259:シルビアさんのお相手はちょっとヤバそうです!
■シャルロット 16歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
「【黄昏の塔】から
昨日【六花の塔】の大改装を終えたシルビアさんの元に
お相手は【黄昏の塔】。
私はパッと出て来ませんでしたが、アデルさんは相変わらずすぐに分かったようで。
『501期の新塔主ですわね。塔主はマイナイナ・イェロ。
『うわぁ……さすがアデルちゃんやな』
『385中の372位というのも相当じゃのう。ちょっと調べてみるか』
こう言っては何ですがよくそれでシルビアさんと戦おうと思いましたね。
今期は
ランキングはTP取得量で決まっているわけですから、372位となるとほとんど稼げていないわけですし、必然的に塔を強くもできないわけです。
もしかするとこれは……。
『うーむ、これは気が狂っておるな……』
『や、やっぱりですか……だからシルビアさんに……』
ノノアさんが溜息混じりにそう言います。予想はついていたという反応ですね。
つまりこれは
まともに塔を運営できず、侵入者からは命を狙われ、精神状態がおかしくなる。しかし塔主は自殺ができない。
だから一発逆転を狙うしかなく、その相手を同期でトップのシルビアさんとした……というわけですか。
『わ、私は分かりますよ。その気持ちが……。プレオープンで死を経験していると死にたいけど死にたくないって感じになるんです……多分同じような人は他にもいると思います……』
『それで
『つまりは私に介錯を……ということですか』
普通、こういうのはプレオープン直後に多いと聞きます。私の時だって同盟申請や
なぜ半年以上も経ったこの時期に、とも思いますが今まで耐え続けていたのかもしれませんし、それこそ新塔主の
ランキングで順位を確認したことで絶望してしまったのかもしれませんね……もう後がないと。
「私はどちらでもいいと思いますがシルビアさんは……」
『そうですね……ええ、そういうことでしたら受けるべきだと思います』
『ふむ、別に無理することないんじゃぞ? 放っておけば侵入者に消されるじゃろうし』
『いえ、これもトップとなった者の務めだと思いますので。同期のよしみ、というのとは少し違うかもしれませんが……』
強いですね、シルビアさんは。
いくら塔主が敵同士で命を奪い合うものだとしても、心の壊れた塔主をわざわざ手に掛けるというのは気持ちの良いものではありません。
優しさを見せたところで褒められるものではありませんし、結局は自己満足にすぎないのです。
それでも自分が手を下すと。なかなか真似できることではないと思います。
慰めに似た言葉をシルビアさんにかけていた時、考え込んでいたアデルさんが声を上げました。
『フッツィルさん、Cランクの【黄砂の塔】の様子は見えますか?』
『【黄砂の塔】? ちょっと待っておれ』
『申し訳ありませんわね』
アデルさんの言葉で私も思い出しました。
【黄砂の塔】は私たちの六年も先輩にあたる塔で、ランキングでは102位。Cランクでは下~中位の塔です。
塔主の女性の名前はメロ・イェロ。つまり――
『【黄昏】のマイナイナと【黄砂】のメロは父娘のはずですわ。同盟ではないですが』
『そうなん!? 娘が先に塔主になってオトンが今年、塔主になったんか……そんなんあるんや』
『同盟でないのなら
少なくとも自殺ではないということですね。
自殺だったら【黄砂の塔】に頼めばいいと……いえ、そうとも言えないのではないですか? 娘に殺させたくなかったのかもしれません。精神状態がおかしいのなら確かなことなど分からなそうですが……。
『いずれにせよ父親がそのような状態で娘がどうなっているのか気になります。シルビアさんが下手な恨みを買っても困りますし』
『私は構いません。それこそ塔主である以上、方々から恨みは買っておりますし』
『それと可能性は低いのですが誰かがマイナイナを操っている可能性ですわね。精神の壊れたマイナイナをわざとシルビアさんに
『あー、なるほどなー』
確かにそれはありますか。【死屍】のグロウズさんがアンデッドを操って塔に攻め込ませたようなことですね。
シルビアさんが高ランクの塔主に狙われる可能性は十分にあります。
501期でトップ、私たちの同盟に加入、そしてCランクに上がったばかり……いくらでも要因はありますから。
「ただ仮に操られているとしたら逆に斃したほうがいいんじゃないですか?」
『そうですわね。塔の構成や戦力は極力隠したいという程度です。しかしその可能性を計る意味でも【黄砂】のメロの様子が気になるのですわ』
同盟を結ばない状態でそもそもどの程度の交流があったのですかね。父娘なら何かしらはあると思いますが。
今まで半年以上、精神を保っていたのがメロさんの支えによるものだとすれば今回の
そして身近であるならば何かしらの変化に気付いているかもしれません。
『うーん、今のところ何も分からんな。至って普通といった感じじゃ』
『ちゅうことは【六花】に申請したことも知らんわけか』
『ど、どうしますか、シルビアさん……やっぱり受けるんですか?』
『……受けます。どう転んでも斃しておくべきだと思いますし』
ですか。シルビアさんがそう決めたのなら私は応援するだけです。
色々と気になる点はありますが、それを言い出すと今後どことも戦えないとなってしまいますしね。
せめて私はターニアさんに頼んで色々と探ってもらいましょう。それくらいしかできませんし。
相手を考えればシルビアさんが負けることはないと思いますが……。
■マイナイナ・イェロ 45歳
■第501期 Fランク【黄昏の塔】塔主
「くそっ!! 何が【
そもそも内定式の前にバベル新聞に載ったヤツらのインタビュー記事、あれが発端だ!
塔主は夢なんか持つなとか、思っている以上に辛いから覚悟しろとか、とにかく勉強しろとか、プレオープンのことだけ考えろとか! そんなことばっか言って不安を煽ってきやがった!
そりゃ身構えたさ! 塔主になって浮かれた気持ちもあったけどさ! 俺だってちゃんとした塔主になろうって、頑張ろうって思ったさ!
メロにも散々言われた! 同じようなこと言われたよ! とにかく慎重に気を付けろってさ!
それでもプレオープンじゃ攻め込まれたよ! 最上階まで襲って来てさ! 死ぬ思いしたよ!
メロにもらったアドバイスも役に立たねえしよ!
【
考えた結果こっちは死ぬ目に会ってんだよ! ふざけんな!
侵入者だってどうせ新聞記事読んでんだろ! それで慎重になった新塔主を狙ってんだよ! そうに違いない!
だから俺のトコに攻めてくんだよ! そうに決まってる!
俺をはめるためにあんな記事にしたんだろ! もうバレてんだからな、クソが!
その一方で【六花】にはプレオープン1位をとらせて同盟に入れてさ! それですぐにもうDランクだよ!
なんなんだよこの差は! ただの贔屓じゃねえか!
こっちは
あの記事のせいでどいつもこいつも慎重決め込んでてさあ! ちっとも受理しねえ!
これもあいつらの術中ってことだろ! 【六花】だけを上に上げるための策に違いねえよ!
で、今度は【六花】のシルビアが新聞の記事になった!
また適当なことを言って【
ふざけんなよ! 何が「想像の何倍も難しいですね」だ! 簡単にランクアップしたのはどこのどいつだよ!
俺のほうが難しい思いしてるに決まってんだろうが!
このままじゃ俺は侵入者に殺されちまうんだぞ! 冗談じゃねえ!
なんであいつらはのうのうと生き残ってて俺ばっか苦しい思いしなきゃならねえんだ!
特に【六花】だ! あいつだけは許せねえ!
俺ら501期の新塔主の全てを踏み台にして自分だけ上に行きやがった!
【
「絶対許さねえぞ!! 俺がこの手で殺してやるからなあああ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます