65:次なる戦いの場はすぐそこのようです!
■シャルロット 15歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
後日、改めて作戦会議を行いました。
どう考えても獣人の三塔同盟と戦う未来は変えられない。
ならばどう戦うか。早めに練っておく必要があります。
……と、思っていたのですが。
「えっ、作戦会議しないんですか!?」
そんな衝撃的なことを言われたのです。
なぜかフードを被っているフゥさんから。
『今は詳しくは言えぬが秘密の作戦がすでにあるのじゃ。今回に関してはわしとアデルに任せてもらえぬか』
『本来ならばノノアさん主体で同盟全体として考えるべきだとは思いますわ。ただわたくしとフッツィルさんで考えている策もありますの。皆さんを
秘密の作戦ですか……。フゥさんとアデルさんの策というなら心配もなさそうですが……。
そんなこと私が言うまでもなくご承知のはずですが、それでも秘密にして驚かせたいとは……。
『わ、私はその、
『ふーむ……』
ドロシーさんは顎に手を当て、ずっと考えています。やっぱり不安ですよね、作戦を聞けないのって。
そしてふと顔を上げ、こちらに呼びかけました。
『……なるほど。ちなみにエメリーさんはそれでいいんか?』
「はい。問題ありません」
『ん。ならウチも大丈夫や。フゥとアデルちゃんに任せるで』
ええぇぇぇ。大丈夫なんですか? エメリーさんも問題ないんですか? 私全然大丈夫じゃないんですけど。
……でも私だけあーだこーだ言っても信頼してないみたいですし……納得するしかないのですかね。
左手に巻かれた組紐をチラリと見ます。……うん。
フゥさんもアデルさんも私の何倍も頭がいいですし、信頼できる仲間、お友達に違いありません。
お二人は私たち同盟の為に作戦を立ててくれている。
だから私も信じることでそれに応えたいと思います。
「……私も分かりました。お二人にお任せします」
『すまぬな。まぁ安心して、とは言えぬかもしれぬが待っていてくれ』
『ああ、シャルロットさん、どういう戦いになるかは分かりませんが【女帝の塔】を使うつもりでいて下さい。それとエメリーさんは攻撃役と考えておりますのでご承知のほど』
その心構えだけはしておけということですか。
もし
「では塔の構成をいじっておいたほうがいいでしょうか」
『それは実際に決まってからで結構ですわ。今は心構えだけでよろしいかと』
「そうですか。エメリーさんと一応話し合っておきます」
『ええ、それがいいでしょう』
じゃあ私は塔の防衛だけを考えておけばいいですかね。
お二人にお任せして心苦しい気持ちもありますが秘密の作戦と仰るのですから仕方ありません。
■ヴォルドック 26歳 狼獣人
■第490期 Bランク【風の塔】塔主
『どうだヴォルドック、【女帝】の様子は』
「策はどうだか分からんが塔の構成はだいたい分かった。少なくとも【女帝】の戦力は丸裸だな」
『さっすが。相手が可哀想にも思えるぜ』
塔主がTPで得られるものは数多い。塔の設備、罠、魔物、日用品、武具――そしてスキルもだ。
とは言えスキルは高価なものだ。<生活魔法>や<剣術>などよくあるスキルにしたってBやAランクの魔物と同等のTPがかかる。
そもそも塔主自身が強くなったところで武を振るう機会もない。自塔の戦力で戦うのが塔主としての戦い方なのだから。
スキルをTPで買うというのは無駄遣いとも捉えられるものだ。
しかしそのスキルの中には『限定スキル』というものがある。
塔主となって成長することで覚える『固有スキル』とは違い、『その塔主しか覚えることができず、TP変換でしか覚えられないスキル』のことだ。
俺の場合<風狼の超覚>というものがあった。
自身の五感を一時的に超強化するというものだが、もう一つの能力として<マーキング>というものが内包されていた。
それは相手に接触することで『相手の感覚を共有することができる』というものだ。
設定できるのが一人だけとか、共有できる時間が限られているなど制限はあるが『限定スキル』らしく強力すぎる能力だと思っている。
俺はまずピスタチオとかいう雑魚にマーキングを設定した。
そして【弱き者の塔】と戦わせることであの塔の構成を確認する。目、耳を共有すればいくらでも覗けるからな。
『【弱者】の塔じゃなけりゃ問題ねえな。ヴォルドックが調べてくれて助かったぜ』
『ああ、聞く限りじゃ【弱者】の塔の攻略は不可能だ。強さが無意味とか【弱者】らしいと言えばいいのか何と言うか』
結果は散々たるものだった。
雑魚犬は丸一日かけて一階層も突破できず、ただ手をこまねいていただけだ。
しかし【弱き者の塔】が思っていた以上に難解なものだと知れたのは僥倖。
見たことのないギミックばかりでそれを解くには知力と時間が必要だ。
間違いなく同盟連中の知恵を結集しているはず。
罠が多い【忍耐】か、思慮深そうな【輝翼】か、神童とか呼ばれているらしい【赤】か。そうしたヤツらが入れ知恵したのだと。
なるほど500期のトップ連中だと感心する。
同時に【弱者】を攻め込むのは論外だと結論付ける。あの【弱者】は
弱者同士の
ヤツらを狙うのは変わりない。その為に準備してきたのだからな。
そして俺は【女帝】と握手したことで【女帝】を″設定″することに成功したのだ。
【女帝】と目耳を共有することで、向こうもこちらとの
軍師は【赤】と【輝翼】のようで作戦の詳細までは掴めなかったが、戦場と想定しているらしい【女帝の塔】の塔構成と戦力は判明した。
その感想としては……これは新人Cランクの難易度ではない。
ここにも同盟の入れ知恵があるのか知らないが、普通に攻めたんじゃ攻略は難しい。
特にクソ長い罠だらけの四階層と六階層以上の戦力が異常だ。クイーン三体に
あれを全て斃さなければ攻略できないとなれば、こちらの攻め手をどれほど出せばいいのかと。
それに加えて向こうの同盟には三人も
例のメイドは攻め手に使うというから防衛には無関係だろうが、もし三人の
俺の
メイドもそうだが英雄ジータが来るかもしれないとなれば尚更だ。
ともかくそうした情報を得た上で作戦を練る。
本当にそうだろうか。間違いなく【弱き者の塔】の方が防衛力は上だろう。
あれはランクや戦力に関係なく守りきれる塔だ。そうなれば勝ちはない。
『こっちから塔を選ぶというのはどうだ?』
「
なるほど、そういう手もあるか。
そうなれば【女帝の塔】の情報をどう活用するかが問題になる。
困難と分かっていても塔構成の判明している【女帝の塔】をあえて選ぶか、情報を得ていないがそれよりマシと思われる他の塔を選ぶか。
そもそもそうした条件を向こうが飲むかってのも問題だが。
「どうでもいいが余はジータやメイドと戦えるのだろうな」
玉座に座る
そして壇下の席に座る俺は答える。
「お任せください――陛下」
そう言うと獰猛な笑みを浮かべ、以降、俺に口出しするつもりはないらしい。
纏う覇気は滾る戦意そのもの。慣れた俺でも冷や汗が流れる。
この御方にかかれば英雄ジータとて敵ではない。そう確信している。
白き獅子の獣人――【白雷獣】の異名を持つかつての英雄王。
ディンバー陛下がこちらにはいるのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます