63:祝勝会からの、お次の出番です!
■シャルロット 15歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
『かんぱーい!』
ノノアさんの
バベリオの街中にある高級そうなお店です。お酒がメインですがお食事もできると。
私たち五人以外にエメリーさん、ジータさん、今日はゼンガーさんも一緒です。
私とノノアさんはお酒が得意ではないので果実水です。エメリーさんも最初の一杯だけですね。
しかしお酒がなくともお食事が美味しい。
お肉やお野菜に様々なソース。複雑に混ぜ合わせたようなソースはいかにも高級で繊細な味付けです。
エメリーさんなら真似できるんですかね。材料さえあれば。
さすがフゥさんセレクトのお店です。
ちゃんと個室ですし貴族のアデルさんがいても何の違和感もありません。よくこんな素敵なお店を見つけましたね。
フゥさんよりもファムを褒めるべきでしょうか。
作法なども気にせずわいわい話しながらのお食事。とても楽しいです。
アデルさんは喋るたびにナイフとフォークを置きますけどね。なるほどこれがマナーですか。勉強になります。
皆さんと一緒にいるとついつい素が出てしまいますが日頃から【女帝】を意識すべきですからね。
お話の内容はやはりノノアさんの
主に相手方――ピスタチオさんへの愚痴みたいなものですね。故人を悪く言うのは気が引けるのですが……。
「いや、それはそうやけど、あれはないやろ。もうちょっと進んでもらわんとノノアちゃんの経験にもならんやん。【世沸者の塔】は『侵入者がどう探索するか』を知るのが一番重要なんやから」
こちらが「これなら大丈夫」と思って創ったギミックでも意外とすんなり解かれてしまう場合がありますし、逆に「こんなヒントすぐ見つかっちゃうんじゃ」と思っていたのに全然気づかれない、なんてこともあります。
製作者と探索者の思考の違い、と言いますかね。
謎解きの内容を知っている私たちと何も知らない侵入者では見方や考え方が違うのです。
そういう意味では
普通の侵入者とは違い、物量で攻め込んできますし、負ければ死ぬのですから無理矢理にでも必死に謎解きするわけです。普段の侵入者以上に。
しかし結果は一階層も突破できず……これでは普段の侵入者と大差ありません。
「戦果のTPはいかがでしたの?」
「えっと、10,000TP弱というところでしょうか……」
「「「少なっ!」」」
オープン前の【正義の塔】でさえ12,000TPくらいでしたからね。
いえ、あのラスターさんは皇子様ですからお金をつぎ込んでいたってことですかね。
それでも少ないと感じてしまう私たちはどうも【力の塔】とかの印象が強く残っているようです。
「魔物につぎ込んでいたってところかのう。FランクにしてCランクのウェアウルフを眷属にしていたようじゃし」
「コボルトも多かったですしね。あとハイコボルトですか」
「回復はともかく魔法戦力さえないというのは理解しがたいですわね」
【猟犬の塔】の戦力はウルフ系、コボルト系、そしてウェアウルフが一体。
素早さや攻撃力はあるのでしょうが近接物理しかないのには違いありません。
魔法を使えるウルフ系とかもいそうですけどね。ランクが高いのでしょうか。
「ノノアさん、ウェアウルフは召喚するんですか?」
「えっと、そうですね。眷属にするかは悩んでいますがとりあえず召喚はしておこうかと」
「待ち望んだスライム以外の魔物やもんな。ハイコボルトは?」
「は、はい、そっちも一応召喚します。合わせてボス部屋に配置しようかなって……」
「ボスか。どこかの部屋に押し込んでも罠のようで面白そうじゃがな。今は他に適切な魔物もおらんし仕方ないか」
報酬の魔物は一回ずつしか召喚できませんからね。言い方は悪いですが″使い切り″です。
配置は悩みどころですね。侵入者と戦わせるなら最終防衛か絶対に討伐TPが狙える場所になるでしょう。
私は九階層の多角形の部屋に番人として置いていますがね。シルバーファングとか。
得られたTPは少ないかもしれませんけどノノアさんが
魔物もそうですが経験もそうでしょう。初めての
祝勝会はそれからも続き、終始和気藹々とした雰囲気で終わりました。
ジータさんなんかずっとお酒を飲んで上機嫌でしたね。ドロシーさんも。
やっぱり私たちの同盟はいいなあと。いい人ばかりですし一緒にいて楽しいなあと、改めて思ったのです。
◆
すっかり夜遅くになり私たち八人はバベルへと戻ってきました。
ノノアさんの【世沸者の塔】の転移門は一階にあります。
そこで「また明日」と別れるつもりだったのですが――
「よお、そこの【弱者】の勝利祝い帰りか? 仲がよさそうで何よりだなあ」
近寄ってきたのは三人。狼の獣人を先頭に、牛と猫の獣人も。
ニヤニヤと不快な笑顔。
これはあの時の……。
アデルさんとジータさんが一歩前に出ます。
「あらあらあら、誰かと思えば
「半年の塔主に追いつかれそうな
煽りますねえ。いつの間に出したんですかその羽扇。
「てめえ」と一気に沸騰する後ろの二人を制するように狼獣人のヴォルドックさんは手を軽く上げます。やめとけと。舌打ちしてますけど。
バベルの中で手を出したら負けですからね。下手すれば【
「神の通信が流れてたぜ? 弱者同士の
「そりゃそうだぜ、ヴォルドック。この【弱き者】が手助けなしに勝てるわけねえだろう」
「錚々たる顔ぶれだもんなあ。弱者の弱さが際立つ際立つ。ハハハッ!」
煽り返しますねえ。しかもノノアさんお一人を標的にしてます。
なんでこんなに目の敵にされているんでしょうか。獣人だから弱い獣人が許せないってことでしょうか。
私だって許せません。こんな人たちにノノアさんが馬鹿にされる謂れはないです。
「貴方がたには関係ないでしょう! 私たちに構わないで下さい!」
「――【女帝】か。なんとも勇ましいこった」
前に出た私にヴォルドックさんは見下した目を向けます。
「俺ら獣人は弱々しい獣人なんぞ認められねえんだ。人間がしゃしゃり出る問題じゃねえ」
「ノノアさんは私たちの仲間です! 貴方がたに認められなくても結構です!」
「シャ、シャルロットさん……」
後ろから聞こえるノノアさんの呟きは震えているような声です。
やはり恐怖が残っているのでしょう。トラウマなのかもしれません。
「くくくっ、まあそう言うな。そっちの弱者はともかくお前らのことは認めてんだ。特に【女帝】と【赤】はな。
「その時は受けますよ!
「ハハッ! いいなあ。その時は是非ともよろしく頼むぜ」
ヴォルドックさんは右手を差し出してきました。
私はそれに応えました。ギュッと握ってやりました。全然痛くないでしょうけど。
彼らはそれだけで立ち去っていきました。
「シャ、シャルロットさん、アデルさんも、ありがとうございます……」
「大丈夫ですノノアさん。大丈夫ですから」
「ふんっ、どちらが弱者なのか分かりませんわね。群れて遠吠えしているだけでしょう」
「けっ! こっちから
「ジータさん、あれはみんなの敵やねんで。やるんなら
本当はずっと無視すればいいと思っていました。
でも……やっぱりいつまでも放っておいていい相手ではないのですね。
こちらから仕掛けるか申請を待つか。
どちらにしても相手はBランクの【風の塔】を前面に出すでしょう。
打ち合わせしないといけませんね。
ノノアさんの初
これが塔主の定めと言うのでしょうか。
「エメリー、ちょっと来てくれ」
「? なんでしょう、フッツィル様」
ノノアさんを中心に固まる私たちから離れ、フゥさんとエメリーさんはヒソヒソと内緒話をしていました。
珍しいですね、フゥさんがそんな真似を。あとでエメリーさんに聞いてみましょうか。
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