64:【バベル新聞】あの同盟を独占取材!
この度、我々バベル新聞社は今もっとも話題の同盟、その塔主の方々に直接インタビューさせて頂く機会を得た。
【赤の塔】アデル・ロージット様、【女帝の塔】シャルロット様、【忍耐の塔】ドロシー様、【輝翼の塔】フッツィル様、【世沸者の塔】ノノア様。
記念すべき500期にして輝かしい光を放ち続ける超新星だ。
今やバベリオに知らぬ者はいないとまで言われる新塔主たち。その人気の裏に隠された真実とは。
ロングインタビューとなった中から第一回は同盟に至った経緯などを伺いたいと思う。
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――本日はどうぞよろしくお願いします。
五名:よろしくお願いします。
――まずはアデル様、シャルロット様、ドロシー様、フッツィル様、ランクアップおめでとうございます。そしてノノア様も
アデル様(以下、ア):わたくしとしては未だ道半ばといったところですわね。半年でCランクというのは多少早いとは思いますが分不相応だとは思いません。
シャルロット様(以下、シ):私も驚きのようなものはありませんね。嬉しくは思いましたが。私一人で成し得た結果ではなく、眷属や同盟の皆さんと共に得られた成果だと受け止めています。
ドロシー様(以下、ド):ウチは半年でDランクっちゅーのも早いとは思うけど身近にもっとスゴイのがおるからなぁ。やっとDランクかって感じやわ。
フッツィル様(以下、フ):わしもドロシーと同じじゃのう。むしろまだEランクでよいのでは、とさえ思っておる。皆の塔に比べれば貧弱じゃからな。
ノノア様(以下、ノ):わ、私はFランクで当然だと、お、思ってますし、こうして皆さんと並んで座っているのも申し訳ないくらいで、はい、えっと、すみません。
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新塔主は半年でEランクになれば賞されるもの――それが今期では通用しない。
トップをひた走る二強が過去に例を見ないほどの戦果を挙げ、人気を得続けているのだ。
その二強にしてもCランクに上がったことすら驚愕に値しないと仰る。それは当然だと。
メルセドウ王国が誇る″神童″アデル様、そしてインタビュー中もずっと【女帝】の風格を漂わせるシャルロット様。
そこに見えるのは絶対の自信。塔主としての揺るぎない精神。わずか半年でその境地に至れるものではない。
おそらく先天的に持ちえた才能なのだろう。最初からその器を持って塔主となったのだと。(記者の私見です)
新塔主を先導するお二人。そして引っ張られるように成長を続ける同盟の方々。
新塔主が同盟としてここまでまとまることなど滅多にない。どのようにしてこの同盟は生まれたのか。
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ド:最初はウチがシャルちゃんに同盟申請したのが始まりやな。やっぱ一人でやるのは無理があったし、誰か友達になれそうなのおらんかなーって探しててん。
――ドロシー様はプレオープンで三位の成績を収めたと伺っています。それでもお一人では厳しいと感じられたと。
ド:そらそうや。ウチは伝手もないし知り合いもおらん。ずっと一人で考えて一人で塔を運営してとか気が狂うで。
シ:私も協力者の存在は必要だと感じていました。同盟申請自体は数多かったのですがその中でもドロシーさんは一番裏表がなさそうに思えたのですぐに同盟を結んだのです。
――なるほど。プレオープン二位のシャルロット様もドロシー様と同じように危機感を抱いていたと。
シ:私の場合は眷属であり侍女のエメリーがおりましたので一人というわけではありませんでしたが。
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シャルロット様の
エメリー様と仰る四本腕の侍女(※1)の方は冒険者の中でも有名だ。
しかし今は同盟の話を進めさせて頂く。
編集部
※1:シャルロット様よりメイドではなく侍女と表記を徹底するようご指導頂きました。
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――そしてそのすぐ後、フッツィル様が同盟に加入されました。
フ:わしは街で偶然、シャルとドロシーに出会ってのう。その時に意気投合して流れのままに同盟に入った感じじゃな。
――なんと。では500期プレオープンの二~四位が揃ったのは偶然だったと。
ド:フゥに関しては完全に偶然やな。
シ:はい。今となっては得難い出会いだったと思っております。
フ:わしとて感謝じゃな。あの時街に繰り出していた自分を褒めてやりたいわい。
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当時、三塔同盟の目的は二~四位が結集し、一位の【赤の塔】に対抗するためだと思われていた。
実際は今こうして【赤の塔】のアデル様も加入していることからそれが真実ではないと判明はしているが、まさか意図的に結成されたものではないとは思わなかった。
シャルロット様は三位だからとドロシー様と組んだわけでもなく、四位だからとフッツィル様を引き込んだわけでもない。
出会うべくして出会ったのだと、口をそろえてそう仰るのだ。
それからすぐ、三塔同盟はBランクの【力の塔】を代表とする五塔同盟との
間違いなく快挙であり下剋上でもあった。バベリオの話題の中心となったのも記憶に新しい。
しかし話題の連鎖は止まらない。
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――
ア:わたくしは以前からシャルロットさんとお話してみたいと思っていまして、
――やはり【女帝の塔】という存在に注目していたと。
ア:順位や人気は特に気にしていませんでしたがね。お強いのは分かっていましたし。とは言え新塔主がBランクの【力の塔】を斃すなど驚き以外の何物でもありません。気にしないほうがおかしいというものでしょう。
――確かに。
ア:それから何度かシャルロットさんとお話しする機会がありまして、ドロシーさんやフッツィルさんとも実際にお会いした上でわたくしも同盟に加入させて頂いたというわけですわ。
ノ:わ、私は一人で塔運営をするのに限界を感じていたと言いますか、私も塔も弱いですし……そんな時に偶然皆さんと出会って助けて頂いたんです。同盟に入りませんかって誘って頂いて……。
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500期トップのアデル様は自らの足で出向き、よく吟味した上で同盟に加入した。
一方でノノア様の【世沸者の塔】は一部で【弱き者の塔】と揶揄される存在だった。決して500期の新塔主の中で目立った存在ではない。
それが偶然出会い、そして手を差し伸べられたと仰る。
結果、【世沸者の塔】は今やFランク冒険者の間で人気の塔にまで成長しているのだ。
そう聞くと今のこの五塔同盟はいかに稀有な存在かがよく分かる。
計算されたものではない、運命的な要素が大いに絡み、そして実を結んだものであると。
=====
――今や皆様の同盟が話題に上らない日はないほど注目を集めています。皆様ご自身は何が原因だと思われますか。
ド:そらシャルちゃんとアデルちゃんが人気やからやろ。内定式からずっと注目されてるやん。
フ:エメリーとジータじゃからな。その上
ノ:そ、それだけじゃなくて皆さんの塔がすごいからじゃないですか。お強いですし、実際
ア:定期的にシャルロットさんが話題提供していますからねぇ。世間に噂されるのも仕方ないことなのでは。
シ:わ、私だけが提供しているわけではないです。皆さんのお力があるからこそ戦果が挙がり、話題に上るのだと思います。
=====
同盟の皆様が持ち上げるのはシャルロット様の【女帝の塔】。
同盟結成の経緯を聞いてもシャルロット様の元に他の四名が集ったようにさえ思える。それはまさに【女帝】の器だと言えるだろう。
実際、アデル様の仰るとおり、シャルロット様のこの半年の動きは新塔主らしからぬものだった。
プレオープンではエメリー様お一人を戦場に送り込み、まさしく英雄に相応しい一騎当千ぶりを見せたという。
異例のオープン前
その後は同盟を結んだり、先述した
シャルロット様ご自身は謙虚にも「皆の力だ」と仰るが、その話題の中心にいるのはシャルロット様に間違いないのだ。
=====
――では皆様にとってこの五塔同盟はどのような存在でしょうか。
ド:一緒に楽しめる仲間かなー。
フ:着飾らんで素が出せる身内、かのう。
ノ:そ、尊敬できる方々ですし、私にとっては救世主みたいで……。
ア:お友達でありライバルであり、なんとも表現が難しいですわね。
シ:私にとっては心から信頼できる、まるで家族のような存在です。
ド:おおー、シャルちゃん、なんかこそばゆいわぁ(一同笑)
シ:皆さん笑わないで下さいよ。私は真面目に言っているのですから。
――仲の良さが伝わってよろしいかと思います。それと今後の五塔同盟の展望……
シ:あ、すみません。同盟の名称を決めましたのでそれを載せて頂けますか?
――同盟の名称があるのですか。失礼しました。それは是非ともお教え下さい。
シ:はい【
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シャルロット様がそう仰ると、記者の対面に座る五塔主の方々が左手を前に出した。
手首に巻かれているのは鮮やかな組紐だ。
赤青黄緑茶の糸が絡み合った、お揃いの装飾である。
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――お名前の由来をお聞きしてもよろしいですか。
シ:私たちは種族も身分もバラバラですし、塔の特徴も個性的で一貫性はありません。ですがこうして同盟を結び、一つに纏まって皆で協力し合っているのです。違った色の組み合わせでも纏まればこうして一つの装飾になる。そういうことですね。
ド:これ、シャルちゃんトコで創ったんやで。綺麗やろ。ウチらの同盟の証や。
フ:絆の象徴といったところじゃな。
ノ:た、宝物ですっ。寝る時もお風呂に入る時も外せませんっ。
ア:これに合わせるドレスを選ぶのが大変になりましたけどね。もちろんわたくしも大事に使っておりますわよ。
=====
同盟に名前をつけるというのは数少ないが、揃いの″証″を身に着けるというのはもっと少ないだろう。
それを全員が同じように身に着け、大事そうにしている様を見れば、この同盟の″絆″がいかに強固なものかが分かる。
バラバラでありながらも同じ方向を向いている。
フッツィル様の仰る通り、まさしく絆の象徴なのだろう。【
この後もインタビューは続くのだがそれは第二回をお待ち頂きたい。
気になる
いずれにせよ今後も【
絡み合う五色の糸は注目の的になり続けるだろう。それは予感ではなく確信である。
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