279:女帝の塔の陣容が暴かれてきました!
■シャルロット 16歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
「ターニアさん、ベアトリクスさん、ハルフゥさん、準備は大丈夫ですか!」
『だいじょうぶですよ~』『ん』『問題ありません』
「では行きましょう! 【女帝の塔】に勝利を!」
『『『【女帝の塔】に勝利を!』』』
私はそう声を掛けました。二つ目の攻撃陣に。
ターニアさんたちは【氷海の塔】への転移門へと入っていきます。
その陣容はこのような感じ。
=====
【女帝の塔】塔主:シャルロット(B)
総指揮官:
海姫ハルフゥ(★S)1+スキュラクイーン(A)1+スキュラナイト(B)5+スキュラ(C)20
ハイフェアリー(C)30、カーバンクル(A)1
=====
Sが2体、Aが3体、Bが25体、Cが60体で計90体。
第一陣と比べると数は少ないですが【氷海の塔】の攻略特化という感じで水中戦力と飛行系だけで構成しています。
カーバンクルはターニアさんの肩に乗せています。ハルフゥさんを水中での攻撃に回すと回復役がカーバンクルしかいないので仕方ありません。
スキュラクイーン部隊は今回の
【空白の塔】に送り込んだハーピィクイーン部隊と合わせてTP的にこれが限界です。
私の持っている水棲系魔物はこれで全部。あとはハルフゥさんにお任せです。
今回の
もちろんターニアさんやフゥさんに探ってもらった情報も加味してのことです。
色々とシミュレートしていく中で出た作戦がこの『二塔同時攻略』です。
この作戦の最大の弱点は【女帝の塔】の防衛戦力がほぼいないということ。
大ボスにアスラエッジ(★A)がいますが、あとはBランクのクイーンくらいしか高ランクの魔物は残っていません。
ついでに言えば眷属が全て攻撃陣にいますから、眷属伝達で防衛戦力の配置を動かすといったこともできません。
ですので防衛は地形と罠とすでに配置している魔物だけで対処することになります。
しかし極端な防衛力の低下を代償に、敵の動きをほぼ限定することができます。
おそらく【轟雷】同盟は″援軍としての動き″を重視するはず。それが同盟としての利点なのですから最大限利用しようとするでしょう。
最初は様子見から入る。これは確定しています。
私がどこの塔に攻め入るかを確認してからそれに応じて動くと。裏をかかれたら終わりですからね。
案の定、私がエメリーさんたちを送り出した後も敵軍は侵入して来ませんでした。
向こうの考えとしては、私が【空白の塔】に攻撃陣を送り込めばそれを挟撃しようと援軍を差し向ける。
同時に【女帝の塔】に攻撃陣を送り込み圧力をかける。
本格的な攻略はしてきません。まずは防衛が優先です。
私の攻撃陣を挟撃で確実に斃す。それを第一目標としているわけです。
そこで私が二塔同時攻略とすればどうなるか。
【空白の塔】に加えて【氷海の塔】も防衛一辺倒となり、自由に動けるのは【轟雷の塔】だけとなります。
その【轟雷の塔】がどう動くか、これが一つのポイントですね。
私の考えでは【女帝の塔】に攻め込むのをやめ、【空白】と【氷海】にそれぞれ援軍を出すと思っています。
両方で挟撃を成功させれば私の主力がほぼ壊滅ですからあとは悠々と【女帝の塔】を攻略するだけ。
しかしこちらはフゥさんがファムで探ってくれていますから挟撃ポイントも敵の編成も分かります。
エメリーさんやターニアさんであれば対処は可能なはずですから返り討ちにできるだろうと。そういう算段ですね。
ただアデルさんやドロシーさんの意見はちょっと違いまして……。
『【轟雷】は【氷海】を見捨てて【空白】だけに援軍を送ると思いますわ』
「ええっ!? そんなことしますか!? 同盟ですよ!?」
『ウチもそう思うなー。リスクをとって戦力を分散させるより確実に一塔を守ったほうがええやろ。となれば限定スキルをもっとる【空白】のほうが価値は高い』
『あの三塔主は商人ですのよ? 損得勘定で動いているのですから″利″を優先しようとするはずですわ』
とのことです。
【轟雷】の戦力を考えれば二塔に援軍を送り込むこともできると思うのですがそうはしないだろうと。
一塔を見殺しにしてもう一塔だけを守ろうとするのではと、そう仰るのです。
納得できる反面、納得したくない気持ちがあります。
だからといって私が攻めないということもないのですが。
『せやから問題は【空白の塔】に【轟雷】の過剰な援軍が来た場合やな。挟撃されるわけにもいかんし、普通に潰そう思うても手こずるかもしれん』
『そこはこちらの攻撃陣の動き次第なのでは? タイミングと戦力が把握できれば如何様にもできそうですわよ』
『わしのほうで探っておくわ。ターニア様も攻撃に回すんじゃろ? 諜報はこっちに任せてくれ』
「ありがとうございます。助かります」
――という話がありました。
フゥさんは【輝翼の塔】の通常営業もあるのに……本当に申し訳ないです。
フゥさんがいなかったらターニアさんを攻撃に回すこともできませんし二塔同時攻略もできませんでしたからね。
条文に「同盟者の観戦・口出しの禁止」とか盛り込まれないで良かったですよ。
いずれにせよエメリーさんとターニアさんにはゆっくり進軍してもらいましょう。
一階層ずつ魔物を殲滅して進む感じにしておいて、【轟雷】の援軍が来たらまずはそれを対処する。
一階層まで戻って先に潰すとかもアリです。そこら辺はエメリーさんとターニアさんにお任せです。
私は【轟雷】【空白】【氷海】の転移門の先にウッドソルジャー(F)を一体ずつ入れておきましてそれを見張り役としておきます。
フゥさんが探ってくれるので必要はないのですが、見張りもなしに援軍を対処してしまうと探っているのがバレますからね。
一体10TPの必要経費。その価値は十分です。
さて、これであとは【轟雷】のファモンさんがどう動くかですね。
それが終わったら【空白】のカラーダイスさんの限定スキルとの勝負になります。
まだまだ油断はできませんよ。
■ファモン・アズール 35歳
■第493期 Bランク【轟雷の塔】塔主
【空白の塔】に【女帝】の攻撃陣が侵入してきた。これは予想通りだ。
しかし、それから間もなくして【氷海の塔】にも別部隊が侵入……これは全くの想定外。
ただでさえ【女帝】は私たち三塔を相手にするのだ。
防衛を固めつつ確実に一塔を攻略するべく戦力を分配するのが当然。
さらに言えば【女帝】の主目的は召喚報酬用の魔物の殲滅であることが明白。
その為には攻撃陣を厚くする必要があり、その上で防衛を固めるとなれば二塔同時攻略などできるはずがない。
私たちは考慮する価値もなしと、その可能性を排除していたのだ。
ドミノ殿からは【氷海の塔】へと侵入してきた敵軍の陣容も聞いた。
飛行戦力が
地上戦力はスキュラクイーンのスキュラ部隊。
飛行系魔物と水棲魔物だけで総数90体にもなる。明らかに【氷海の塔】を意識した編成だ。
色々と解せない部分がある。
まずスキュラクイーンやスキュラナイト、スキュラは【女帝の塔】の魔物召喚リストにない魔物だ。
どこかの塔の
【女帝の塔】に『海』などないにも関わらずだ。いくら
さらにそのスキュラクイーンを配下にしているような指揮官の存在。
ドミノ殿の見立てではおそらくクイーン種だと思われるがこれも【女帝】のリストにはいない。
一番可能性が高いのは【青の塔】のリストにあった海姫ハルフゥというSランク固有魔物。
【女帝】の戦った塔の中で『海』や『水』に関連していて、その中でクイーン種のような魔物となると海姫ハルフゥくらいしかいない。
ただ「元々どこかのリストにいた魔物で【魔術師】が報酬で手に入れてから召喚し、それを【女帝】が斃した」となると最早どの魔物かも断定できなくなる。
だから今は「おそらく海姫ハルフゥだろう」ということくらいしか分からないのだ。
しかし海姫ハルフゥだとすればまた問題が出て来る。
一つは「なぜ海のない【女帝の塔】で召喚しようと思ったのか」ということ。
【女帝の塔】で判明している階層で屋外構成の地形は、帝都・庭園・森だけ。
基本的には城の塔構成であるし、森ですら「【女帝の塔】らしくない」と思える。
そこへ持って来て『海』の階層などありえないだろう。【氷海の塔】に『森』を置くようなものだ。
TPをかなり余計につぎ込めば可能なのかもしれないが、そんな馬鹿な真似はAランクの塔だってしない。
塔には塔の個性があり、それを尊重するようTPも設定されているのだ。
好き好んでそれに反発し構成するのは大量にTPの余裕があるSランクくらいのものだろう。
そんなTPがあれば魔物を召喚し戦力の強化を図るべきだ。
もう一つは「なぜSランク固有魔物をそんなに眷属化できるのか」ということ。
あれが海姫ハルフゥ――Sランクの固有魔物のクイーン種――だとすれば眷属化せずに召喚しただけというのはありえない。
それだったらAランクのスキュラクイーンを何体も召喚したほうがTP的にも得だし使い勝手もいいはずだ。
だから「召喚したのなら眷属化しているだろう」と見ることができる。
しかし【女帝】はすでに
そうなると【女帝】の眷属として予想できるのが、
メイドを抜かせばSランク固有魔物三体とAランク一体というとんでもない陣容が浮かび上がる。
Aランクの塔でもこれほど高ランクの眷属構成はしていないのでは、と思わせるほどの戦力だ。
さらに、それら全てが攻撃陣に回っていることから、防衛陣にも何かしら眷属がいると思われる。それで眷属枠が埋まることになる。
ならばその魔物は何だ。まさかまだ固有魔物を……? さすがにSランクはないだろうが……。
最悪を想定すると全く理解できなくなるのだが、一番現実的なのもその″最悪″である。
あれは海姫ハルフゥであり、見えているだけでもSランク固有魔物を三体眷属化している。
そしてその【女帝】が二塔同時攻略などというまたも理外の手を打ってきた。
私は冷や汗が流れるのを無視して考える。
――この現状で私はどのように動くべきか、と。
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