211:同盟戦、始まりました!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
魔物も召喚しましたが目立った魔物は召喚せず、既存の魔物の数を増やしたりといったところです。
敵が強いことを考えればSランクの魔物や固有魔物を召喚したかったところですが、さすがにそこまでTPを溜めこむことは出来ませんでした。
あと二~三ヶ月の猶予があればヘルキマイラ(★S)か最低でもケルベロス(S)+オルトロス(A)くらいはいけたと思うのですが……厳しかったですね。
その代わりにユニコーンとヴァルキリーを二体ずつ召喚したり、といった感じの戦力強化になったわけです。
同盟の皆さんもそれぞれTPをギリギリまで削って召喚したり塔を弄ったりと忙しなく準備を行いました。
また、ノノアさんは【忍耐の塔】に、シルビアさんは【赤の塔】に属する形に決めたので、それぞれの塔に行っています。
最上階で並んで指揮するわけですね。私は独りぼっちですが。
お二人が属する同盟塔に赴いて指揮するというのは神様との立ち会いで決めたことでもあります。
こうすることで私たちには連携面でのメリットがあり、同時に危険度も増すことになるので、ある意味″平等″ということなのでしょう。
仮に【忍耐の塔】が攻め込まれてドロシーさんが斃されでもすれば、同時にノノアさんも死にますし【世沸者の塔】の戦力も失うわけです。
元々『【世沸者】と【六花】も勝敗が適用される』という内容でしたが、その適用のタイミングが『属した塔の勝敗決定時』になったわけですね。細かい仕様ですが明確にしたと。
ともかくお二人は属した塔の戦力として配置し、これで私たちは準備完了となりました。
フゥさんには相変わらず【宝石の塔】を探ってもらっていますが、今のところ私たちの塔の情報が漏れた気配はないとのこと。
メルセドウの方が気掛かりなのかこれから探るつもりなのかは分かりません。
まぁメルセドウの方だけ覗き見していてくれているのであればありがたい話です。
ターニアさんに見てもらっている限りではまだ動きはないようですし、限定スキルも使うだけ無駄になるでしょうからね。
願わくばずっとヤキモキしていてもらいたいものです。
「皆さん、そろそろ時間ですが準備は大丈夫ですか」
『大丈夫ですわ』『おお!』『うむ』『は、はい!』『問題ありません』
「ではよろしくお願いします! 【
『『『『【
『!? ブ、【
画面越しに左手首の組紐を見せ合って、号令をかけました。
シルビアさんが惑っていましたが……まぁいいでしょう。
「エメリーさん、そちらは準備大丈夫ですか」
『問題ありません。お任せください』
「くれぐれもお気をつけて、ご武運を。そして【女帝の塔】に勝利を」
『はい。【女帝の塔】に勝利を』
一階層の転移門に布陣したエメリーさんに声を掛けました。
今、攻撃陣として布陣している眷属はエメリーさんだけですからね。伝達できる相手がエメリーさんしかいません。
他の皆さんには総指揮官であるエメリーさんから号令をかけてもらいましょう。
そうこうしているうちに二の鐘が鳴りました。
――カラァン――カラァン――
『はーい準備はいいかなー! 始めるよー!
私は再度エメリーさんに声を掛け、同盟の皆さんとも画面越しに声を掛けつつ、転移門へと向かっていくエメリーさんたち攻撃陣を見送ります。
逆に転移門から侵入してくるのは、情報通りに【宝石の塔】の軍勢。
と言ってもD~Cランクの魔物が三十程度。指揮官はBランクのミスリルゴーレム。
良く言えば『先遣部隊』なのでしょうが、悪く言えば『とりあえず侵入させただけ』という感じです。
明らかに攻める気がない。とても『攻撃陣』とは言えませんし『軍勢』でもありません。
これはスルーでいいですね。下手にこちらの防衛陣を戦わせて削られても無駄になるだけです。
適切な場所で遠距離から魔法を撃つか、罠で対処すればいいでしょう。
視線を他の塔へと移します。
やはり【赤の塔】には【魔術師】、【忍耐の塔】には【青】、【輝翼の塔】には【霧雨】とそれぞれの攻撃陣が入っているようです。
しかしその攻撃陣も【宝石】と同様に先遣程度の少ない部隊。
『フッツィルさん、ドロシーさん、第二陣がおそらくすぐに来ますわよ!』
『先遣が待っての合流か、進ませてからの合流か、いずれにしても苛烈な侵入になるのは間違いない。押し負けるでないぞ!』
『おお! そっちも、って言うかアデルちゃんは特に頼むで! 絶対死守や!』
エメリーさんたちが向かったのは【宝石の塔】です。
だから【宝石】は守りを固める。もうこれ以上攻撃陣を私の塔に侵入させては来ないでしょう。
逆に他の三塔は攻撃の手を強める。
エメリーさんが自分の塔に入って来ないと分かれば、なるべく早く攻略しようと攻撃陣を厚くするはずです。
眷属や指揮官級の魔物と高ランクの魔物を組み合わせた攻撃陣を送り込んで来るに違いありません。
アデルさん、ドロシーさん、フゥさんはそれに対して全力で守ることを第一としています。
見るからに気合いが入っていますし、それは【傲慢の塔】同盟と戦った時と同様に見受けられます。
耐えて耐えて、私が【宝石の塔】を攻略するのを待つ。反撃はそれからです。
相手がどこの塔を攻めるか分かってから、私たちはどう攻めようかと議論を重ねました。
私が【魔術師の塔】を攻めるというのも考えました。一番戦力を持っている【魔術師】に対して抑止力となる為にエメリーさんを送り込むという作戦です。
しかし、いかにエメリーさんを組み込んだ全力の攻撃陣を作ったところで【魔術師の塔】を攻略できるのか、という疑念と、仮に攻略できたとしても時間が掛かり過ぎて、その分皆さんの塔に危険が生じるという恐れもありました。
ならば早々に【宝石の塔】を攻略し数的優位を作る。
その間皆さんは防衛に徹し、私が援軍に回るのを待つ――という作戦にしたのです。
一番シンプルではあるのですが、特に【赤の塔】は【魔術師】の攻撃陣に延々と攻められることになりますから厳しいのは間違いありません。
アデルさんは色々と対策をし本人も「大丈夫ですから任せて下さい」と仰っています。
ドロシーさんもフゥさんも相手は格上ですから厳しいのは変わりません。
しかし私は皆さんを信じて【宝石の塔】をなるべく早く攻略するしかないのです。
『遅れずに付いてきなさい! 隊列を乱さないように! 二人とも頼みますよ!』
『ああ、任せろ!』『ん……』
【宝石の塔】に乗り込んだのは総指揮官のエメリーさん、ナイトメアクイーン(★S)とヴァンパイア(A)が十体、ウィッチクイーン(A)とハイウィッチ(B)が十体、ハイフェアリー(C)が二十体、ユニコーン(B)とヴァルキリー(B)が五体ずつ。計五十二体と一人です。
これは【宝石の塔】を攻略後に次の塔を攻める為、他の戦力を温存・隠匿するという理由もあるのですが、第一は『攻略速度』を重視した結果です。
私の戦力の中で一番速いのがエメリーさん、次にターニアさん、その次にナイトメアクイーン、ウィッチクイーンと続きます。
ターニアさんは温存ということですね。
ターニアさんの存在自体はバレているでしょうが
だからこそ温存・隠匿しつつ、【宝石の塔】攻略用の攻撃陣を作ったのです。
【宝石の塔】は【忍耐の塔】と同じような屋内型構成の多い塔。
罠は多く、迷路のように入り組んでいるわけですが、こちらにはすでに【宝石の塔】の情報がありますし、エメリーさんが先頭を行けば罠もすぐに分かります。
当然攻略は足早になりますし、それに付いていける為の攻撃陣が必要なのです。
これでノービアさんが罠と地形を駆使するような頭の持ち主だったら話は別なんですけれどね。
ドロシーさんのように凝った創りなどそうそう出来ないのですよ。
こう言っては失礼ですがノービアさんとドロシーさんでは地頭の良さが違います。
おそらく【宝石の塔】でも【忍耐の塔】と同じような塔構成に出来るはずですが、その差は見るからに大きい。
私には身近にドロシーさんがいる分、余計にそう感じるのかもしれませんが【宝石の塔】が″攻略困難な塔″には見えません。
ただ十年以上も保っている塔には違いありませんから、相応に戦力は充実しています。
固有魔物はSランクとAランクの二体を召喚しているようですし、他にもAランクが何体もいます。
その上
それでも【忍耐の塔】の戦力といい所五分ですがね。ウリエル部隊を考えれば【忍耐】のほうが有利かな、といったところです。
総合的に見れば【宝石の塔】より【忍耐の塔】のほうが確実に上。
だからこそ私たちは早々に攻略しなければなりません。
一刻も早く皆さんの手助けをしなければ……!
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