350:新塔主の周りで色々動きがあるみたいです!
■ソルディア 43歳
■第478期 Aランク【一閃の塔】塔主
俺が塔主となったのは二十五年も昔のことだ。
当時は冒険者として下地をつけ、地元の街で衛兵となっていた。新兵もいいところだけどな。
いずれは衛兵団を取りまとめる団長や、あわよくば王都に行って騎士団に……とか夢を持っていたな。
ただ衛兵団に入ってからは辛いことばかりだった。団長は馬鹿なくせに体罰ばかりするし、領主は領主で平民を見下しまくってやがる。
どうやら貴族ってのはそんなのばかりらしいと気付いたのは衛兵団に入ってからだ。
貴族に近づけば近づくほど、そういったことに気付かされた。衛兵なんかなるんじゃなかったよ。
ところがすぐに塔主に選ばれたってことで、俺はそんな故郷を速攻で抜け出し、バベリオへと向かった。
まぁ塔主になってみりゃ塔主のほうが辛い仕事だって分かるんだけどな……その時は喜び勇んでバベリオに来たものさ。
貴族どうこうを考えずにすむって意味なら塔主のほうがいいんだけどな。死に目に会う毎日ってのは恐ろしいもんなんだよ。
俺が塔主に向いていたかどうかは分からない。
だが我武者羅に塔運営をしたし、努力はしたと胸を張って言える。運もあったのは間違いない。
結果として俺は生き残り、着実にランクアップを重ね、今やAランクとなっていた。
後期のランキングでは15位までいったしな。一応俺のベストスコアでもある。
Bランクになった辺りか、急に故郷から手紙が届くようになった。
親からではない。地元の領主とか、その周囲の貴族とかからだ。
どうやらバベルで実績を作り、半ば英雄化した俺を奨励……という名の囲い込みをしたいような文面だった。
呆れて物も言えなかったな。今の今まで何の援助もせずに放っておいて、ちょっと名を挙げたら手のひら返しだ。
俺はバベリオに住居を用意し、親たちにミッドガルドから離れるよう手紙を送った。
このままじゃ親まで貴族に利用されるからな。急いで手続きをしたわけだ。
俺が貴族に連絡することはなかったが、それからも手紙はちょくちょく来た。当然全て破り捨てたが。
そんなことがあってのここ一~二年。俺はひそかに【
反貴族を唱え、次々に貴族どもを屠っているヤツらを見るとスカッとするのだ。
もちろんインタビュー記事の載った新聞は全て買っているし、塔章や旗もすでに真似して飾っている。
最近じゃあランゲロック商店にも行ったな。あれは素晴らしい店だ。親にも美容品をプレゼントした。
なぁに金はある。伊達にAランク塔主はやってないさ。
そんな最中、また一通の手紙が来た。紙ではなく通信で、だが。
差出人はヴィラ・ヴェルガダーツ。【竜牙の塔】の新塔主だ。
なんでも、そいつはヴェルガダーツ侯爵家の人間で、ミッドガルド王国騎士団の副長様なんだそうだ。
で、俺はミッドガルドの平民だし元衛兵だし、貴族であり騎士団副長の元に付くのは当たり前。
だから同盟を組め。わざわざ誘ってやったのだからありがたく思えと、そんな感じ。
はいはい、却下却下。さっさと消えてくれマジで。
【
■ヴィラ・ヴェルガダーツ 45歳
■第502期 Eランク【竜牙の塔】塔主
「却下だと!? 馬鹿な真似を!」
【一閃の塔】のソルディアはあの小さな街の衛兵だったと聞く。
衛兵とは領主が持つ私兵団と同じであり、つまりはミッドガルド王国に仕えていると同じだ。
平民でありながら国を守る使命を与えられたと。雑兵らしく国のために命を投げ出してもらわねば困る。
それなのにこの私の同盟申請を断るとは何事だ!
貴様などランクが高いだけの平民にすぎん! この私が厚意で誘ってやったというのに無下にするとは!
私の手足として使ってやろうと言うのだぞ! その名誉を受けないとはそれでもミッドガルドの平民か!
王国騎士団を、ヴェルガダーツ侯爵家を何だと思っておるのだ!
チッ、つまりは反逆の意思ありということだな。国に反旗を翻すと。
上等だ。この私に剣を向けた報いを受けるがいい。
Aランクだろうが所詮は既出の塔にすぎぬ。
■シャルロット 17歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
『神様通信
【審判の塔】と【風雷の塔】が同盟を結びました!
以上お知らせでした! 神様より』
『神様通信
【黄の塔】【炎魔の塔】【聖殿の塔】【橙の塔】が同盟を結びました!
以上お知らせでした! 神様より』
『神様通信
【正義の塔】が【聖の塔】【雷光の塔】【鏡面の塔】【鋭利の塔】と同盟を結びました!
以上お知らせでした! 神様より』
この時期の風物詩と言えるかもしれませんが、次々に同盟が結ばれていきますね。
新塔主の方は多くが助けを求めているでしょうし、少しでも繋がりがあれば同盟を結びたがるでしょう。
新塔主同士で力を寄せ合って生き抜こうという方もいます。そうして同盟の数が一気に増えるのですよね。
ただ中には無視のできない同盟もあるのですが……。
『【正義】が【聖】同盟に加入するのは分かっておりましたけど、【橙】は少々意外でしたわね』
『今まで同盟を結ばずに生き続けてきた高ランク塔主がここに来て手を組んだんやからな』
『エドワルド前王の手腕か求心力か。【黄】のコレットなど誰とも組むとは思っておらんかったからな』
『ABBDの四塔同盟とか……な、なんかいきなりすごいのが出来ちゃいましたね……』
『これは【黄】同盟と言うのですか? それとも【橙】同盟でしょうか』
普通だったら【黄】同盟ですよね。代表塔は【黄の塔】になるのでしょうし。
でも実質的にはエドワルド陛下が中心なのでしょうから【橙】同盟と呼ぶかもしれません。
いっそのことバレーミア同盟とか言ったほうが分かりやすいのですが。
「他にもバレーミアの塔主はいないのですか?」
『おりますわよ。それが組み込まれていないということは、その塔主が却下したか、エドワルド陛下が高ランク塔主に絞って集めたかというところでしょう』
『集めよう思うて集められる面子とちゃうけどな』
『ノノアに【魔導書の塔】を落としておいてもらって正解じゃったな。あれもバレーミアじゃから同盟に入っていたかもしれぬ』
【黄の塔】は二十三年目のAランク13位。
【炎魔の塔】は十八年目のBランク34位。
【聖殿の塔】は八年目のBランク76位。
そして【橙の塔】が新塔主プレオープン1位と。
すごいですね。私たちがBBCCDDですから数は勝っているのですがね……やはり【黄の塔】が強いと。
『おるぞ。ノノアが【魔導書】と戦った時にも勧めたからのう。三番目に』
『こ、断られちゃいましたからね……アハハ』
『まぁ【審判】のほうが狙う価値があったわけですね。当然ですか。
ちなみに【魔導書の塔】の魔物の召喚はまだ保留にしているらしいです。
【六道魔導オルフェウス】(★S)にしても召喚したところで眷属枠がいっぱいだからと。
他にも魔法使い系の魔物が多いので、将来的には魔法部隊ができるかもしれません。
リッチ(A)などは現状でもそのまま部隊に流用できるので召喚しても良さそうですけどね。そこはノノアさんにお任せです。
『【橙】もそうやけど【竜牙】とか【正義】とか今のうちに削っておけんもんやろか。絶対そのうち面倒くさいことになるやん』
『やれるものならやりたいですけど、その場合はシルビアさんにお願いするか【風雷】を使うことになりますわよ』
『その際はお任せ下さい』
『【春風】を使うという手もある。特に【正義】なら有効かもしれん』
【竜牙の塔】のヴィラ・ヴェルガダーツさんはミッドガルド王国の騎士団の方ですね。侯爵家のお貴族様でもあるとか。
その人がもし貴族至上主義であれば私たちを敵視してくることもあるでしょう。
【正義】のアダルゼア・ベリダスさんはおそらく人間至上主義で確定でしょう。
【聖の塔】の援助も受けて【大軍師】シュレクトさんの監修で塔を創っているわけです。
そうして強化された
どちらも現在はEランクということですから、申請が通るとしてもDランクの【六花】【春風】がいいところでしょうね。
もしくはまた【世沸者】が
【正義】と戦うと【聖】同盟に見られるというのが厄介なんですよね。
シルビアさんの戦力は見せても大丈夫なものばかりですが、ノノアさんの
そう考えるとやはり【六花】のほうがいいですか。【春風】ならもっといいですけど。
まぁいずれにせよもう少し後の話ですがね。
新塔主はオープンに向けて塔を創っているでしょうしとても
自殺願望のある塔主なら別でしょうが。
同じようにランクアップにより身動きのとれなくなった塔も多いでしょう。今回は特に。
【節制】同盟なんてAランクとBランクに上がったのが一塔ずつあるわけで、そうなるとしばらくは塔創りに全力で取り掛かることになるでしょうし。
クラウディアさんもそうですね。AからSに上がることで広さも天井高も倍になりますし、全二十階層が全三十階層にもなるのです。Sランクは次元が違うのですよ。
そうなるともう塔を完成させるだけで数年は掛かることになりそうですから、その苦労は想像を絶します。
互助会はどうするのですかね?
エルフ塔主が二人も増えたから誘うとは聞いてますけど、肝心のクラウディアさんがお忙しそうですし。
でもそんなことを言っていたらいつまで経っても会合なんで出来ませんからね。無理矢理にでも開くのでしょうか。
……ん? 塔創りに励む塔主が多くなったということはどこもTPを欲しているってことですか?
まさかそれで
いや、塔が完成しなければ
どうなのでしょう。関係があるのかないのか。私には神様の考えが全く分かりません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます