忍耐の塔と輝翼の塔もテコ入れしています!



■ドロシー 24歳 ドワーフ

■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主



『ちょっと皆さん! 想像以上に酷いんですが! 何ですかこの人の波は!』


『わたくしたちが揃ってお休みですから仕方ないでしょう。今日一日はたっぷりTPの恩恵を享受するといいですわ』


『そんなこと言ったって……ああっ! もう三階層に!』



 【魔術師】同盟との一戦から一夜明け、ウチの【忍耐の塔】は三連休。

 【赤】【輝翼】も休みっちゅうことでCランクで営業しとるのは【女帝の塔】のみや。


 そら混むやろ。想定が甘かったシャルちゃんが悪いわ、それは。



 ただシャルちゃん以上にシルビアちゃんがパニクっとる。こっちは想定が甘くなってもしゃーない。初の同盟戦ストルグ後やしな。

 普通に喜んどるんはノノアちゃんくらいのもんや。あそこはむしろもっと攻略されたいって感じやからな。



 と、そんな侵入者情報は二の次や。

 シャルちゃんからの本題は新たな眷属を紹介したいっちゅうことやった。


 昨日・一昨日の一戦でヴィクトリア、パトラ、ラージャと三体もの眷属を一気に喪った。シャルちゃんは悲しかったやろな。ウチも気持ちは分かるつもりや。


 でもすぐに気持ちを切り替えて眷属を増やしたんは塔主として立派やと思う。

 悲しかろうが辛かろうが怖かろうが塔は運営させなあかんねん。それがバベルの塔主ちゅうもんや。



 で、どんな感じになったかと聞けばナイトメアクイーンバートリウィッチクイーンベアトリクスを眷属化し、海姫ハルフゥも召喚・眷属化したらしい。めっちゃTP使いよったな。


 召喚報酬で海姫ハルフゥを選んどったからまさかとは思ったが早速召喚しよった。

 まさか【女帝の塔】に海階層を創る気なんか? どうするつもりやろ。


 ともかくこれでシャルちゃんの眷属はSランク固有魔物が三体、Aランクが一体というとんでもない陣容になった。


 おまけにエメリーさんまでおるんやから、もうBランクをすっ飛ばしてAランクでもええんとちゃうかと思う。

 次の塔主総会が楽しみやな。とりあえずBランクは確定で間違いないやろうし。



 と、そんなふうにシャルちゃんが動いててウチがなにもしないわけにはいかない。

 こっちはこっちで色々考えなあかん。



「一先ずは塔主戦争バトルで喪った魔物の補充ですか」


「せやな。とりあえず塔の防衛に使った五階層までの魔物は確定。それとミスリルゴーレムとか天使もやな」


「お手数おかけします、ドロシー様。私が不甲斐なかったばかりに……」



 ウリエルもスフィンクススフィーも部隊を減らしすぎて申し訳ないみたいなことを言うけど、そんなことはあらへん。

 あれだけの敵が相手やったんやから仕方ないし、責があるとすれば相応の魔物を用意しなかった塔主のほうや。


 まぁそんなことも言えんから二人には労うことしか出来ひんけども。よくやったで、とな。



 で、問題は六階層の『砦』や。

 ライカンスロープライアン率いる亜人・獣部隊の全滅。これが痛い。

 六階層の防衛もそうやけど、攻撃陣の地上部隊も想定していたからそれが丸ごと消えた格好や。


 やろうと思えばキラリンを攻撃地上部隊の指揮官に置くこともできるけど、キラリンの場合は本質的に守備やしな。ゴーレム部隊は足が遅いから本当ならあんまり攻撃で使いたくないねん。



「で、ウィッチクイーン(A)を召喚候補にしたのですか」


「地上部隊ではなくなってまうけどな。他に小柄な指揮官ちゅうたら【霧雨】んトコにいた【魔公爵ベリト(★A)】しかめぼしいのがおらん。でもそいつ悪魔やし」


「私の部隊と攻防で分けるならば使えるとは思います」


「ウリエルは本質が守備やけど攻撃から外すわけにはいかんで。そしたらベリトが防衛になるし、防衛やったら小柄な指揮官に縛る必要もないやろ」



 ウリエルは防衛の切り札でもあるけど、相手の塔に攻め込むとなったら絶対に必要になる。

 神聖魔法もそうやし指揮官としても優秀やからな。だから外せんのよ。


 ちなみに他にもラミアクイーン(B)とかスキュラクイーン(A)とかがいたけど……ウィッチクイーンのが良さそうやろ?

 せやから攻撃の指揮官にウィッチクイーンを置こうと思うとる。

 元々ウチには魔法部隊なんかおらんしな。弱点の補強にもなるし。



 ただ六階層をウィッチクイーンとハイウィッチの部隊だけに任せるかと言われるとそれも違うかな、と思う。

 砦の左ルート――ノノアちゃんの部隊に守ってもらってたトコやな――にウィッチ部隊を配置するんならアリやけど、中央の魔物部屋とかボス部屋とかやとピンとこないんよな。



「ボス部屋にスクイッシュドラゴン(★A)を置いて七・八階層を別の魔物に守らせてもよいのでは?」


「でしたら魔物部屋にリザード系を置くのもアリかと思います。地竜の配下として」


「それはかなりアリやな」



 リザード系の魔物は今回の塔主戦争バトルでいっぱい斃してるから召喚可能数はどれも多い。

 【宝石】のルビーリザード(B)、サファイアリザード(B)、エメラルドリザード(B)とか【霧雨】のミストリザード(B)とか【魔術師】のファイアリザード(B)、バーンレックス(A)も一応リザード系ではあるか。


 リザード系じゃなくても蛇系もたくさんいるな。AランクからCランクまで。

 地竜も蜥蜴も蛇も同じ爬虫類みたいなもんやろ。多分。



 ただ塔主戦争バトルの攻撃陣で使うにはどうかなって感じやな。

 Bランクのリザードにしても身体は大きいから攻撃には向かんかもしれん。


 【打突の塔】の報酬の巨人系とかもいっぱい残ってるけど――ヘカトンケイル(★A)とかトロールキング(A)とか――それやったら体格的にあんまり変わらんと思う。


 他には【霧雨】のゴースト系ちゅう選択肢もある。誰も選んどらんしな。

 スピリットレギオン(S)、スペクター(A)、ファントム(B)などなど。数は多いし質も高い。



「ウリエル、ゴースト系はどうなん?」


「悪魔ほどではありませんが相性が良いとは言えないです。ゴーストも一応はアンデッドですから」


リッチディーゴ殿もウリエル殿を避け気味でしたしね……」



 せやった。確かにノノアちゃんが連れて来たディーゴもウリエルに近づこうとはせんかったな。

 ノノアちゃん曰くディーゴは頭脳派で理性的らしいし、共に戦うんなら拒絶はしないやろ。

 それでもアンデッドとしての本能が天使を避けたんかな。

 であればゴーストも止めておいた方が無難か。



「そしたら六階層はウィッチクイーンとハイウィッチ部隊、それとスクイッシュドラゴンとリザード部隊に任せよう。一旦はこれで決まりや」


「スクイッシュドラゴンが抜けた七・八階層はどうしますか? 報酬で頂いたダイアモンドタートル(★A)ですか?」


「いや、ダイアモンドタートルを置くならやっぱり六階層やな。七・八階層は天井高もあるし、せっかくなら大きめの魔物にしたいな。それこそ守りの要って感じのを」



 守りをスクイッシュドラゴンとそいつで固めれば、それこそ攻撃にスフィー、ウリエル、キラリン全部出せる。ウィッチ部隊は攻防どっちで使ってもいいしな。



「大きめの魔物……まさか玄武ロックタイタス(★S)ですか?」


「正直惹かれるけど60,000TPやで? 眷属化までしたら120,000TP……ああ、まぁ可能っちゃ可能なのか。でもウチが考えてたんは巨兵ティターン(S)のほうやな。これなら20,000TPで済むし」


「眷属化はどうしますか」


「うーん、喋れるかどうかとデカさによるなぁ。いずれにせよ眷属は指揮官にしたいな」



 Sランク固有魔物の玄武ロックタイタスを召喚するなら眷属化は義務みたいなもんやし、そこまでやってまうとTPが空になって他があんま召喚できんからな。


 ウィッチクイーン、ハイウィッチ、リザードと召喚してその残りからとなると巨兵ティターンが妥当かなと思う。



 というわけで次々に召喚していった。

 ウィッチクイーンはシャルちゃんトコのと似てるけど別人やな。やっぱ個体差あんねんな。

 無口・無表情なのは変わらんけど。


 で、巨兵ティターンも召喚してみたけど……魔法陣から出てきた時、最初はただの岩山かと思った。5mくらいある黒っぽい岩の塊。

 よくよく見たら人型の岩巨人がしゃがんでるだけやったわ。

 どんだけデカいねん!!


 これはもう七・八階層の番人に決定やな。立って戦おう思うたら一階層分じゃ無理や。そこにしか置けん。

 ゴーレムの上位種扱いなのか全く喋れんし。

 もう七・八階層はこいつとスフィーの部隊だけで十分かもしれんな。下手に配下は置かんほうがいいやろ。



 あ、ちなみにライアン代わりの眷属はウィッチクイーンに決定した。

 名前はフワリンや。ふわふわ浮いとるし、ええやろ。





■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 51歳 ハイエルフ

■第500期 Cランク【輝翼の塔】塔主



 なんかどこもバカスカ召喚やら眷属化やらやっておるのう。

 まぁ報酬TPが大量じゃから一気にテコ入れしたくなる気持ちも分かる。

 しかしわしのトコは召喚報酬を選んだ段階で決めておったから特に悩む必要もない。


 【青の塔】にいた【翼人将イカロス(★A)】じゃな。元々は別の塔の固有魔物だったとは思うが。


 これを召喚・眷属化し、眷属枠が埋まった格好じゃ。

 空を飛べる人型の指揮官というのは喉から手が出るほど欲しかった人材じゃからのう。即決じゃよ。

 名前はそのままイカロスとした。



 それと四属性の高位精霊、炎貴精サラマンド(A)、陸貴精ノーマ(A)、天貴精マルト(A)、空貴精シルフス(A)も召喚した。

 最上階の精霊たちが賑やかになって来たのう。ゼンガー爺ではないがわしも嬉しくなってくる。



 あとは塔主戦争バトルで減った魔物を補充して一旦は様子見じゃな。

 準備段階でネクロトレント(★A)を召喚したからTPも空じゃったし。残しておきたい気持ちもある。


 かねてより計画していたククルカン(★A)も召喚しようと思えばできるが、そこまで逼迫してないしのう。

 ネクロトレントを召喚しイカロスを眷属とした今となっては置き場にも困るといったところじゃ。



「ほっほっほ。とりあえず人語を介せる魔物が初めてですしよろしかったのでは?」


「うむ、そうじゃな。イカロスよ、頼んだぞ」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」



 うーん、好青年といった感じじゃな。思いのほか爽やかで逆に違和感がある。

 ゼンガー爺と並んでいるからかのう。


 あまり変態に近づけないほうがよいかもしれぬ。染まらせるわけにはいかんぞ。



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